Japanese Blog (日本語のブログ)
原田さんに、再び素晴らしい芸術の世界に、連れて行ってもらった。モネ、マテイス、ピカソ、ドガ、セザンヌらが、生き生きと文面に出て来る。私もタンギー爺さんのサロンに招かれた様に感じる程だ。狭い空間に、才能の魂がたぎった会話。どんな時間であったのだろうかと、想像するだに楽しい。次にフランスに行く時には、もう是非ジヴェルニーを訪れよう。出来れば、ニースも訪れたいが、こちらは私が通常行くところと離れているので、難しいかも知れない・・早速マテイスの本を購入、身近に置いて楽しんでいる。序でに、草間彌生さんの本も家に連れて帰り、こちらもページをめくり、彼女の素晴らしい世界に遊んでいる。原田さんの本の力で、とんでもない天才達が、私達と同じ人間である事を再確認。彼らの芸術に触れる時に、うんと身近に感じる事が出来る。原田マハさん、素晴らしい仕事をしていらっしゃる。
新しい作家の発見!クラシック音楽ものの本だと、どうしても「うるさく」なってしまう私。だけど、この本は、とっても自然で、音楽とミステリーが見事に調和していて、楽しく読めました。そして告白すると、主人公、岬洋介の魅力に取り憑かれた私です。ピアノの天才、司法試験を一番で突破、超ハンサム、家柄良し!もう言う事なしですよね。作者の中山七里さんに興味が湧いて、検索したところ、ご自分では楽器を一切弾かれないそう。どうしてこんなに演奏家、ひいてはクラシック音楽の事に自然に入っていけるのかなあ・・ピアノの周囲で起こる、ちょっとした発想、行動が、違和感なくとても自然体です。きっと音楽家と沢山話しをして、もしかしたら、どんな暮らしをしているのかを、実体験したのかも。まあ、そういう「裏方」は、どうだって良いんですよね。お話の中に出て来るベートーヴェンの曲は、どれも私の演奏レパートリーに入っていて、作品30やワルトシュタインは最近演奏もしたんです。そうなると「意地悪」根性で、アラ探しをしたくなるのだけど(!)、曲の解説も素敵だと思いました。本当ですよ!他の作曲家の名前を冠した本も、是非是非読んでみたいと、今からワクワクしています。こういう形でクラシック音楽に興味を持ってもらえたら、最高ですよね。文中に出て来る曲を知らなければ(知っていても)、是非本を読みながら聴いてみて下さいね。読書の時間が一層深まる事、間違いなし!
これは又随分と、厄介な、というか、奇妙な「ラブストーリー」。じゃあ、複雑かというと、そうではなく、恋愛そのものは、いたってシンプルで、純情系。私が一番好きだったのは、遠野さん(女性)が自信のなさから、初デートの時に「自分を見ないで、目を瞑って」と徹君に言ったので、徹君の愛の深さ故、徹君の目に靄がかかってしまったところ。そして、その靄の中で、彼らは恋愛を育み、信頼関係を深めていく。二人の世界がより充実し、誰にも邪魔されない強固なものになっていく過程。そこはとても素敵だなあ、と思った。脇を固める人物達が、良いにも悪いにも生き生きしているのが、物語りに深みを与えているので、良し!但し、話の構成自体が沢山の面を持っているので(きっと作者はこうは思っていないのだろうけれど)、「恋愛」という中心のテーマに集中出来ない感が否めない。そして、大長編なので、読み進めるのにかなりの体力(!)がいる。今、徹君と遠野さん、どうしてんだろうか。
料理好きの私は、食を愛する話だと、安心する。食事は大事だ。体だけでなく、心も作る。高級料亭「吟遊」での偽装事件と、最果ての地、「尽果」にある小さな食堂「まぐだら屋」。この対照的な場所が、人間を狂わせもし、救う事も出来る。誰も、過去に傷のない人なんていないと思う。その傷を何も言わずに、暖かく治すのが、「まぐだら屋」のマリア、そして、「尽果」の人々。絶壁に建つこの小さな食堂で、死を望んで来た人々が、救われる。そこには、温かな食事と、大きな心が・・・。登場人物のネーミングも最高。キリスト教に因んだ名前を頂いたそれぞれの登場人物が、その為すべきことを密かにする。誰も大声で自分を主張しない。涙を誘う、感動の一冊だ。
この本の主人公、豆子は「正直」。大関正代関のブログにも書いたが、正代関も正直だ。豆子も結構ウジウジするが、いざとなると、正直まっしぐら、自身の結婚式だって、ぶっ壊してしまう。正代関も長年、ネガテイブでウジウジだ、と言われて来たが、やる時はやる。まだ、正代関の優勝に舞い上がっている私は、豆子の事を書こうと思っても、つい正代に気持ちが行ってしまう。ハハ・・豆子に話を戻そう。豆子は兎に角、自分で稼いで、自分の足で歩きたい。だから、お金にもメッチャ細かい。これは、仕方ないと思う。でも、そんな豆子に白馬に乗ったプリンスがやって来て(こんな事は書いていない)、いざ結婚という運びに。この結婚準備を細かいお金のやり取りを基準に、小説は進む。こんな、恋愛小説は見た事ない。豆子、結婚おめでとう。お幸せな家庭を。
正代関、幕内優勝、そして大関昇進おめでとうございます。郷里熊本だけでなく、日本人すべての希望であり、星です。飾らず正直な人柄に、いつも自然体でゆったり構えているところ。そして、今場所は、更にパワーアップした立ち合いに、並外れた身体能力。今場所15日間、我々ファンを魅了し続けました。すも友のT子女史と、毎日ドキドキしながら、応援していました。今までは、正代関が負けると「正代、人が良いからなあ・・・」などと、言っていたのですが、今場所は顔つきも違うし、土俵に上がってくるときのオーラがすごかった。「やってくれる」という思いで、15日間土俵を見つめていました。 相撲の伝統として、故郷に錦を飾り、故郷を背負って戦うというのが、あります。力士にとって、出身地は切っても切れないもの。取り組みの紹介でも、必ず出身地を言いますね。朝乃山関が優勝、大関昇進した時もそうでしたが、今回の正代関も地震や水害で疲弊している故郷熊本に元気を与えました。ご両親を含め、地元の方々がどんなに喜んだ事でしょう。私もくまモンと正代の字が入ったマスク、欲しいです!私は外国人力士、日本人力士と分けて考えるのは好きではありませんが、故郷を元気付けるという観点で、やはり意味があるんだなあと、思わずには要られませんでした。だからこそ、今場所は、我々ファンの心に、火がついたんだと思います。 正代関の名前、正代直也。「正直」です。名は体をなすとは、良く言ったもの。千秋楽の一番で、翔猿関を破った後に、花道の奥で付け人と涙を分けち合ったのも良かった・・力士として大きな地位についても、どうぞ今のままの飾らない人柄でいて下さいね。 今場所は、怪我で苦しむ経験力士と、元気の良い若手力士の明暗が顕著に出た場所でした。怪我をしない相撲の取り方、体の鍛え方を、是非是非推奨して頂きたいです。そして、内臓疾患にも、きちんと向き合って欲しいものです。北の富士さんのコメントにもありましたが、確実に相撲人生が長くなっている故。北の富士さんの頃は、32−3歳で引退が普通だったとの事でした。長い相撲人生、体に負担がかかるのは当たり前ですが、基礎練習などで、それに耐える体を作って頂きたいです。 私事ですが、来場所からロサンゼルス相撲愛好会も再開予定です。中日に集まって、相撲談義に花を咲かせるのを楽しみにしています。最後になりましたが、全力士の皆さん、親方衆、NHKのアナウンサーの方々、15日間本当にありがとうございました。
長年大相撲を熱烈に応援して来た私だが、今場所のような変速的な15日間もハッキリ言って珍しい。両横綱が初日から休場、場所が始まってからも怪我人続出の為、途中休場者が増え、相撲放送の時間が余りに余って、藤井アナの回では正岡子規の相撲俳句まで登場。また、朝乃山は2日続けて不戦勝を手に。これも、かなり珍しい事である。逆に言えば、解説の親方衆の丁寧な説明が聞けて面白いし、上記のような俳句に触れる機会も頂ける。どちらにしても、相撲好きの私に取って、場所中の15日間はもう楽しくてしょうがないのである。アメリカはまだ夏時間のため、ロサンゼルスの相撲中継は夜中の12時から2時まで。真夜中にテレビの前に座り、悦にいる日々である。今場所もすも友のT子女史と、遠隔観戦を一緒に楽しんでいる。お互いスマホ片手に、感想、ヤジ、ゴシップ、応援など、矢継ぎ早にテキストを応酬。これが大変楽しいのである。 怪我人の事に触れたが、これは稽古不足が要因に違いない。出稽古が出来ない状況下、同部屋の力士間でしかぶつかり稽古が出来ず、自ずと限界がある。又、筋肉を落とした力士も目立つように思う。その良い例が炎鵬で、小兵の上に体が萎んで、巨漢の力士と当たる時はハッキリ言って危険である。新入幕の翔猿は、正に新時代の力士。「力士は肌を見せるから・・」という見解の元、脱毛もしているらしい。彼の相撲っぷりは最高で、インタビューも臆するところなく、堂々としている。もう一人の新入幕の豊昇龍は、常に大横綱の叔父さんの名前が出て来て、少し気の毒な気もする。まあ、顔があれだけ似ていれば仕方ない気もするが・・。何と言っても注目は、我らの正代。彼の人柄の良さと自然体が、ファンを惹きつけて止まない。そこに持って来て今場所は、相撲の切れが抜群に良く、思い切りが違うと思う。熟年ファンとしては、息子を応援するような気持ちである。この調子に乗って、千秋楽まで一気に、と切に願っている。貴景勝は、又少し太ったような気がするのは、私だけであろうか。いつも息が上がっており、内臓系が心配だ。昨日は、取り組後に肩の痙攣で少し立てず、体のどこかが悲鳴を上げているようにも見えた。素晴らしい力士だけに、無理をせず、長い目で見て相撲を取って行って欲しい。朝乃山は3連敗の後、安定し大関相撲が取れている。千秋楽まで3敗を死守して欲しいものだ。照ノ富士は、怪我からの復帰を経て、人間が大きくなり、インタビューでの受け答えも大変素晴らしい。こちらも、3敗を死守して欲しい。元気な阿武咲が、これからの4日間大暴れする事は間違いないし、若隆景も頑張って2敗キープ。 変則的で戦国時代を呈する今場所だが、役者に不足はない。2敗力士が4人、3敗力士が3人。これからの4日間で、どれだけ自分を信じ、怪我をせず、集中していけるかであろう。ベテランの琴奨菊と松鳳山が元気がないのが、とても心配だ。長年土俵を湧かせて来た両力士。とにかく、無事に千秋楽まで相撲を取って頂きたい。最後になるが、個人的な喜びとしては、長年応援して来た千代の国が十両復帰ひと場所目で、9勝1敗で単独首位に立ち、宇良が幕下で全勝を重ねている事だ。両者ともに努力の賜物である。 9月場所も残り4日。こちらも全力で深夜の応援である。
山崎ナオコーラさん、いつも「何をやってくれるか」と、次作を読むのが本当に楽しみ。今回も、非常にユニークなシチュエーションです。「本屋さん」の話しらしいとなれば、本好きの我々は飛びつく。そこには、「アロワナ」という大魚が主の、町の本屋さんがある。「アロワナ書店」は、家族経営・・。と段々に、本の中に入っていく。昼田とハッコウは、血の繋がらない兄弟。大の仲良しだけど、全く正反対の性格である。昼田は、自分が真っ当な人間で、ハッコウが外れ者だと思って生きて来た。因みに、昼田、大卒、ハッコウ、高校中退。昼田、都心部の優良企業で働き、ハッコウ、「アロワナ書店」勤務。昼田、いつも綺麗な格好、ハッコウ、だらしない格好。 家族の関係が変化し、昼田は会社を辞め、「アロワナ書店」で働き始める。そこから、昼田の「人として生きる事」を考える、旅が始まる。それは、打ち砕かれることもあるが、それだけじゃあない。自分と対話しながら、昼田は学んで行く。「アロワナ書店」は幸福寺という駅にあるのだけど、これは吉祥寺が下地になってるんだろうなあ、と想像。町のサイズもそんな感じだし、ね。昨日、ロサンゼルスにある紀伊国屋に行ったけど、やっぱり店員さん達、エプロン着けてた。日本独特の習慣だけど、とても良いなあ、と思う。節度感と親近感と。そして、いつもとても丁寧に接してくれるので、こちらも優しい気持ちになれる。「アロワナ書店」も、とても良い本屋さんですよ。
東野さんのご本のファンになって、もう久しい。様々な登場人物がいたと思う。今回は、そう、大きな大きな「クスノキ」が、主人公である。この楠、普通の樹木ではない。大層不思議な力を持っている。新月と満月の夜に、「クスノキ」は我々の祈念に耳を傾けてくれる。そして、一つの家族が、長い年月受け継いで来た「クスノキ」の番人という仕事。これも、この本の大事なキイポイントだ。「番人」は、ただの守り人ではない。祈念する人々の、心の番人だ。そして、祈念に来る人は、意を決し自分に素直になって、「クスノキ」の祠に入る、そして祈念する。その祈念には、特別な蝋燭が必要で、この本を読んでいると、その芳香が身辺に漂うようだ。とてもスーパー・ステイシャスなのだが、その浮世離れ感が、逆にとても良い。テンポ感も良い。人間の方の登場人物達が、祈念という概念の中で、己の道を見つけて行く。感動の長編である。