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坂本龍一さん追悼 (1952−2023) 坂本龍一が、どうやって世界のRyuichi Sakamoto になって行ったのかを、克明な記録と共に、ご本人が語った自伝。幼少期から芸大に入るまでのところは、私自身も(時期は違えど)日本で同じ様な道を歩んで音大に入ったので、とても興味深かった。私は、高校時代とても不良で(こんな言葉は、もう死語かもしれないけれど)、坂本さんが遊んでいた周辺のことも何となく想像出来て、読んでいてとても楽しかった。私自身ロック喫茶に入り浸り、そこで知り合った仲間達と夜な夜な遊んでいたのだ。それでも、家に帰るとピアノの練習はキチンとしていたし、それをしないと気が済まなかった自分がいた。日本の音大卒業後に馴染みになった飲み屋さんが、千歳烏山にあって、そこには以前坂本さんが出入りしていたと、聞いていた。残念ながら、私は鉢合わせた事はなかったけれど。その意味がこの本を読んで理解!坂本さんのご実家が、その近くだったのだ。 我々の心を虜にしたYMOの数々のヒット曲。そして、映画音楽、コマーシャルソング、俳優やモデルとしての活動など、もうその功績は大きすぎて、短い文章の中で語る事は不可能だ。是非是非この本を読んで下さい。私はこの本を読みながら、しばし「Sakamoto World」に入り込み、素敵な時間を過ごさせてもらったから。心よりご冥福をお祈りします。
以前から耳にしていた(海外でも)8050現象について、真っ向勝負した小説。そんなまさか自分の家族に・・世間から隠せるならトコトン隠してしまう・・ひきこもりの我が子を拒絶しながら、それでも愛してしまう父・・ イジメから一つ目の階段を踏み外すことになり、それを修復しなかったばかりに、雪だるま式に引きこもりの世界へ封印されてしまった長男。優秀で将来は医院を継ぐはずだった彼。家族はもうありとあらゆる手段を講じて助けようとするが、どれもダメ。油に水を注ぐばかりの毎日が続く。再生する為に、最初の「階段、踏み外し」まで遡り、それをとことん追求し、そこに家族で向き合う事によって、再生の光が灯った。 緻密な準備段階を経て書かれたであろう、超力編である。ホームレス(アメリカでは Unhoused Peopleという呼称を使っている)問題も原点は同じであろうか。一歩を踏み外し、それを続けているうちに、修復のつかない所まで行ってしまう。そして、そこまで到達すると、復帰してくることは困難を極める。林さんに、是非 Unhoused Peopleについても、書いて頂きたいと思う(もし既に執筆済みであったなら、ご容赦下さい)。 「愛」を語った素晴らしい長編小説。涙なしには読めないと思う。
I am in the midst of “Chopin Project”, and I have been trying to learn about him from different perspectives. This book provides interesting points of views on the composer. It goes through not only Chopin but also his friends and most importantly the life of George Sand. Sometimes it is a bit confusing that […]
Such a delight to read András Schiff ‘s memoir! He has tremendous humor and sharp mind to tell us his stories. He goes through many fascinating episodes which was recorded in the conversation between Sir Schiff and Martin Meyer. This conversation is in the first part of this book, and the second part contains Sir. Schiff’s […]
古都京都を舞台に、「美」への果てしない追求と愛憎絡まる人間関係。そして、最後に大きな秘密が明かされ、全てが陽光の元へと曝け出される。今までに沢山読んできた原田さんの、どの小説とも似て非なる御本に、最初は戸惑うも、次第に根底にある「美」への比類ない愛情に、納得。日常を超えた、超お金持ち「お嬢様」菜穂の、これまた超わがままな態度から始まる京都暮らし。その中で、様々な人間関係が交差し、菜穂の人生スタンスが見えてくる。情熱というのは恐ろしくも、美しい。神秘的な京都の街を舞台に、ストーリーが二転三転。最後のどんでん返しを誰が想像しただろう。
再びの登場!私はこの本を「座右の銘」とし、枕元に常に置く事としました。現実に、鞠子の様に生きられる幸運な人は稀であるかもしれないけれど、「必要」ではないと思われる事を、人生の主軸とする生き方。良いじゃないですか!鞠子の「趣味」の定義も素敵。「働かざる者食うべからず」を幼少期から父親に叩き込まれた小太郎と結婚した鞠子。他者には優しく、でも自分の軸はブレない鞠子の生き方に、最初は戸惑う小太郎。しかし、次第に。。。乞うご期待!「他人がどう思うか」に惑わされて、SNSの動向に一喜一憂する貴方。鞠子の生き方に触れてみませんか。
Finally I watched this movie. It has been on my list. As you know I live in the music world too, and unfortunately I have seen “Lydia Tár” occasionally in our circuit. Super talented people often have all kinds of problems which could be hidden until the bubbles reach the boiling point. Then the problem […]
これを読みながら、少し前にパリの墓地で、音楽家の墓碑を巡ったことを思い出した。ええー!こんなに有名な作曲家が・・という風に、結構寂れて朽ち果ててしまったお墓も少なくなかった。園内は、ほとんど誰も歩いていなかったが、演奏旅行中の夫と二人、興奮しながら、一人一人大事にご挨拶をして廻った。結構な数の有名音楽家が葬られているのだ。もしご興味があれば、是非。 閑話休題。そう、この本は日本の文豪お墓まいりでした。私の大好きな、ナオコーラさんが、時には御夫君と、時には母君と、名だたる文豪のお墓まいりをして、その町の美味しい物を食するのが、テーマである。彼女の文豪への思いが、墓参日記と共に、綴られている。日本の風物詩としても、素敵な文章である。私の父方は、青山墓地、母方は浅草の墓地で、小さい頃には、良く両親、もしくは、祖母に連れられて、墓参をしたものである。不思議にその時々の風景が、結構鮮明に心の中に記録されている。お墓を洗ったり、お酒を撒いたり、お墓の周囲を掃き清めたり、とても日本らしい美しい伝統ではないかと思う。西洋には日本の「お盆」のような考え方はないので、亡き人を忍んで集まる、という様なことはない。私も夫の父が亡くなった時に、とても不思議な気持ちがしたものだ。宗教が違うから・・、という理由だけではないと思う。
やっぱり、三浦しをんさんって、天才。現実(というか、現代の話)と中世のロマンス・ストーリーを並行させて進めていく、とても斬新な手法。現代が中世に深く影響することもあれば、その逆もあり。実は、現代の話の中の主人公が、中世の物語を訳しているという、不思議な関係でもある。この訳者、時に自分に起きた恋沙汰を、自分が訳している物語に大いに反映させてしまう。つまり、訳している原本を勝手に変えてしまうのだ。このが、最高でもあるのだけど・・でもでも、作者三浦さんの優しさに溢れる、素敵な御本ですよ。いやいや、面白く読ませて頂きました、本当に。
山崎ナオコーラ、スゴシ!この本を再び読んでしまった。彼女の本を読むと、独善的な価値観に囚われて、どれだけ損をしている人が多い事か・・と、つくづく思う。結婚式の準備に奔走する豆子の話なので、「通常」の形式で行けば、この本は恋愛小説というカテゴリーに入るのだろうけれど・・とんでも無い。経済小説、はたまた人生の指針を突きつけられる厳しい物語とも言える。ただし、痛快なのである。どこまでも、痛快。笑うのである。ははは!彼女の刺激レベルに慣れると、他の本が生ぬるく感じて物足りなさを感じますね。辛さと同じ。私の敬愛する山崎ナオコーラ大師匠の御本、是非手に取って下さい。