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Book Reviews (マイブック評) いのち 瀬戸内寂聴 講談社 July 11, 2022

95歳で書かれた素晴らしいご本。作者の熱量が、ビシビシ伝わって来る。同世代の日本を代表する作家達との交流が、現在のご自分の暮らしとのオーバラップで、本は進んでいく。第一線の作家達の素顔(らしい、小説なので・・)を垣間見る事が出来、私に取っては未知の世界、触れてはならない世界が、目の前のページから飛び込んで来た。作家としての苦悩、喜び、そして必然性。素晴らしいの一言です。瀬戸内寂聴さん、惜しくも100歳を目前に昨年、11月に亡くなられた。その生涯を捧げて描き続けた小説というもの。ご本人にとっては、息をする事と同じ様に、なくてはならないものであったのだろう。ご冥福を祈りながら、改めて瀬戸内寂聴という大きな存在が、この世界から消えてしまったのだなあと、感慨深い。

English Blog Movie “Tampopo” Again 映画「タンポポ」再び・・ July 11, 2022

I don’t remember how many times I have watched this movie. I have memorized most of scenes and texts! I think I have written the review before, but I am writing again. Because it is just a GREAT MOVIE! How clever, how witty, how creative, how fun, how professional… Juzo Itami, a director, is truly […]

English Blog Movie “As Good As It Gets” June 30, 2022

I watched this movie before, but the second time did not bore me at all. Actually I enjoyed it so much. It is a “good movie”.  Melvin Udall (Jack Nicholson) is an obsessive-compulsive writer of romantic fiction. But unlike what he writes, he is quite rude to everyone he meets, including his gay neighbor Simon […]

Book Reviews (マイブック評) 異類婚姻譚  本谷有希子  講談社 June 30, 2022

芥川賞受賞作。これだけでも、普通なら大変な事であるが、作者、本谷有希子さんの才能はそこだけに止まらない。20歳ちょっとで、自分の名前を冠した劇団を旗揚げし、演出も手がけるのだ。そして、戯曲では、様々な賞を受賞していらっしゃる。是非、彼女の作ったお芝居も観てみたいものだ。そして、今までにも小説も沢山出していらっしゃるし・・ そして、この「異類婚姻譚」。実は、少し前にこの「夫婦の顔が似てくる」というテーマについて、アメリカの義理の妹と話した事がある!私達の会話の根源は、どちらかというと遺伝子的な事から始まったのだけどね。(彼女は、植物学者なので、ちなみに。)我々の会話ではないけれど、現実的にも、この「夫婦似」現象、結構あるのではないだろうか。しかし、それを小説に昇華するというのは、本谷さんだけだろう。それも、こんな濃厚なお話に。ああ、こういう文章が、大きな文学賞を取るのだなあ、と思い知らされた一作でもある。

Book Reviews (マイブック評) むらさきのスカートの女 今村夏子 毎日新聞出版 June 24, 2022

何と、奇抜な発想と転換。「むらさきのスカートの女」と主人公の関係は、愛でも、友情でもなく、妬みでも、嫌悪でもない。主人公は、とても「むらさきのスカートの女」と、友達になりたがっているが、最後のページまで、この主人公が誰なのか、読者は知らされない。勘が良い貴方なら、気がつくかもしれないけれど、ね。そして、この主人公、うまーく「むらさきのスカートの女」を操り、陥れる事に成功してしまう。英語だと、コントロール・フリークとでも言うところ。淡々とした表現の中に、狂気が垣間見え、ちょっとゾッとするのは、私だけであろうか。偏執狂にご興味があれば、この本をお薦めしますよ。

Book Reviews (マイブック評) マスカレード・ナイト 東野圭吾 集英社 June 24, 2022

ほんの数日の出来事が、大長編となる凄さ!高級ホテル「ホテル・コルシカ東京」のカウントダウン・パーテイは、仮面・仮装での参加。そこに、犯人からの挑戦状が届くという訳である。東野圭吾ファンを長く続けさせて頂いている私である(ここは敬語で臨みます!)。ちょこっと、謎解きが出来たので、自分自身を褒めて上げました。最後のどんでん返しには辿り着けなかったけれど、探偵の助手くらいは務まるかも!伏線が沢山あるので、その辺を上手く見つけて、貴方も犯人探しの手助けをしてみませんか?魅力ある登場人物ばかりなので、退屈しませんよ。

English Blog A Movie “Downton Abbey: New Era” (映画:ダウントンアビー) May 30, 2022

I have been resisting watching “Downton Abbey” because of its popularity. But I must admit I became a fan myself after watching “Downton Abbey: New Era”. Last week, I had a free afternoon and could not find any movie I would like to see, so I hesitantly chose this movie. The story has absolute ingredients, […]

Japanese Blog (日本語のブログ) ロサンゼルス発 熟年スモジョ「どすこい日誌」毎日楽しかった5月場所、照ノ富士の優勝で幕を閉じる! May 22, 2022

後半戦、優勝は誰か・・・と、ヤキモキした5月場所。毎日、本当に相撲中継が楽しみでした。結果として、照ノ富士が横綱の貫禄を見せて、賜杯を掴みましたね。優勝インタビューでは、喜びと共に横綱としての重責を語り、自然体の姿勢に好感が持てました。語るまでもなく、結果を出せなかった大関陣。千秋楽に、かろうじて貴景勝が正代相手に勝ち越したものの、残り2人の大関はひどい負け越しで角番。3役では、阿炎が7勝止まりでしたが、若隆景9勝、豊昇龍8勝、霧馬山10勝と、これからの相撲界を牽引していく大きな力を感じました。 私は、心から佐田の海にエールを送りたいですね。35歳、真面目で真摯な相撲態度。2度目の三賞受賞でした。大栄翔、隆の勝の三賞ももちろん順当。左差しみの若元春、四つ相撲の琴ノ若、9勝。関取で唯一北海道出身の一山本も成長著しく8勝。復帰を感じさせる明正8勝、翠富士はたき込み炸裂で9勝、ベテラン勢では隠岐の海9勝、碧山10勝。幕尻の2人、千代大龍と錦木が勝ち越し。中盤まで場所をリードしていた、幕内力士最年長の玉鷲は、9勝。宇良は、優勝戦線に残っていたものの、怪我で14日目から休場。 相撲協会の新体制化で、審判部、テレビの解説担当が入れ替わり、今まで中々お話を聞くチャンスのなかった親方の解説が聞けたのも、興味深い場所でした。九重親方(千代大海)の解説に、私は惚れ込んでしまいましたね。「土俵に上がると一対一の男の勝負」、「相手がここで勝負をかけて来るんだという勘」など、思い出深いコメント多々。又、若の里の西岩親方は、39歳で引退するまで変化は一度しかしなかったというお話し。これにも感動!これはテレビの相撲中継ではありませんが、春日野部屋の力士が、春日野親方の言葉「日々の稽古は嘘をつかない」を披露していましたが、これは音楽や他の分野にも通ずる有難い言葉ですね。又、佐田の海の「偶数月の稽古でここまで来た」というのも、深く頷けます。 名古屋場所では、朝乃山が1年ぶりに3段目からの復帰。夏巡業も復活するという話を聞きました。出稽古の復活もそろそろでしょうか。7月場所に、大きな期待を残して、国技館からしばしお別れです。どすこい!

Book Reviews (マイブック評) ファミリー・ビジネス 米谷ふみ子 新潮社 May 19, 2022

的を得ている事だらけで、(米谷さんの文体を拝借して)「オー・マイ・ゴッド!」。作者の米谷さん、ロサンゼルスにお住まいなのに、全く知らずに今日まで過ごして来た事に、呵責の念に苛まれています「アイ・アム・ソーリ」。98年に、女流文学賞を受賞した本作品。文章の切れとテンポ、関西弁と英語日本語のうま〜い共存、どれを取っても最高です。どん底の苦しみも、笑いに変え強く生きていく、主人公とその家族。米谷さんご本人の人生経験がベースの小説だと思うのですが、ドロドロしていなくて、とても爽やか。解決の糸口が見えない、家族のしがらみに絡みとられている貴方。必読ですよ!解決は望めないかも知れないけれど、気持ちがスキッとなる事、請け合いデス。「ハバ・ナイス・デイ!」

Book Reviews (マイブック評) ラン 森絵都 理論社 May 14, 2022

小説の初期段階に、「幽霊」的なところが出て来て、これは私の苦手分野かなあ、と尻込みするも、勇気を奮って読み進める。「トンネルを抜けると・・・」ではないけれど、そこには素晴らしい世界が待っていたんですね。前世と現世の境が、40キロのレーン越えによって繋がっていて、主人公夏目環は、ひょんな事からそこを通り抜け、幼少時に失った家族に会うチャンスに巡り会う。前世に行った人達は、そこでそれぞれの前世の自分を洗い流す。最初に溶けるのは、苦しい過去や悲しい記憶、そしてやがてきれいな思い出も溶け、しまいには自分そのものが溶けていく。続いて、自分と他人の区別がつかなくなり、その段階で前世の中の次のステップへ進み、最終的に「輪廻転生」という「輪」の中へ入っていくという訳。そして、現世では(もちろん誰も、全然洗われていない世界!)、人がぶつかり、けなしあい、いじめがあり、でもどん底から這い上がり、愛を見つけ、心の平和を見つけていく。この小説の登場人物は、皆(良くも悪くも)とても真剣だ。真剣すぎて、時に背負わなくても良い苦労を請け負ってしまう。長編小説なので、紆余曲折ありありで、最終的に夏目環は、強くそして自分を信じられるようになる。読後、「良い小説だなあ」、と心から思いますよ!お薦めです。