Book Reviews (マイブック評)

神去なあなあ夜話 三浦しをん  徳間書店 4/25/16 April 25, 2016

平野勇気の日記、第二話。「神去なあなあ日常」からの続編だ。勇気は、すっかり村の生活にも慣れ、車の運転も出来るようになった。山道だって、平気だ。村で唯一の若い女性への、アタックもする。どんどん、強くそして、生き生きとする勇気。読んでいる私も、ひっかき傷作りながら、山仕事に励んでいるような気分になった。とっても、素敵な青春物語。幻想的な村の神話も、信じられないようなものだから、反ってカッコよい。勇気がんばれ!

ペテロの葬列  宮部みゆき  集英社 4/11/16 April 11, 2016

これはコンサートツアーに、主に飛行機の中で読もうと思って、持参した本。680ページ以上の大長編で、結構重かった。心理描写はさすが。どんどんと惹きこまれていく。フィクションというのは作り話なのだけど(もちろんそれが面白いのだけど)、「悪の連鎖」というテーマで書かれたこの本は、何故か連鎖の仕方に無理があるように、感じたのは、私だけだろうか。バスジャックの動機とその発展の仕方も、何だか、あまりに非現実で、現実的な登場人物達と、相反してしまう感じ。なんだかんだと文句を言っているのだけど、それは、宮部みゆきだ。面白くないはずがない。ツアー中に読破しましたよ!

神去なあなあ日常 三浦しをん  徳間書店  4/11/16 April 11, 2016

三浦しをんの新しい境地!林業ものである。ファンタジーあり、就活あり、過疎化の村おこしあり、恋愛までしっかりあり、三浦さんの新しい引き出しから、次々と出てくる。メチャ面白い。どの本を取っても、すべて新しい顔があり、新しい切り口がある、三浦さん。大天才。この本読んで林業に進む、我が日本の若者がいることを、深く願っています。一生かけて情熱注げる仕事に就けた人は幸せ。そして、これしかない!という大大好きなことが、見つかった人は超幸せ。

余命一年のスタリオン 石田衣良 文芸春秋 3/20/16 March 21, 2016

これは新聞小説で最初デビューした本。まさにタイトル通りの、ガン宣告から余命を告げられ、人生の最後に向けて、どうなるか、どう変わるのか、というお話し。大長編だけど、読者を惹きつけてぐんぐんと、話しが進む。人生の終わり方を否応なく突き付けられた時、我々はどうするのか。どの歳になったから、死を受け入れられるのか、という問題ではない。抗がん剤治療で、身体も心もずたずたになってから、穏やかな日々を取り戻す主人公。いろいろ考えさせられる。

風が強く吹いている  三浦しをん  新潮社  3/15/16 March 15, 2016

これは、まさに「スポ根」ものだけど、三浦しをん流の。そして、最高のストーリーだ。とても、長編。そして最初から、最後のページにむけて、だんだんと音量を増して、「彼方へ」の章で、それが、最高潮に至る。ここは、涙を誘うところだ。やっぱ、青春って良いなあ。仲間って良いなあ。っと、思わせてくれる。だけど、臭くなく、ね。三浦しをん、すごい。

光 三浦しをん   集英社  3/15/16 March 15, 2016

この作者の引き出しの多さに、毎回驚きます。新しい本を開くと、そこに全く前の本とは違う世界、違う言葉のつながり、空間がある。「光」は、こんなに最低で良いの?と、思うくらい、最悪の最悪の人間性が根幹にある。そこから、歯が浮くような、愛を描いていく。幼馴染という安心するような関係から、とんでもない話が紡がれていく。「普通」を切望しながら、「普通」を嫌う。人間の本質に迫る本だ。

舟を編む  三浦しをん   光文社  2/24/16 February 24, 2016

本好きの私にとっては、会うべきして会った本。辞書にかける情熱。すべてを忘れて打ち込める、情熱。本当に素晴らしい。「三浦しをん」熱に浮かされている私に、更に追い打ちをかけるすご本です。再三書いているように、この作者の天才的な主人公の命名術!「馬締光也」何とすごい響き。そして彼の奥さんが、「香具矢」。言葉へのあくなき探求心の馬締に、香具矢の料理への真摯な気持ち。そんじょそこらにはいない、カッコ良い夫婦です。人生何が幸せって、こんなに狂おしく何かに執着して、仕事を愛することでしょう。もうそれに尽きる!それがあれば、他の事は後からついてくるし、又、他の事が大事じゃなくなるからね!「舟を編む」は、名著です。

まほろ駅前多田便利軒  三浦しをん 文芸春秋社 2/16/16 February 17, 2016

三浦しをんの本、2作目。「月魚」でも書いたように、私はすっかりこの人の世界にはまってしまっています。まずこの作家、大天才的に、登場人物を命名する。この本の中の、行天春彦や三峰凪子、とか、「月魚」の真志喜や瀬名垣。名前だけで、もうぐぐっと来てしまう、すごさ。確かこの本、直木賞受賞しているんですよね。「賞」を取っても、その後鳴かず飛ばずの作家もいますが、三浦しをんさんは、すごいことになると思います。いまでも、すごすぎるけど、ね。この本について、何からお話しして良いやら・・「寅さん」的な、人情ものとも言えるんだけど、発想がぶっ飛んでいるし、文章の切れが最高。是非是非、読むことをお薦めします!これからしばらく、この作家の「追っかけ」になる、私です。

月魚  三浦しをん   角川文庫  2/16/16 February 17, 2016

余りの美しさに、ほろろとさせられてしまう小説。最初はこの作家の事を知らず、てっきり男性かと思ってしまうほど、男性愛の耽美性に引き込まれてしまった。情景、文章、すべてが独自のテンポの中で、ひそやかに、そして大胆に、表現されている。いっきに私はこの作家のファンになってしまった。谷崎純一郎を彷彿させるような、それでいて、とても現代。小説家って、本当にすごい。

カンタ 石田衣良 文芸春秋  2/8/16 February 8, 2016

この題名を読んで、どれくらいの人が、内容を想像できるだろうか。この本は、「トムソーヤの冒険」かもしれないし、「コンチキ゚号漂流記」かもしない。でも、もっと大スケールのスペクトルだ。カンタと耀司の、デコボココンビの、歴史。最近読んだ本の中で、最高の位置にあると思う。これ、本当です。涙してしまうこともしばしば。男女間の愛情ではない、真の愛を描く、意欲作。是非読んでください。