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Book Reviews (マイブック評) 源氏物語 巻一(Tale of Genji: valume 1)  瀬戸内寂聴訳 講談社文庫 December 28, 2020

前から一度は現代語訳を読んで見たいと思っていた源氏物語。パンデミックの現在は最高のチャンス!手に取ってみました。「日本人なら誰でもが知っているであろう」という、正にベーシックの域しか理解のなかった私です。紫式部が書いた、超イケメンの光源氏が出てくる平安時代の物語っていう感じ・・そこから脱却すべき、源氏物語現代語訳の出発進行です! まず、瀬戸内寂聴訳というのは、「小学校の高学年で頭の良い子なら読める」という訳者のお墨付き通り、サラッと読めます(私向き)。そして、文体の丁寧さと親近感の度合いが、とても良いですね。又、それぞれの歌に現代語訳がついているので、微妙な恋の駆け引きが、我々の感覚として伝わります。これは、源氏物語において、無くてはならないもの。風流な歌のやり取りと、香の芳しさ。正に平安朝です。そして巻末に、源氏物語系図まであり、こんがらかった頭にとても優しい構成となっています。又、訳者の「源氏のしおり」が、途中で投げ出しそうな輩に、頑張れ!と励ましのエールを送ってくれます。と、ここまでが、現代語訳に関する、感想。 内容は、とにかく凄い!光源氏、こんなに恋の直球投げてたんだと、感嘆、感嘆。現代の草食男子ではとても有り得ない、押しの強さです。そして、魅力の塊なんですね。1000年も昔の貴族の男子の身の振り方、恋の対象になる女性達、脇を固めお世話をする老若男女。登場人物計430人。現在の原稿用紙で4000枚の超大作です。これを、子持ちの寡婦である紫式部が、女性の立場として書き上げたんですよ。もう頭クラクラ、心ワクワクです。箒木の帖に出てくる「雨夜の品定め」が、最高に面白い!女性経験から、女性論へと発展する、恋の処世術です。頭の中将、左馬の頭、藤式部が源氏の宿直所に集まり、夜通し語り明かす、正に平安の男子会ですね。 今回は巻一で、一旦筆を置く、ではなく(!)、読む手を止めますが、徐々に先を読んで行きたいと思っています。光源氏の恋の行く末、見たいですものね!

Book Reviews (マイブック評) 風に舞いあがるビニールシート 森絵都  文春文庫   December 24, 2020

日常の何気無い一コマから、素晴らしいストーリーを紡ぎ出す森絵都さん。誰でも人生でとても大事にしている事があり、何としても譲れない気持ちがあるものだ。それが、捨て犬の保護であったり、仏の修復であったり、高校時代の友人達との約束であったり・・其々に、深い思い入れが、「譲れなく」させているのだ。譲れない気持ちを持つ為には、強さが必要だ。そして、その強い心を持つ為に、時には犠牲が必要になるだろう。周りを傷つけることもあるかもしれない。しかし、「心の強さ」の先には、優しさが待ち、暖かさが漂う。本題になっている「風に舞いあがるビニールシート」は、圧巻だ。それが真実であるだけに、強く、優しい。アウシュビッツで、餓死刑に選ばれた男性の身代わりになった、マキシミリアノ・コルベ神父の話を思い出した。この本は、自分に向かう時間が増えたパンデミックの現在、とても読み応えがあると思う。第135回直木賞受賞作。

English Blog Happy Birthday, Mr. Beethoven 12/16/2020 December 16, 2020

Happy Birthday, Mr. Beethoven, It is your 250th birthday. In honor of your birthday, I would like to send a letter to you. You reign over us, but I know you are a true human being. That is why your music speaks to me so deeply. Your music makes me cry and laugh. You often give […]

Movie Reviews A Movie “Funny Face” 12/13/20 December 14, 2020

It is a wonderful movie to spend a night at home. Audrey Hepburn and Fred Astaire! What can we ask more! Also I have to mention Gershwin’s music. Of course, it is not realistic at all, but that is not a point to see a musical movie. It was made in 1957. The fashion and […]

Book Reviews (マイブック評) ジヴェルニーの食卓 原田マハ 集英社文庫  12/12/20 December 12, 2020

原田さんに、再び素晴らしい芸術の世界に、連れて行ってもらった。モネ、マテイス、ピカソ、ドガ、セザンヌらが、生き生きと文面に出て来る。私もタンギー爺さんのサロンに招かれた様に感じる程だ。狭い空間に、才能の魂がたぎった会話。どんな時間であったのだろうかと、想像するだに楽しい。次にフランスに行く時には、もう是非ジヴェルニーを訪れよう。出来れば、ニースも訪れたいが、こちらは私が通常行くところと離れているので、難しいかも知れない・・早速マテイスの本を購入、身近に置いて楽しんでいる。序でに、草間彌生さんの本も家に連れて帰り、こちらもページをめくり、彼女の素晴らしい世界に遊んでいる。原田さんの本の力で、とんでもない天才達が、私達と同じ人間である事を再確認。彼らの芸術に触れる時に、うんと身近に感じる事が出来る。原田マハさん、素晴らしい仕事をしていらっしゃる。

Movie Reviews A Movie “Return of the Hero” (Le retour du héros) – In French with English Subtitle 12/8/20 December 8, 2020

Do you need an innocent laughter? This movie is quite silly. In France 1809, Captain Neuville (Jean Dujardin) is set to marry Pauline (Noémie Merlant) when war breaks out, leaving her heartbroken. He promised to write to her, but no letter comes to Pauline. So her big sister, Elizabeth (Mélanie Laurent),  begins to write letters to […]

Book Reviews (マイブック評) もういちどベートーヴェン 中山七里  宝島文庫 12/2/20 December 2, 2020

新しい作家の発見!クラシック音楽ものの本だと、どうしても「うるさく」なってしまう私。だけど、この本は、とっても自然で、音楽とミステリーが見事に調和していて、楽しく読めました。そして告白すると、主人公、岬洋介の魅力に取り憑かれた私です。ピアノの天才、司法試験を一番で突破、超ハンサム、家柄良し!もう言う事なしですよね。作者の中山七里さんに興味が湧いて、検索したところ、ご自分では楽器を一切弾かれないそう。どうしてこんなに演奏家、ひいてはクラシック音楽の事に自然に入っていけるのかなあ・・ピアノの周囲で起こる、ちょっとした発想、行動が、違和感なくとても自然体です。きっと音楽家と沢山話しをして、もしかしたら、どんな暮らしをしているのかを、実体験したのかも。まあ、そういう「裏方」は、どうだって良いんですよね。お話の中に出て来るベートーヴェンの曲は、どれも私の演奏レパートリーに入っていて、作品30やワルトシュタインは最近演奏もしたんです。そうなると「意地悪」根性で、アラ探しをしたくなるのだけど(!)、曲の解説も素敵だと思いました。本当ですよ!他の作曲家の名前を冠した本も、是非是非読んでみたいと、今からワクワクしています。こういう形でクラシック音楽に興味を持ってもらえたら、最高ですよね。文中に出て来る曲を知らなければ(知っていても)、是非本を読みながら聴いてみて下さいね。読書の時間が一層深まる事、間違いなし!

English Blog 2020 Prayer on Thanksgiving Day 11/26/20 November 26, 2020

For flowers that bloom about our feet, Father, we thank Thee. For tender grass so fresh, so sweet, Father, we thank Thee. For the song of bird and hum of bee, for all things fair we hear or see, Father in heaven, we thank Thee. For blue of stream and blue of sky, Father, we […]

Book Reviews (マイブック評) 我々の恋愛  いとうせいこう   講談社文庫 11/9/20 November 9, 2020

これは又随分と、厄介な、というか、奇妙な「ラブストーリー」。じゃあ、複雑かというと、そうではなく、恋愛そのものは、いたってシンプルで、純情系。私が一番好きだったのは、遠野さん(女性)が自信のなさから、初デートの時に「自分を見ないで、目を瞑って」と徹君に言ったので、徹君の愛の深さ故、徹君の目に靄がかかってしまったところ。そして、その靄の中で、彼らは恋愛を育み、信頼関係を深めていく。二人の世界がより充実し、誰にも邪魔されない強固なものになっていく過程。そこはとても素敵だなあ、と思った。脇を固める人物達が、良いにも悪いにも生き生きしているのが、物語りに深みを与えているので、良し!但し、話の構成自体が沢山の面を持っているので(きっと作者はこうは思っていないのだろうけれど)、「恋愛」という中心のテーマに集中出来ない感が否めない。そして、大長編なので、読み進めるのにかなりの体力(!)がいる。今、徹君と遠野さん、どうしてんだろうか。