Japanese Blog (日本語のブログ)

ねじまき鳥クロニクル 第1部泥棒かささぎ編 第2部予言する鳥編 第3部鳥刺し男編 村上春樹 新潮社 June 25, 2021

ご存知の様に、「ねじまき鳥クロニクル」は、3巻からなる大長編。それも、それぞれの一冊が大変分厚い。作者の代表作の一冊で、様々なところで論評が語られて来た。面白いのが、3冊を積み上げて見ると、歴然と巻を追う毎に、ページ数が増え、厚みを増している事。ページ数の多さが、説明的表現に比例している様に思うのは、私だけだろうか。この本ほど、共感できるところと、全く共感できないところが、混沌と混じり合っている本も珍しいと思う。メタファーが織りなす物語を、「僕」が語って行く訳だけど、その語りの根本が、軸をずらしながら、進んで行き、時空を超えたファンタジーとも言える。又、国際問題、社会問題を組み入れ、時に、「私、どこに居たんだっけ?」と、読者を翻弄することも。そして、我々読者は、「僕」と同化しながら、井戸の奥底に一緒に沈んで行く。面白く読むのか、そうでないのか、それは貴方次第。村上ワールドに興味、ありますか?

村上さんのところ 村上春樹  新潮社 May 29, 2021

村上春樹の精神の強さが、如実に出るすご本!17日間に寄せられた3万7465通のメールを全て読み切り、その中から3716通を選び、その全てに返信メールを書いたんですよ!それだけでも、人類未踏の域。村上さん曰く、「まるで降っても降っても降り止まぬ大雪を、一人でシャベルを持って雪かきしているみたいでした」。そうでしょうね。そして、その返信メール、とても気が利いているんです。年齢・職業様々、老若男女、海外からも、僧侶もいるし、小さな子供もいるという具合。そのどれにも、キチンと返答していらっしゃる!私は、フジモトマサルさんのイラストも、とても良いと思いましたよ。主張し過ぎず、上手に合いの手を入れて・・これを読むと、シンプルですが、人って皆んな違うんだよなあ!、と改めて感じさせられます。本当に皆さん色々な事で悩み、想像を絶する様なご質問を抱えていらっしゃる。それを知るだけでも、プラス。そして、村上さんの素晴らしい返答を読んで、更に満足。一昔前の「家庭の医学百科」の様に、一家に一冊買い求め、手元に置いて、日がなサラサラとページをめくるのはどうでしょうか。

リーチ先生 原田マハ 集英社 May 18, 2021

2013年から2015年にかけて新聞連載された、大長編。イギリス人で陶芸家のバーナード・リーチが、どれだけ日本を愛し、そして日本の芸術家達に影響を与えたかという、史実に基づいたフィクションである。原田マハさんのお得意とする、架空の人物<沖亀乃介・高市親子>を、歴史上の大芸術家<バーナード・リーチ>と出会わせ、その軌跡を追う筋書きだ。明治後期から昭和にかけての、日本陶芸シーンを、事細かに描写している。そして、大物芸術家達、柳宗悦、富本憲吉、河井寛次郎、濱田庄司、高村光太郎らが、リーチを慕い、影響を受け、その輪の中で切磋琢磨して行った。バーナード・リーチの類い稀な行動力に翻弄されながらも、彼を師と仰ぎ、助手として働き続けた亀乃介。そしてその子供高市も、陶芸家になり、リーチに出会う。100年前の人達の方が、国境というものを恐れず、柔軟にそして貪欲に、知らない世界のものを吸収して行った様な気がしてならない。インターネットで狭くなった世界が、逆に頭を固くし、心の柔軟性を奪っているのではないだろうか。そして、「炎上」を恐れるあまり、自分の心の声を、自由に発言する自由も失った気がしてならない。素晴らしい、歴史的フィクション。ネット社会から少し距離を置き、是非読んで見て下さい。

騎士団長殺し 第一部・第二部 村上春樹 Killing Commendatore by Haruki Murakami May 7, 2021

大長編、2部作。腰を降ろして臨まないと、読み切れないかもしれないですよ。第一部「顕れるイデア編」に続き、第二部の「遷ろうメタフォー編」。時に、ハリーポッター風の冒険談にもなり、超恋愛小説にもなり、哲学書にもなる。でも、語り方は、一貫して村上春樹調。読者の私は、大破に呑まれながらも、行き先を失わずに最後までたどり着いたのです。要約するのはとても難しい小説でしょうね。逆に言えば、パンデミックの中、現実というものの儚さを実感し、この小説に共感を得た部分がある事も、事実。主人公の「私」が、小田原近郊の隠れ屋風の家で過ごした数ヶ月の、夢とも、現実ともつかない日々の回想録。そして、輪廻の如く、再び現実に戻り、小田原以前の暮らしに戻るまでの日々。最後に辿り着くと、「ええー、こんな終わりで良いの??」と自問してしまいがちだが、人生というものは、そういうものなのだろう。メタフォーもイデアも遠くに置き去りにして・・ Large feature, it is a two-part work. If you don’t have a strong will, you may not be able to read it through. I read this book in an original language, Japanese. Following the first part, “Appearing Ideas,” the second part, “Transitional Metaphor.” Sometimes it’s a Harry Potter-style adventure story, a super-romance novel, and […]

ロサンゼルスの日系雑誌に、私のインタビュー記事が出ました! April 29, 2021

ロサンゼルスの日系雑誌「LALALA Weekly」に、私のインタビュー記事が出ましたので、お知らせします!      

3rd@1st Piano Livestreaming Concert “Leipzig Connection: Schumann and Bach” on Sat. April 17, at 4pm PT 2021 April 16, 2021

  I am looking forward to performing my concert “Leipzig Connection: Schumann and Bach”. The program includes Schumann: Arabeske Op. 18 and Abegg Variations Op. 1, and Bach – Busoni: Chaconne. During the concert, I will share composers’ anecdotes and my personal affection to those composers. The live-streaming concert will be on Saturday April 17, […]

バースデイ・ガール 村上春樹 イラストレーション カット・メンシック Birthday Girl by Haruki Murakami April 7, 2021

誕生日にまつわる、不思議なお話し。「イラスト」というのは、良くも悪くも、話の内容にまで深く影響するから、面白い。本を読む前に、読者側にそれ相応のイメージが刻まれるからだ。表紙のピンク、赤、ゴールドの彩り。本の中も、同じ様な色使いで、イラストがかなり大きな顔をして、自己主張している。このイラストが、全く違うアーチストのもので、色も全く違えば、読者は180度違う反応を示すだろう。だから、逆に言えばこの本を、イラストなしで読んで見たいと思う。イラストのイメージから逃れた、一年先くらいに。

愉楽にて  林真理子 日本経済新聞出版社 March 12, 2021

当代きっての売れっ子作家、林真理子さんのご本が面白くない筈がない。この小説は、日本経済新聞に連載されたもので、ミドルエイジのお金に全く困らない男性達の、良くも悪くも女性遍歴である。沢山の引き出しをお持ちの林さんが、日本経済新聞への連載に、敢えてこの題材を選んだ事に、私は本の内容よりも興味がある。日本経済新聞を、大きな社長室で秘書が入れたコーヒーを飲みながら読む社長さんもいるだろうし、運転手付きの車での通勤途中に読む方も勿論いるだろう。世の中には、起業し大成功している方もいるし、IT関連の若い旗手達も多い。しかし、混雑した通勤電車の中で、又は、子供達が騒ぐ朝の食卓で、新聞を開く方もいる筈。そういった幅広い仕事人達が読むだろう新聞への連載に、お金に糸目をつけない暮らしをしている男性達の小説。ある意味、現実味の全くない世界だ。逆に、現実味のなさに、自分達の世界を忘れ、遊ぶという事なのだろうか。羨みとちょっとした僻みも込めて。海外と日本を、ファーストクラスでフラッと行き来する暮らし。ちょっとした弾みで、京都の芸妓さんと関係を持ち、旦那になる話。レストランを簡単に貸し切り、豪遊する話。どれもこれも、「普通」の人達が経験する事ではない。この連載小説への読者の反響というのも、大変興味があるところだ。

そして、いま一人になった   吉行和子  集英社 February 26, 2021

中々楽しい本!才能溢れる吉行一家の事が、長い年月のスパンで書かれている。ベタベタした家族ではない様だけど、心の通った素敵な家族の様が、訥々と描かれている。夭折した作家の父、エイスケと107歳まで生きた美容家の母、あぐり。作家の兄、淳之介、女優のご本人、詩人の妹、理恵。錚々たるメンバー。でも、和子さんの描く文章に、気負いは一切ない。普通の日常がそこには書かれている。お母様を亡くされ、現在一人になった85歳の和子さん。最後にこう書いていらっしゃる。「人をうらやむこともない。自分ができることだけをしていればいい。与えられたことだけを一生懸命していればいい。生きていられるのは素晴らしいことだから、明るくいよう。」

漁港の肉子ちゃん 西加奈子  幻冬舎文庫 February 13, 2021

肉子ちゃん凄い!キクりん可愛い!そして、西加奈子さん、明るくて真実の物語り、ありがとう。宮城県の石巻市を(震災前に)編集者達と訪れ、そこで漁港に立つ「焼肉屋」を発見した事から、この物語りが生まれたと、あとがきにある。誰でも「焼肉屋」を見つける事はあるけれど、それをこんな素敵なお話しにしてしまうのは、西さんしかいない!本の発売後に、女川市に住む方から西さんに連絡があり、この漁港に立っていた(震災で被害に合い今はない)「焼肉屋」には、本当に肉子ちゃんのような、太陽のように明るい女将が居たと知る。何という事だろう。 肉子ちゃんはかなりの太っちょで、お人好し、小さなことには余り気が回らない。だけど、とんでもなく堂々としている。一瞬一瞬を真実に生きている。直ぐに泣く。声が大きい。ド派手なファッション。そして、その子供、キクりんは、しっかり者で、美人ちゃんだ。この親子を取り巻く、サッサン、マキさん、ゼンジさん、役者揃い。皆んな、必死に生きている。この本を読んで、元気になろう!道を大股で歩こう。大声で楽しく話そう!肉子ちゃん、最高!