Book Reviews (マイブック評)
森さん、又やってくれましたね!と言っても、これは私の感想で、この本自体は、平成17年に出版されています。森絵都さんの御本には、毎回ハートを根こそぎ持って行かれ、一人本を読みながら「良いよね〜。分かるよ、その気持ち!」と独り言連発で、読む私です。何と言っても、文体が素晴らしい。例えば、主人公がもそっと屋外に出たシーンでは、「太陽も健全だ。もったいぶったところがない。素直にぴかぴか光ってる。」と言わせている。もう、彼女(主人公の野々)が見ている景色が、自分の目の前にあるみたい!引用し始めたら、キリがないのでやめるけれど、文章に命があり、呼吸をしている。そんな感じ。 どうしようもなく自分である事。そして、それを知りながら、ドツボにハマる事。私自身の人生もそんな感じでやっているけれど、それが人生。されど人生。だから生きる事は楽しい。
井上荒野さんも、私の大好きな作家の一人だ。今このブック評を書きながらしばし思ったのは、前作浅田次郎氏の「見知らぬ妻へ」と、もしかしたら、この本は根底でとても繋がるところがあるのかも・・つまり、人間の悲しみである。人間の性である。上手く世の中渡る「処世術」と、相反した生き方が、つまり「そこへ行くな」であろうか。バカっ正直とは違うが、「要領よく」出来ない、情の深さ。情念とも言うかもしれない。この本も短編集で、どのお話しも大層素晴らしい。自分の一生をどう生きるのか、何に基準を置いて生きるのか、これは難問のようでいて、案外単純なものかもしれない。
大変美しい短編集。こういうお話しは、日本人にしか書けないと思う。「もっと、カッコ良く生きろよな!」とか、「損得考えて、物事判断しろ!」とか、常識的な観念は通用しない。大損と分かっていても、情念に生きる。そして、ドン底に落ちる。でも、とても人間らしい。涙を誘う。「どうして、そんな道、敢えて選ぶのよ〜・・」と、いくら本のこちら側から叫んでも、主人公達は知らん顔だ。そして、とても気高く、清いのだ。浅田次郎さんは、私の大好きな作家である。
私は、この明治から昭和にかけての、とてつもないエリート達が好きだ。「選りすぐり」の特別な人達。由緒正しいお金持ち。明治開花から余り時を経ない時代に、海外に行き、外国語を操る。「平等」という観念とは裏腹の、庶民には手の届かない存在。この本は、そういった人達の、夢追い物語りである。東京にある、国立西洋美術館の誕生に導く、このエリート集団の尽力。中心人物の松方幸次郎のスケールの大きい変遷。「絵空事」とは良く言ったものである。日本国の首相を巻き込み、タブローに魅せられ、魂を捧げた人達の大冒険談だ。
何と素晴らしい作家なのか・・私のハートを射止め、虜にさせてしまった山崎ナオコーラさん。今までにも、貴書は多々読んでいるものの、ご時世なのか、ドーンと心に響きました。涙あり、笑いありで(寅さんか!)、もう夢中で読んでしまったんですよ、本当に。だから、この年末、年始、山崎さんの生み出す魅力ある登場人物達と、幸せな時を過ごせました(感無量)。 まず「人のセックスを笑うな」。この本は、題名からは想像もつかない(ただ単に私の想像力の欠如かも・・)、繊細な恋愛小説です。このブック評を書くために最後のくだりを読んでいて、又泣けてしまった。山崎さんの文体が最高なのもそうだけど、文と文の間のスペース感(現実の)が、とても良い。ページに言葉が羅列せず、うま〜い具合に、隙間が空いている感だ。その隙間で、読者は、ググッと来て、想いにふける事が出来る。こういう、さりげない「時」が、大事なんだなあと、今更ながら痛感。そして、次に手に取ったのが、「美しい距離」。最愛の妻が不治の病いになり、残された日々、残された時間を、正直に、だけど葛藤しながら、生きる夫の話だ。夫は、とにかく、ひたすら妻を愛している。何でもしてあげたい。そこで「美しい距離」なのだ。ああ、又読み返して、ここでも泣いてしまった。亡くなった後、妻は、次第に遠くにいく。お墓参りをすると、妻への言葉が尊敬語になり、謙譲語も出てくる。「淡いのも濃いのも近いのも遠いのも、全ての関係が光っている。遠くても、関係さえあればいい。」と締め括る。 「リボンの男」。これは、子育てに全力を注ぐ、主夫の話。妹子(夫のあだ名)は、毎日自問自答する。自分の置かれた立場について、生産性について、子育ての喜びについて・・タロウ(子供)は、無邪気で、正直。そして、感性豊か。正に、夢の様な「子供」。みどり(妻)は、書店の店長。本に関われる事に、真の喜びを感じ、日々仕事に邁進している。この家族の何気ない、だけどとても真実な毎日を描いた小説です。最後に、「鞠子はすてきな役立たず」。もうこれは最高ですよ。公共の場で読む時は、人様からどう思われても良い覚悟で読んでくださいね。だって、大笑い、必須ですから。この本を読むと、ああ人生って、素敵だなあ。人間って、凄いなあ、って思いますよ。小太郎(夫)と鞠子(妻)は、夫婦漫才か!と思うぐらい、可笑しなカップルです。本人達は、至って真剣に毎日を送っているのですけど、ね。真面目な銀行員の夫と、専業主婦になった妻の凡庸な新婚暮らしから、お話しは始まる。しかし、鞠子は、役に立たない「趣味」に生きる事に。これは、小太郎の父の格言「働かざるもの、食うべからず」に大いに反する。小太郎は、妻を愛するものの、深い苦悩の毎日だ。ここからが、夫婦漫才の始まりという訳。どうぞ、読んで、お笑いして下さい。この夫婦のたどった道、読者も多く学ぶ事が出来ます。 2022年も、大好きな本達と一緒に幕開け。明るい年になりそうです。今年も、音楽だけでなく、相撲、読書、料理など、鞠子に負けないくらい、「役立たず」で、過ごせると良いなあ、と願っています。ああ、今日から初場所だ!仲良しの相撲ファンのT子女子と一緒に(それぞれの家から)、真夜中スマホでテキストしながら観戦します。「今の見た?」「宇良、可愛い!」などと、正に「役立たず」道をいく会話を楽しみますよ!それでは、本年もどうぞ宜しくお願いします。
この本も、ずしーんと感動の一冊です。食べる事にこんなに一生懸命になれる日本人に生まれて、本当に良かった。季節の野菜を感謝しながら、そして感動しながら食に取り入れる我々日本人、って凄い!アメリカに暮らして長くなると、実感として思いますよ。「食」への気持ちの入れ込みがあってこその、この本。重い病い、家族の軋轢、上手く行かない恋愛、全てが「わーーーー!」となる時でも、そこに美味しい食事があり、それを愛でる心がある。素晴らしいです。鶏鍋をやって、出汁が良く出たスープで、翌日雑炊を作って食べる至福の時。ああーーーー。アメリカ社会で暮らす私と、日本人の部分が半々の時もあれば、日本人の部分が円周の5分の4位を占める時もある。こういう本を読むと、円周の色分けが、ググッと「日本人だ!」枠に占められていくのを感じますね。今年もコロナ禍で、お正月は日本に帰れず・・だから、新年に向け、刺身舟盛りとお節料理の組み合わせをオーダー。日本を胃袋から感じて、新年を迎えます。
私は心深く感動しています。ホント、涙なしには読めない本です。この本に関して全く知らず、本屋さんで、愛する三浦しをんさんのご著書を発見。兎に角購入(ロサンゼルスの日本の本屋さんですから、全てが揃うという事はないんです。でもあるだけ幸せ😊)。最初は、ありゃ!、高校生の文通のお話か・・と、ちょっと疑念が沸き、ページをめくる指が遅くなりがちだったのですが、あるところから、もうのめり込んでしまった。とことん「のの」と「はな」に。彼女らの、時空を超えた愛の深さ、信頼、一体感。その全てにのめり込んでしまった。書簡の往復のみで、文庫500ページ以上の長編ですよ。どの書簡も、生き生きとしていて、嘘がない。高校で出会った二人が、長い年月の間、常に文章で語り合い、気持ちを繋ぐ。途中から二人の間に「会う」事は、必要なくなっていくのだ。紆余曲折を経て、我々読者は最後の章に導かれて行くのだが、大変な状況にも関わらず、私はその最後に美しい自由を感じた。二人の想いが、昇華していく様が、行間に見える。三浦さん、とんでもない小説をお書きになった。
いやーー、笑いました!三浦さんのユーモアに、笑いを堪えるなど、到底無理、無理。バカ笑いです、本当に。三浦さんは、私の大好きな日本人作家の一人で、今までにもたくさんのご著書を読破しています。エッセイ集では、「作家の本音」(曲者かもしれない)に溢れ、三浦さんのお隣にでも引っ越して来たかのよう。ウフフ。日常のほんの些細な事が、作家の手にかかると魔法のよう。素敵なお話しや、大ギャグに変身するんですよ。この本も、私的には、「マスト」な本だと思います。是非、手に取って下さい。但し、余りの可笑しさに、大口開けて吹き出す可能性があるので、公共の乗り物での読書はいかがなものかと・・老婆心ながら、申し上げます。最高!!!
当代きっての売れっ子作家は、やはり凄い。様々な事に興味をお持ちで、どの局面でもキチッとさばいていらっしゃる。文章のキレが良く後を引く面白さで、かつ批判するところでは、言葉を緩めずにちゃんと発言なさるのだ。そして、愛情いっぱい、とても心が広い。また、行動力も生半可ではなく、東西南北、縦横無尽だ。林さんのエッセイ集が手元にあると、こちらの心に余裕が出来るようだ。是非手に取ってみて下さい。
後半に入っての「どんでん返し」は、準備出来ていませんでした!でも、そのカラクリが分かると、今までの道のりが、クリアに見えて来るんですね。プロローグに伏線が張られているのだけど、それは中々上手くカモフラージされていて、「カラクリ」と結びつけることはかなり困難。取り敢えず一章づつ読み進む訳だけど、読みながら泥沼にハマっていきそうな、気分になる。その「意地悪さ」「気持ちの暗さ」に、読んでいるこちらの精神が、キシキシしてくるのだ。そして、最後のページまでたどり着くと、不思議な事に、その苦しさが爽やかさに変換していく。緻密な計画の元に作られたであろう本書。読み応え、かなりありますよ!