Japanese Blog (日本語のブログ)
この本は日本では随分と評判になったらしいのだけど、何故かいまいちぴんと来ませんでしたね。ストーリーが複雑というのではないのだけど、似たような名前が次々に出てくるので、何度も前の章を確認してしまった私です。確かに、ひねりを入れた2回転、3回転はお見事!だけど、何となくすっきりしない。モヤモヤする。銀行という主人公は、とても魅力的なのだけど、その脇を固める人間達が、生き生きしていないような。という訳で、ブック評も、バシッと決められない感じです。
まさに「昭和の香り」とでも言おうか。。ちゃぶ台やら、豆腐売りやら、頑固おやじが、目の前に浮かぶような小説ですね。浅田さんは、好きな作家の一人で、情景描写の美しさや、心情の細やかさが良いなあと、常日頃思っています。それでいて、とてもお茶目な、冗談好き、かな? ご本人、賭け事もお好きと聞いた事があるような、ないような。もちろん、音楽家だって、音楽を弾いていない時は、いろいろなことをする訳だから、可笑しいことではないのだけど、抒情小説を読んでいて、ふとラスベガスでのギャンブル風景を想像すると、ミスマッチ。まあ、そこが魅力ということなのでしょうけれど。
下町の寅さんか、はたまたジェームス・ボンドか。痛快冒険小説だ。役者は揃い、東京のごちゃごちゃした町並みも色を添える。かなりヤバい暴力あり、だけど人は死なない。超悪だくみ人生だけど、何か憎めない。お人好し。多分、下町気質が、カッコ良さを上回っている、ドタバタ人情劇場だ。
まさに、永遠のガールにはたまらない小説。元気満載、お洒落全開、フェロモンぶっちぎり。本当にこれ、男性が書いたの??と言いたくなるくらい、女心を心底から書いて下さっている。落ち込んでいる女性にも、女心が分からず悩んでいる男性にも、そしてとにかく楽しい本が読みたい貴方にも、もってこいの一冊。霞んだような気持が一気に晴れ、爽快になること間違いなし。
これは、まさに作者から自分自身への宣言であるとともに、読者へのメッセージでもあるのでしょうね。探偵天下一と東野圭吾がオーバーラップして、そこに万華鏡のごとく世界が捻じ曲げられ、摩訶不思議。何も真実はなく、架空の世界か・・ またまた、お隣の町で起こった日常茶飯事なのか。作者のそれまでの作風への決別だと、言えばシンプルだけど、それだけでは済まされない、不思議なワンダー・ワールド。
これも、大変美しいお話しの、ぎっしり詰まった本。恋愛短編集とも言えるのだろうけれど、そんな簡単にカテゴライズしては、到底申し訳ない。一つ一つのお話しに、それぞれの愛、気持ち、幸せ、喜び、はにかみ、恥じらい、セックス、自然、季節が、様々な語り掛けで、綴られている。こんな素敵な表現、どうやって出てくるのだろう、という文章で溢れている。それも、とても質素に。この恋どこに行くのかなあ、とか、私この人と一生やっていけるんだろうか、とか、思ったら是非この本読んでください。人生を豊かにするおまじないが、心の中にすうっと忍び寄るはず。ああ・・こういう文章といつも、暮らしたい。
これは、ヴィヴァルデイ(バロックの高名な作曲家 – Antonio Lucio Vivaldi 1678-1741)と彼が生涯関わり続けた女子の孤児院(ピエタ- Pieta)の物語。もちろん、ピエタの事は知っていたし、ヴィヴァルデイが数々の名曲を、彼女達に作ったことも知っていたけれど、その背景や歴史的状況を考えたことがなくて、この本は改めてあの当時の音楽環境や生活を考えさせてくれた。それもとっても、深く。史実に基ずくお話しで、本当に作中に出てくる女性達が生き生きと、描かれている。残酷な現実を受け入れ、ふわーっと、有意義に、温かく生きるエミーリア。その類い稀な才能で、歴史上に名前を残すことになった、アンナ・マリーア。ヴィヴァルデイは、彼女の才能に触発され、技巧的な素晴らしいコンチェルトを沢山作曲した。登場人物の心の叫びが、優しさが、泪が、謙虚な愛の告白が、私を包み、しばしばこちらも彼女達と一緒に泣いた。長い時間をかけた緻密な下準備だったであろうけれど、この本の出来は最高。十八世紀のヴェネチアに遊んでみませんか。運河が広がる、ロマンチックで文化に溢れる町。飽和状態の中で退廃も進む貴族社会で、ピエタを信じ、自分をしっかり持ち、真実を見つめる。貴方もきっと、感動して涙することでしょう。
毎日はっきり言って、寝不足です。大相撲放送が、夏時間ロサンゼルスでは、夜中の12時から2時まで。演奏会やコンクールの審査が翌日にある時は、ぐっとこらえて録画して翌日見ているけれど、それ以外はひと時も逃さず、解説をしっかり聞きながら、真夜中一人、熱く観戦しています。昨日は藤井アナウンサーと北の富士さんのコンビ。これが、最高。美しい室内楽のアンサンブルと同じで、経験と博識と頭の良さと、そして何といってもお二人とも、とてもチャーミングで、うっとりと、相撲解説を聞きました。会話が、滞ることなく、すーと流れ、そして膨らみ、面白く、感動なのですね。横綱二人が負けるという波乱が起き、私だけではないと思うけど、何故か他の力士が稀勢の里関を援護射撃しているように感じますね。同部屋の高安関も自己最高の場所で、夜中と言えども、ロサンゼルスから何が出来る訳でもないのだけど、やはり寝ている場合ではないんです。これからの後半戦、更に楽しみにしています。お相撲最高!
私の空想癖に拍車をかける、優れ本。オンボロアパート小暮荘の住人達、そしてその周りに集まる、一癖も二癖もある人々(つまり変人たち)のお話しだ。毎回書いていることだけど、彼女の文章の美しさに、私ははっきり言って涙しています。美しさが凝縮されて、紙面に感情が詰まっている感じ。登場人物が、私達の心の中で、語り掛け、動き出していく。子どもの頃から、私は本大好きっ子だけど、一つには、辛い時に(こういう事が結構頻繁にあったので)空想の中に遊ぶ、という事が出来たからだと思う。そして登場人物になってみたり(コンチキ゚号漂流記とかね)、登場人物に救われたり、紙からできている本だけど、その効用はすごいもの。この小暮荘物語も、真実を明らかにしながら、こちらをドキッとさせたり、赤面させたり、笑わせたり、泣かせたり、もうすごいドラマなのです。これは、2度、3度読む本です。
彼女の小説は、詩小説だ。余りの文章の美しさに、しばしばボーッと、現実から離れてしまうことがある。そして、毎回本当に感動するのが、三浦さんの引き出しの多様性だ。7つの短編からなるこの本も、一つとして、同じ発想も設定もない。それでいて、底に流れるテーマがそこはかとなく、共通しているという訳。それは、「心中」。その理由も心理もそれぞれ。だけど、死の果てに見る救いを(死が成功しようとも、仮に現生にとどまる事になっても)描いていく。美しい世界に浸りたければ、この本を取ってみて下さい。