Japanese Blog (日本語のブログ)
これは、ヴィヴァルデイ(バロックの高名な作曲家 – Antonio Lucio Vivaldi 1678-1741)と彼が生涯関わり続けた女子の孤児院(ピエタ- Pieta)の物語。もちろん、ピエタの事は知っていたし、ヴィヴァルデイが数々の名曲を、彼女達に作ったことも知っていたけれど、その背景や歴史的状況を考えたことがなくて、この本は改めてあの当時の音楽環境や生活を考えさせてくれた。それもとっても、深く。史実に基ずくお話しで、本当に作中に出てくる女性達が生き生きと、描かれている。残酷な現実を受け入れ、ふわーっと、有意義に、温かく生きるエミーリア。その類い稀な才能で、歴史上に名前を残すことになった、アンナ・マリーア。ヴィヴァルデイは、彼女の才能に触発され、技巧的な素晴らしいコンチェルトを沢山作曲した。登場人物の心の叫びが、優しさが、泪が、謙虚な愛の告白が、私を包み、しばしばこちらも彼女達と一緒に泣いた。長い時間をかけた緻密な下準備だったであろうけれど、この本の出来は最高。十八世紀のヴェネチアに遊んでみませんか。運河が広がる、ロマンチックで文化に溢れる町。飽和状態の中で退廃も進む貴族社会で、ピエタを信じ、自分をしっかり持ち、真実を見つめる。貴方もきっと、感動して涙することでしょう。
毎日はっきり言って、寝不足です。大相撲放送が、夏時間ロサンゼルスでは、夜中の12時から2時まで。演奏会やコンクールの審査が翌日にある時は、ぐっとこらえて録画して翌日見ているけれど、それ以外はひと時も逃さず、解説をしっかり聞きながら、真夜中一人、熱く観戦しています。昨日は藤井アナウンサーと北の富士さんのコンビ。これが、最高。美しい室内楽のアンサンブルと同じで、経験と博識と頭の良さと、そして何といってもお二人とも、とてもチャーミングで、うっとりと、相撲解説を聞きました。会話が、滞ることなく、すーと流れ、そして膨らみ、面白く、感動なのですね。横綱二人が負けるという波乱が起き、私だけではないと思うけど、何故か他の力士が稀勢の里関を援護射撃しているように感じますね。同部屋の高安関も自己最高の場所で、夜中と言えども、ロサンゼルスから何が出来る訳でもないのだけど、やはり寝ている場合ではないんです。これからの後半戦、更に楽しみにしています。お相撲最高!
私の空想癖に拍車をかける、優れ本。オンボロアパート小暮荘の住人達、そしてその周りに集まる、一癖も二癖もある人々(つまり変人たち)のお話しだ。毎回書いていることだけど、彼女の文章の美しさに、私ははっきり言って涙しています。美しさが凝縮されて、紙面に感情が詰まっている感じ。登場人物が、私達の心の中で、語り掛け、動き出していく。子どもの頃から、私は本大好きっ子だけど、一つには、辛い時に(こういう事が結構頻繁にあったので)空想の中に遊ぶ、という事が出来たからだと思う。そして登場人物になってみたり(コンチキ゚号漂流記とかね)、登場人物に救われたり、紙からできている本だけど、その効用はすごいもの。この小暮荘物語も、真実を明らかにしながら、こちらをドキッとさせたり、赤面させたり、笑わせたり、泣かせたり、もうすごいドラマなのです。これは、2度、3度読む本です。
彼女の小説は、詩小説だ。余りの文章の美しさに、しばしばボーッと、現実から離れてしまうことがある。そして、毎回本当に感動するのが、三浦さんの引き出しの多様性だ。7つの短編からなるこの本も、一つとして、同じ発想も設定もない。それでいて、底に流れるテーマがそこはかとなく、共通しているという訳。それは、「心中」。その理由も心理もそれぞれ。だけど、死の果てに見る救いを(死が成功しようとも、仮に現生にとどまる事になっても)描いていく。美しい世界に浸りたければ、この本を取ってみて下さい。
今や当たり前のネット遊びだが、このお話しはそれが誕生して、まだ間もないころのものだ。問題提起したともいえるし、テクノロジーの先にあるもっと深刻な問題をすでに読んでいたともいえる。とても鋭いのだけど、こういう時代物は、その時が過ぎてしまうと、ちょっと色褪せ感がなくもない。推理小説仕立てになっているので、その辺でスリルを味わうのも良いかも。でも、基本的に私、乃南アサさんのご本、好きです。
すごい偶然!これも井上夢人作品同様、頭の中のお話し。こっちは新興宗教じゃなくて、脳移植というとんでもないSFの世界。脳移植によって、他人に徐々に侵食されていくお話。脳が体を支配するのか、その逆か、という議論が出てくるけどね!天才東野圭吾、目の付け所が違う。そして、彼の終わりのない「興味津々」の態度が素敵だ。
宣伝文にあるように、ミステリー、SF, 恋愛小説、のすべてを網羅し、合体させた超大作。最初は、お義理的に読み始めたのだけれど、何故かどどっとはまってしまいましたね。お話しは、とてもスローに進むのだけど、心理描写がやっぱり良いのかなあ・・ 惹き込まれてしまいますよ。新興宗教から、母娘の葛藤、どんぞこからの一発逆転恋愛。とても面白く読みました。
これは、単なる女の嫉妬、いじわる、妬み本ではない。誰でもが陥る、魔の領域を、日常の何気ない風景を描きながら鋭く突いていく。又、日本人の特性でもある(良い意味でも悪い意味でも)、他人の目を意識して、その中での「個」を生きる人生。本当は誰も他人の事なんか構っていないのに、あたかも、「見られているような」気になり、「噂されているような」気になり、「対抗意識を持たれているような」気になる思考経路。そういう風に思っている人達は、他人に対してそう感じているかもしれないけど、皆忙しいし、私達、自分の事、自分の家族、自分の周囲の事でいっぱいだ。そして、自分達の幸せを感じるのでいっぱいなはず!この本は、そういう自分が作り上げた「空想」が徐々に「精神のアンバランス」を引き起こし、ドツボにはまっていく、教訓のような本だ。自分をしっかり持ちましょうね。そして、周囲に振り回されずに、楽しく生きましょうね。素敵な事は、身近な場所に転がっていて、しっかり心の目を開いていれば、ちゃんと見えるはず。
大変な長編。作者の電気工学のバックグラウンドが、最高に生きている作品だ。そして、東野さんの工学に対する、「愛」というのが、感じられると思う。楽しんでいるなあ、という感じ。現実離れのサスペンス。だけど、「赤い指」に繋がるヒューマニズムが、ひしひしと伝わってくるのも、興味深い。犯人探しの話ではない。作者自ら謎解きは放棄している。焦点は、信念。そして、愛。福島の原発問題を考えると、この話は恐ろしいことに、とても先を読んでいたし、啓発だと思う。
私の大好きな作家の一人、東野圭吾さん。私の目が、星だらけになっているの、見えます?彼の代表作(私の中では)「手紙」や「赤い指」のような、随分前に書かれた作品もあるけれど、どうしてどうして、天才というのは、その才能をどんな時にも隠しようがないんですね。この本は、お洒落、洒脱、快活。推理小説に必須のおひねり(!)もあって、後を引かれながら、一機に読んでしまいました。