Book Reviews (マイブック評)
何と素晴らしい作家なのか・・私のハートを射止め、虜にさせてしまった山崎ナオコーラさん。今までにも、貴書は多々読んでいるものの、ご時世なのか、ドーンと心に響きました。涙あり、笑いありで(寅さんか!)、もう夢中で読んでしまったんですよ、本当に。だから、この年末、年始、山崎さんの生み出す魅力ある登場人物達と、幸せな時を過ごせました(感無量)。 まず「人のセックスを笑うな」。この本は、題名からは想像もつかない(ただ単に私の想像力の欠如かも・・)、繊細な恋愛小説です。このブック評を書くために最後のくだりを読んでいて、又泣けてしまった。山崎さんの文体が最高なのもそうだけど、文と文の間のスペース感(現実の)が、とても良い。ページに言葉が羅列せず、うま〜い具合に、隙間が空いている感だ。その隙間で、読者は、ググッと来て、想いにふける事が出来る。こういう、さりげない「時」が、大事なんだなあと、今更ながら痛感。そして、次に手に取ったのが、「美しい距離」。最愛の妻が不治の病いになり、残された日々、残された時間を、正直に、だけど葛藤しながら、生きる夫の話だ。夫は、とにかく、ひたすら妻を愛している。何でもしてあげたい。そこで「美しい距離」なのだ。ああ、又読み返して、ここでも泣いてしまった。亡くなった後、妻は、次第に遠くにいく。お墓参りをすると、妻への言葉が尊敬語になり、謙譲語も出てくる。「淡いのも濃いのも近いのも遠いのも、全ての関係が光っている。遠くても、関係さえあればいい。」と締め括る。 「リボンの男」。これは、子育てに全力を注ぐ、主夫の話。妹子(夫のあだ名)は、毎日自問自答する。自分の置かれた立場について、生産性について、子育ての喜びについて・・タロウ(子供)は、無邪気で、正直。そして、感性豊か。正に、夢の様な「子供」。みどり(妻)は、書店の店長。本に関われる事に、真の喜びを感じ、日々仕事に邁進している。この家族の何気ない、だけどとても真実な毎日を描いた小説です。最後に、「鞠子はすてきな役立たず」。もうこれは最高ですよ。公共の場で読む時は、人様からどう思われても良い覚悟で読んでくださいね。だって、大笑い、必須ですから。この本を読むと、ああ人生って、素敵だなあ。人間って、凄いなあ、って思いますよ。小太郎(夫)と鞠子(妻)は、夫婦漫才か!と思うぐらい、可笑しなカップルです。本人達は、至って真剣に毎日を送っているのですけど、ね。真面目な銀行員の夫と、専業主婦になった妻の凡庸な新婚暮らしから、お話しは始まる。しかし、鞠子は、役に立たない「趣味」に生きる事に。これは、小太郎の父の格言「働かざるもの、食うべからず」に大いに反する。小太郎は、妻を愛するものの、深い苦悩の毎日だ。ここからが、夫婦漫才の始まりという訳。どうぞ、読んで、お笑いして下さい。この夫婦のたどった道、読者も多く学ぶ事が出来ます。 2022年も、大好きな本達と一緒に幕開け。明るい年になりそうです。今年も、音楽だけでなく、相撲、読書、料理など、鞠子に負けないくらい、「役立たず」で、過ごせると良いなあ、と願っています。ああ、今日から初場所だ!仲良しの相撲ファンのT子女子と一緒に(それぞれの家から)、真夜中スマホでテキストしながら観戦します。「今の見た?」「宇良、可愛い!」などと、正に「役立たず」道をいく会話を楽しみますよ!それでは、本年もどうぞ宜しくお願いします。
この本も、ずしーんと感動の一冊です。食べる事にこんなに一生懸命になれる日本人に生まれて、本当に良かった。季節の野菜を感謝しながら、そして感動しながら食に取り入れる我々日本人、って凄い!アメリカに暮らして長くなると、実感として思いますよ。「食」への気持ちの入れ込みがあってこその、この本。重い病い、家族の軋轢、上手く行かない恋愛、全てが「わーーーー!」となる時でも、そこに美味しい食事があり、それを愛でる心がある。素晴らしいです。鶏鍋をやって、出汁が良く出たスープで、翌日雑炊を作って食べる至福の時。ああーーーー。アメリカ社会で暮らす私と、日本人の部分が半々の時もあれば、日本人の部分が円周の5分の4位を占める時もある。こういう本を読むと、円周の色分けが、ググッと「日本人だ!」枠に占められていくのを感じますね。今年もコロナ禍で、お正月は日本に帰れず・・だから、新年に向け、刺身舟盛りとお節料理の組み合わせをオーダー。日本を胃袋から感じて、新年を迎えます。
私は心深く感動しています。ホント、涙なしには読めない本です。この本に関して全く知らず、本屋さんで、愛する三浦しをんさんのご著書を発見。兎に角購入(ロサンゼルスの日本の本屋さんですから、全てが揃うという事はないんです。でもあるだけ幸せ😊)。最初は、ありゃ!、高校生の文通のお話か・・と、ちょっと疑念が沸き、ページをめくる指が遅くなりがちだったのですが、あるところから、もうのめり込んでしまった。とことん「のの」と「はな」に。彼女らの、時空を超えた愛の深さ、信頼、一体感。その全てにのめり込んでしまった。書簡の往復のみで、文庫500ページ以上の長編ですよ。どの書簡も、生き生きとしていて、嘘がない。高校で出会った二人が、長い年月の間、常に文章で語り合い、気持ちを繋ぐ。途中から二人の間に「会う」事は、必要なくなっていくのだ。紆余曲折を経て、我々読者は最後の章に導かれて行くのだが、大変な状況にも関わらず、私はその最後に美しい自由を感じた。二人の想いが、昇華していく様が、行間に見える。三浦さん、とんでもない小説をお書きになった。
いやーー、笑いました!三浦さんのユーモアに、笑いを堪えるなど、到底無理、無理。バカ笑いです、本当に。三浦さんは、私の大好きな日本人作家の一人で、今までにもたくさんのご著書を読破しています。エッセイ集では、「作家の本音」(曲者かもしれない)に溢れ、三浦さんのお隣にでも引っ越して来たかのよう。ウフフ。日常のほんの些細な事が、作家の手にかかると魔法のよう。素敵なお話しや、大ギャグに変身するんですよ。この本も、私的には、「マスト」な本だと思います。是非、手に取って下さい。但し、余りの可笑しさに、大口開けて吹き出す可能性があるので、公共の乗り物での読書はいかがなものかと・・老婆心ながら、申し上げます。最高!!!
当代きっての売れっ子作家は、やはり凄い。様々な事に興味をお持ちで、どの局面でもキチッとさばいていらっしゃる。文章のキレが良く後を引く面白さで、かつ批判するところでは、言葉を緩めずにちゃんと発言なさるのだ。そして、愛情いっぱい、とても心が広い。また、行動力も生半可ではなく、東西南北、縦横無尽だ。林さんのエッセイ集が手元にあると、こちらの心に余裕が出来るようだ。是非手に取ってみて下さい。
後半に入っての「どんでん返し」は、準備出来ていませんでした!でも、そのカラクリが分かると、今までの道のりが、クリアに見えて来るんですね。プロローグに伏線が張られているのだけど、それは中々上手くカモフラージされていて、「カラクリ」と結びつけることはかなり困難。取り敢えず一章づつ読み進む訳だけど、読みながら泥沼にハマっていきそうな、気分になる。その「意地悪さ」「気持ちの暗さ」に、読んでいるこちらの精神が、キシキシしてくるのだ。そして、最後のページまでたどり着くと、不思議な事に、その苦しさが爽やかさに変換していく。緻密な計画の元に作られたであろう本書。読み応え、かなりありますよ!
本の内容は、正に題名が語るが如し。でも・・表紙の装画は、随分と「柔らかく」「パステル」調で、本文とそぐわない感がある。基本的には、大学4年間の人間関係がテーマ。しかし、読み進めていくうちに、「青二才」というよりドーンと重くて、「脆い」というより強固で、迷いは沢山あるものの、「痛い」というより、戦いかもしれない。私にとって一番面白かったのは、現代の若者日本語。ぞんざいで、歯切れよく、男言葉も女言葉もない。微妙に摩擦を避ける、その巧みな言葉選びに、感服。そしてテンポが抜群に良い!可愛い子ぶっても、言う事はしっかり言う、ポンちゃん。董介の、巧みな話術とコミュケ(私にとって新しいボキャブラリ)能力。僕はと言えば、孤独を気取りながら、しっかり就活をやり、内定も取る。「青くて痛くて脆い」のはやっぱ、「ヒロ先輩」かもしれない。どんでん返しもあり、「ええ〜!」となる場面ありで、我々読者は、マンマと作者の罠にハメられる。住野よるさんの御本、一度手に取ってみては?
とっても気に入った本です!現代版フェアリーテールというのか、お伽話というのか。21世紀日本版「不思議の国のアリス」かもしれない。とにかく、素敵なお話しですよ。三歩(20代女性)は、大学の図書館勤務で、職場の中では、気持ちの熱い先輩諸氏に囲まれているんです。優しい先輩、怖い先輩、そしておかしな先輩。三歩ちゃん、セクシー下着も着るし、仕事をサボる事もある。しかし、大ボケだし、超ピュアだし、大食いだし、人よりちょっとゆっくりだし・・ 何と言っても、好きなものに囲まれて暮らしているのが、最高!何でも、楽しみに変えて、生きている、三歩ちゃん。ブルボンのお菓子に信奉しているし、ラーメンだって大好きだ。ドーンと落ち込む事もあるけど、楽しみを逃すまいと、好きなものに気持ちを切り替える。職場の先輩に怒られてギャフンとしたって、ブルボンのお菓子を買って帰る事を決意し、すぐ前向きになる。この本ぜーんぶ好きだけど、この本に使われている表紙の女性、ちょっと素敵過ぎないかなあ、と思うんですが・・スミません。私的には、ムーミンに出てくるスナフキンを、一捻りした風来坊風20代女性が良いなあと、希望しています。しかし、この希望は叶わなくて全然OKですよ。何かウジウジしている貴方、是非麦本三歩に触れて見て下さい!
フランスに持って行った本、第3弾!これで、最後です。いやあ・・、カワイイ地獄とは、正に言ったもの。この一冊に、「カワイイ」に中毒してしまった男女が、沢山出てきます。キャバクラを題材に、そこから派生して、人間模様を鋭く描いている訳ですが、余りにも凄くて、読んでいる私もちょっと気分が悪くなりかけましたよ。「カワイイ」の為には、何でもする、その凄まじさ!人間というのは、何かに縋って生きてたいもの。それが、「カワイイ」だったという事なんですね。しかし、そのエネルギーって、半端じゃないですよ。「カワイイ」地獄、お気を付けて。
フランスに持って行った本、第2弾。東野さんの、ユーモアのセンスに、本当に頭が下がります。飛行機の中で、沢山笑わせて頂きました。ご自分が住んでいらっしゃる出版業界を、揶揄し、翻弄し、笑いの渦に巻き込む。良くご存知だからこそ、逆転の発想で、面白くも出来る、という事なのでしょうか。まあ、兎に角、一度手にとって、読んでみて下さい。貴方も、笑いが止まらなくなるはずですよ。