Book Reviews (マイブック評)
フランスに持って行った本、第3弾!これで、最後です。いやあ・・、カワイイ地獄とは、正に言ったもの。この一冊に、「カワイイ」に中毒してしまった男女が、沢山出てきます。キャバクラを題材に、そこから派生して、人間模様を鋭く描いている訳ですが、余りにも凄くて、読んでいる私もちょっと気分が悪くなりかけましたよ。「カワイイ」の為には、何でもする、その凄まじさ!人間というのは、何かに縋って生きてたいもの。それが、「カワイイ」だったという事なんですね。しかし、そのエネルギーって、半端じゃないですよ。「カワイイ」地獄、お気を付けて。
フランスに持って行った本、第2弾。東野さんの、ユーモアのセンスに、本当に頭が下がります。飛行機の中で、沢山笑わせて頂きました。ご自分が住んでいらっしゃる出版業界を、揶揄し、翻弄し、笑いの渦に巻き込む。良くご存知だからこそ、逆転の発想で、面白くも出来る、という事なのでしょうか。まあ、兎に角、一度手にとって、読んでみて下さい。貴方も、笑いが止まらなくなるはずですよ。
フランスへの旅に持って行った本のリビュー、本当に遅くなってしまったけれど、書いています。「元気になる本」、「勇気が出る本」というのが、まず印象。こんなに全ての事が、ドン底から始めてトントン拍子に行くのか、と言われれば、「?」となるけれど、そんな事はどうでも良いのでは・・現実かどうかが、問題ではなく、希望を持とう!という事だと思います。最悪の引きこもりから、米作りに関わる事で、人とも関わりを持てるようになった主人公。太陽の元で、元気を取り戻していき、人の心にも寄り添えるようになる。素敵な本でした。
塩野七生さんのイタリアにまつわる歴史小説の存在は知っていたものの、中々チャンスがなく、今回初めて読む事に。すっかり、メデイチ家の虜になってしまった。幸いな事に、数年前イタリアに行った時に、フィレンチェも訪れていたので、想像の中でフィレンチェの市街をマルコ達と歩く事が出来た。ヴェッキオ橋(Ponte Vecchio)の喧騒も、花の聖母教会(Santa Maria del Flore)の美しさも、思い出しながら。歴史小説は、史実に基づいた小説、つまりある意味、本物の歴史より面白い訳だ。恋物語あり、殺戮あり、政治工作あり、権力争いありと、人間が生きていれば遭遇するであろう、様々なポイントが網羅されている。最初の数ページの、本著に関するカラー写真も大変良い。塩野さんのローマ人の物語(ハードカバーで全15巻!!)、一冊目から、少しづつ読んでいこうと思っている。インターネットの凄まじい世の中、脱ネットで、紙のページをめくりながら歴史に身を委ねるのは、最高のご褒美かもしれない。
藤田さん、最後の作品。何が真実で、何が作られた悪なのか。屈折しつつも、あっけらかんと自己愛を貫く主人公、圭子。ミステリー性を大いに含んだ、ロマンス一杯のストーリーです。きっと、お病気の状態も悪かったのだろうけれど、こういうエンタメを産み出してしまう作家という職業。凄いですね。逆に言えば、ストーリーを頭の中で考え巡らせる時間が、病とは別の次元にあり、それが生きる糧になるのかもしれない。藤田さんの素敵なお姿を思い浮かべながら、本を読み進めました。ご冥福をお祈りします。
ご存知の様に、「ねじまき鳥クロニクル」は、3巻からなる大長編。それも、それぞれの一冊が大変分厚い。作者の代表作の一冊で、様々なところで論評が語られて来た。面白いのが、3冊を積み上げて見ると、歴然と巻を追う毎に、ページ数が増え、厚みを増している事。ページ数の多さが、説明的表現に比例している様に思うのは、私だけだろうか。この本ほど、共感できるところと、全く共感できないところが、混沌と混じり合っている本も珍しいと思う。メタファーが織りなす物語を、「僕」が語って行く訳だけど、その語りの根本が、軸をずらしながら、進んで行き、時空を超えたファンタジーとも言える。又、国際問題、社会問題を組み入れ、時に、「私、どこに居たんだっけ?」と、読者を翻弄することも。そして、我々読者は、「僕」と同化しながら、井戸の奥底に一緒に沈んで行く。面白く読むのか、そうでないのか、それは貴方次第。村上ワールドに興味、ありますか?
村上春樹の精神の強さが、如実に出るすご本!17日間に寄せられた3万7465通のメールを全て読み切り、その中から3716通を選び、その全てに返信メールを書いたんですよ!それだけでも、人類未踏の域。村上さん曰く、「まるで降っても降っても降り止まぬ大雪を、一人でシャベルを持って雪かきしているみたいでした」。そうでしょうね。そして、その返信メール、とても気が利いているんです。年齢・職業様々、老若男女、海外からも、僧侶もいるし、小さな子供もいるという具合。そのどれにも、キチンと返答していらっしゃる!私は、フジモトマサルさんのイラストも、とても良いと思いましたよ。主張し過ぎず、上手に合いの手を入れて・・これを読むと、シンプルですが、人って皆んな違うんだよなあ!、と改めて感じさせられます。本当に皆さん色々な事で悩み、想像を絶する様なご質問を抱えていらっしゃる。それを知るだけでも、プラス。そして、村上さんの素晴らしい返答を読んで、更に満足。一昔前の「家庭の医学百科」の様に、一家に一冊買い求め、手元に置いて、日がなサラサラとページをめくるのはどうでしょうか。
2013年から2015年にかけて新聞連載された、大長編。イギリス人で陶芸家のバーナード・リーチが、どれだけ日本を愛し、そして日本の芸術家達に影響を与えたかという、史実に基づいたフィクションである。原田マハさんのお得意とする、架空の人物<沖亀乃介・高市親子>を、歴史上の大芸術家<バーナード・リーチ>と出会わせ、その軌跡を追う筋書きだ。明治後期から昭和にかけての、日本陶芸シーンを、事細かに描写している。そして、大物芸術家達、柳宗悦、富本憲吉、河井寛次郎、濱田庄司、高村光太郎らが、リーチを慕い、影響を受け、その輪の中で切磋琢磨して行った。バーナード・リーチの類い稀な行動力に翻弄されながらも、彼を師と仰ぎ、助手として働き続けた亀乃介。そしてその子供高市も、陶芸家になり、リーチに出会う。100年前の人達の方が、国境というものを恐れず、柔軟にそして貪欲に、知らない世界のものを吸収して行った様な気がしてならない。インターネットで狭くなった世界が、逆に頭を固くし、心の柔軟性を奪っているのではないだろうか。そして、「炎上」を恐れるあまり、自分の心の声を、自由に発言する自由も失った気がしてならない。素晴らしい、歴史的フィクション。ネット社会から少し距離を置き、是非読んで見て下さい。
大長編、2部作。腰を降ろして臨まないと、読み切れないかもしれないですよ。第一部「顕れるイデア編」に続き、第二部の「遷ろうメタフォー編」。時に、ハリーポッター風の冒険談にもなり、超恋愛小説にもなり、哲学書にもなる。でも、語り方は、一貫して村上春樹調。読者の私は、大破に呑まれながらも、行き先を失わずに最後までたどり着いたのです。要約するのはとても難しい小説でしょうね。逆に言えば、パンデミックの中、現実というものの儚さを実感し、この小説に共感を得た部分がある事も、事実。主人公の「私」が、小田原近郊の隠れ屋風の家で過ごした数ヶ月の、夢とも、現実ともつかない日々の回想録。そして、輪廻の如く、再び現実に戻り、小田原以前の暮らしに戻るまでの日々。最後に辿り着くと、「ええー、こんな終わりで良いの??」と自問してしまいがちだが、人生というものは、そういうものなのだろう。メタフォーもイデアも遠くに置き去りにして・・ Large feature, it is a two-part work. If you don’t have a strong will, you may not be able to read it through. I read this book in an original language, Japanese. Following the first part, “Appearing Ideas,” the second part, “Transitional Metaphor.” Sometimes it’s a Harry Potter-style adventure story, a super-romance novel, and […]
誕生日にまつわる、不思議なお話し。「イラスト」というのは、良くも悪くも、話の内容にまで深く影響するから、面白い。本を読む前に、読者側にそれ相応のイメージが刻まれるからだ。表紙のピンク、赤、ゴールドの彩り。本の中も、同じ様な色使いで、イラストがかなり大きな顔をして、自己主張している。このイラストが、全く違うアーチストのもので、色も全く違えば、読者は180度違う反応を示すだろう。だから、逆に言えばこの本を、イラストなしで読んで見たいと思う。イラストのイメージから逃れた、一年先くらいに。