Japanese Blog (日本語のブログ)

ラン 森絵都 理論社 May 14, 2022

小説の初期段階に、「幽霊」的なところが出て来て、これは私の苦手分野かなあ、と尻込みするも、勇気を奮って読み進める。「トンネルを抜けると・・・」ではないけれど、そこには素晴らしい世界が待っていたんですね。前世と現世の境が、40キロのレーン越えによって繋がっていて、主人公夏目環は、ひょんな事からそこを通り抜け、幼少時に失った家族に会うチャンスに巡り会う。前世に行った人達は、そこでそれぞれの前世の自分を洗い流す。最初に溶けるのは、苦しい過去や悲しい記憶、そしてやがてきれいな思い出も溶け、しまいには自分そのものが溶けていく。続いて、自分と他人の区別がつかなくなり、その段階で前世の中の次のステップへ進み、最終的に「輪廻転生」という「輪」の中へ入っていくという訳。そして、現世では(もちろん誰も、全然洗われていない世界!)、人がぶつかり、けなしあい、いじめがあり、でもどん底から這い上がり、愛を見つけ、心の平和を見つけていく。この小説の登場人物は、皆(良くも悪くも)とても真剣だ。真剣すぎて、時に背負わなくても良い苦労を請け負ってしまう。長編小説なので、紆余曲折ありありで、最終的に夏目環は、強くそして自分を信じられるようになる。読後、「良い小説だなあ」、と心から思いますよ!お薦めです。

いつかパラソルの下で 森絵都 角川書店 May 2, 2022

森さん、又やってくれましたね!と言っても、これは私の感想で、この本自体は、平成17年に出版されています。森絵都さんの御本には、毎回ハートを根こそぎ持って行かれ、一人本を読みながら「良いよね〜。分かるよ、その気持ち!」と独り言連発で、読む私です。何と言っても、文体が素晴らしい。例えば、主人公がもそっと屋外に出たシーンでは、「太陽も健全だ。もったいぶったところがない。素直にぴかぴか光ってる。」と言わせている。もう、彼女(主人公の野々)が見ている景色が、自分の目の前にあるみたい!引用し始めたら、キリがないのでやめるけれど、文章に命があり、呼吸をしている。そんな感じ。 どうしようもなく自分である事。そして、それを知りながら、ドツボにハマる事。私自身の人生もそんな感じでやっているけれど、それが人生。されど人生。だから生きる事は楽しい。

そこへ行くな 井上荒野  集英社 April 10, 2022

井上荒野さんも、私の大好きな作家の一人だ。今このブック評を書きながらしばし思ったのは、前作浅田次郎氏の「見知らぬ妻へ」と、もしかしたら、この本は根底でとても繋がるところがあるのかも・・つまり、人間の悲しみである。人間の性である。上手く世の中渡る「処世術」と、相反した生き方が、つまり「そこへ行くな」であろうか。バカっ正直とは違うが、「要領よく」出来ない、情の深さ。情念とも言うかもしれない。この本も短編集で、どのお話しも大層素晴らしい。自分の一生をどう生きるのか、何に基準を置いて生きるのか、これは難問のようでいて、案外単純なものかもしれない。

見知らぬ妻へ 浅田次郎 光文社 April 10, 2022

大変美しい短編集。こういうお話しは、日本人にしか書けないと思う。「もっと、カッコ良く生きろよな!」とか、「損得考えて、物事判断しろ!」とか、常識的な観念は通用しない。大損と分かっていても、情念に生きる。そして、ドン底に落ちる。でも、とても人間らしい。涙を誘う。「どうして、そんな道、敢えて選ぶのよ〜・・」と、いくら本のこちら側から叫んでも、主人公達は知らん顔だ。そして、とても気高く、清いのだ。浅田次郎さんは、私の大好きな作家である。

美しき愚かものたちのタブロー  原田マハ  文藝春秋 April 10, 2022

私は、この明治から昭和にかけての、とてつもないエリート達が好きだ。「選りすぐり」の特別な人達。由緒正しいお金持ち。明治開花から余り時を経ない時代に、海外に行き、外国語を操る。「平等」という観念とは裏腹の、庶民には手の届かない存在。この本は、そういった人達の、夢追い物語りである。東京にある、国立西洋美術館の誕生に導く、このエリート集団の尽力。中心人物の松方幸次郎のスケールの大きい変遷。「絵空事」とは良く言ったものである。日本国の首相を巻き込み、タブローに魅せられ、魂を捧げた人達の大冒険談だ。

ロサンゼルス発 熟年スモジョ「どすこい日誌」華々しい相撲界:初場所、新大関誕生、続々結婚! January 27, 2022

楽しかった初場所相撲観戦も終わり、数日。続々と相撲関連ニュースが入って来ます。まず、御嶽海関、優勝、三賞受賞、そして大関取りおめでとうございます。又、結婚発表も同時に行い、ダブル・ダブルのお祝いですね。北の富士さんがファンだと公言して止まない母上、マルガリータさんも大喜びの様子です。結婚が起爆剤になったのか、今場所の御嶽海関は、顔つきもインタビューでの受け答えも違っていて、「やるかも・・」と予感させてくれ、我々の期待通りの結果に。身体的にも、気持ちの強さでも、次の地位を狙える才能に恵まれているので、益々の活躍を望んでいます。 もう一人の三賞受賞の阿炎の活躍には、感動感動!錣山親方の喜ぶ顔が目に浮かびます。相撲勘がとても良く、反応が良い。土俵を縦横無尽に飛び回り、相手を押し出す相撲。上の地位での活躍が早く見られますように。最後の三賞受賞者は、若手のホープ琴ノ若。お祖父ちゃん、お父さんと、脈々と流れる相撲の血。体格にも恵まれ、落ち着いた相撲振りが最高ですね。今後、再び怪我で休場という事のない様に、「怪我をしない」相撲で頑張って下さい。 横綱照ノ富士は、堂々と15日間取り切りました。踵の怪我を公表せず、千秋楽まで相撲を取り続けた姿は、流石です。しかし、今後もあるので、是非とも無理をしないで頂きたい。若・3兄弟の二人が幕内で勝ち越しの快挙。宇良も、三役に手が届くところまで来ました。阿武咲、豊昇龍の活躍も、見逃せませんね。正代のことについては、触れないことにします!貴景勝、怪我を直して早く復帰して欲しいです。佐ノ山親方、結婚おめでとうございます!お兄さんの千代丸関が、先を越された!と、言っていましたよ。千代丸関、貴方にはあなたの人生があります。又、志摩ノ海関、婚約おめでとうございます。 私の中での今場所の大きな出来事は、NHK藤井アナの引退です。私の相撲人生は、藤井アナと一緒に合ったと言っても過言ではなく、本当に惜しまれます。北の富士さんも、舞の海さんも、お別れの言葉を述べられていましたね。藤井アナの相撲の歴史への深い造詣、相撲愛、もう誰にも負けません。ゲストで相撲中継に出演して頂きものです。NHKの皆様、どうぞ宜しくお願いします。 又、相撲部屋の世代交代、名跡変更が多々行われた場所でもありました。尾車親方、長年の相撲界への功績、ありがとうございました。3月まで、暫し相撲とは、お別れ。全ての力士の皆さん、素晴らしい場所をありがとうございました。これにて、千秋楽!

山崎ナオコーラに夢中!一気に4冊読む。人のセックスを笑うな、美しい距離、リボンの男、鞠子はすてきな役立たず January 8, 2022

何と素晴らしい作家なのか・・私のハートを射止め、虜にさせてしまった山崎ナオコーラさん。今までにも、貴書は多々読んでいるものの、ご時世なのか、ドーンと心に響きました。涙あり、笑いありで(寅さんか!)、もう夢中で読んでしまったんですよ、本当に。だから、この年末、年始、山崎さんの生み出す魅力ある登場人物達と、幸せな時を過ごせました(感無量)。 まず「人のセックスを笑うな」。この本は、題名からは想像もつかない(ただ単に私の想像力の欠如かも・・)、繊細な恋愛小説です。このブック評を書くために最後のくだりを読んでいて、又泣けてしまった。山崎さんの文体が最高なのもそうだけど、文と文の間のスペース感(現実の)が、とても良い。ページに言葉が羅列せず、うま〜い具合に、隙間が空いている感だ。その隙間で、読者は、ググッと来て、想いにふける事が出来る。こういう、さりげない「時」が、大事なんだなあと、今更ながら痛感。そして、次に手に取ったのが、「美しい距離」。最愛の妻が不治の病いになり、残された日々、残された時間を、正直に、だけど葛藤しながら、生きる夫の話だ。夫は、とにかく、ひたすら妻を愛している。何でもしてあげたい。そこで「美しい距離」なのだ。ああ、又読み返して、ここでも泣いてしまった。亡くなった後、妻は、次第に遠くにいく。お墓参りをすると、妻への言葉が尊敬語になり、謙譲語も出てくる。「淡いのも濃いのも近いのも遠いのも、全ての関係が光っている。遠くても、関係さえあればいい。」と締め括る。 「リボンの男」。これは、子育てに全力を注ぐ、主夫の話。妹子(夫のあだ名)は、毎日自問自答する。自分の置かれた立場について、生産性について、子育ての喜びについて・・タロウ(子供)は、無邪気で、正直。そして、感性豊か。正に、夢の様な「子供」。みどり(妻)は、書店の店長。本に関われる事に、真の喜びを感じ、日々仕事に邁進している。この家族の何気ない、だけどとても真実な毎日を描いた小説です。最後に、「鞠子はすてきな役立たず」。もうこれは最高ですよ。公共の場で読む時は、人様からどう思われても良い覚悟で読んでくださいね。だって、大笑い、必須ですから。この本を読むと、ああ人生って、素敵だなあ。人間って、凄いなあ、って思いますよ。小太郎(夫)と鞠子(妻)は、夫婦漫才か!と思うぐらい、可笑しなカップルです。本人達は、至って真剣に毎日を送っているのですけど、ね。真面目な銀行員の夫と、専業主婦になった妻の凡庸な新婚暮らしから、お話しは始まる。しかし、鞠子は、役に立たない「趣味」に生きる事に。これは、小太郎の父の格言「働かざるもの、食うべからず」に大いに反する。小太郎は、妻を愛するものの、深い苦悩の毎日だ。ここからが、夫婦漫才の始まりという訳。どうぞ、読んで、お笑いして下さい。この夫婦のたどった道、読者も多く学ぶ事が出来ます。 2022年も、大好きな本達と一緒に幕開け。明るい年になりそうです。今年も、音楽だけでなく、相撲、読書、料理など、鞠子に負けないくらい、「役立たず」で、過ごせると良いなあ、と願っています。ああ、今日から初場所だ!仲良しの相撲ファンのT子女子と一緒に(それぞれの家から)、真夜中スマホでテキストしながら観戦します。「今の見た?」「宇良、可愛い!」などと、正に「役立たず」道をいく会話を楽しみますよ!それでは、本年もどうぞ宜しくお願いします。  

わたしたちは、銀のフォークと、薬を手にして 島本理生 幻冬社文庫 December 20, 2021

この本も、ずしーんと感動の一冊です。食べる事にこんなに一生懸命になれる日本人に生まれて、本当に良かった。季節の野菜を感謝しながら、そして感動しながら食に取り入れる我々日本人、って凄い!アメリカに暮らして長くなると、実感として思いますよ。「食」への気持ちの入れ込みがあってこその、この本。重い病い、家族の軋轢、上手く行かない恋愛、全てが「わーーーー!」となる時でも、そこに美味しい食事があり、それを愛でる心がある。素晴らしいです。鶏鍋をやって、出汁が良く出たスープで、翌日雑炊を作って食べる至福の時。ああーーーー。アメリカ社会で暮らす私と、日本人の部分が半々の時もあれば、日本人の部分が円周の5分の4位を占める時もある。こういう本を読むと、円周の色分けが、ググッと「日本人だ!」枠に占められていくのを感じますね。今年もコロナ禍で、お正月は日本に帰れず・・だから、新年に向け、刺身舟盛りとお節料理の組み合わせをオーダー。日本を胃袋から感じて、新年を迎えます。

ののはな通信 三浦しをん 角川文庫 December 12, 2021

私は心深く感動しています。ホント、涙なしには読めない本です。この本に関して全く知らず、本屋さんで、愛する三浦しをんさんのご著書を発見。兎に角購入(ロサンゼルスの日本の本屋さんですから、全てが揃うという事はないんです。でもあるだけ幸せ😊)。最初は、ありゃ!、高校生の文通のお話か・・と、ちょっと疑念が沸き、ページをめくる指が遅くなりがちだったのですが、あるところから、もうのめり込んでしまった。とことん「のの」と「はな」に。彼女らの、時空を超えた愛の深さ、信頼、一体感。その全てにのめり込んでしまった。書簡の往復のみで、文庫500ページ以上の長編ですよ。どの書簡も、生き生きとしていて、嘘がない。高校で出会った二人が、長い年月の間、常に文章で語り合い、気持ちを繋ぐ。途中から二人の間に「会う」事は、必要なくなっていくのだ。紆余曲折を経て、我々読者は最後の章に導かれて行くのだが、大変な状況にも関わらず、私はその最後に美しい自由を感じた。二人の想いが、昇華していく様が、行間に見える。三浦さん、とんでもない小説をお書きになった。

エッセイ集 のっけから失礼します 三浦しをん  集英社 November 8, 2021

いやーー、笑いました!三浦さんのユーモアに、笑いを堪えるなど、到底無理、無理。バカ笑いです、本当に。三浦さんは、私の大好きな日本人作家の一人で、今までにもたくさんのご著書を読破しています。エッセイ集では、「作家の本音」(曲者かもしれない)に溢れ、三浦さんのお隣にでも引っ越して来たかのよう。ウフフ。日常のほんの些細な事が、作家の手にかかると魔法のよう。素敵なお話しや、大ギャグに変身するんですよ。この本も、私的には、「マスト」な本だと思います。是非、手に取って下さい。但し、余りの可笑しさに、大口開けて吹き出す可能性があるので、公共の乗り物での読書はいかがなものかと・・老婆心ながら、申し上げます。最高!!!