Japanese Blog (日本語のブログ)

サウスバウンド 奥田英郎 角川書店  4/12/15 April 12, 2015

何という冒険物語だろうか。夢がある。パワーがある。涙がある。愛がある。勇気がある。我々にとって、生きる糧になる源だ。誰もが憧れる、「生」がある。この本には、何の説明もいらない。そにかく、読んでください。

マスカレードホテル 東野圭吾  集英社 4/5/15 April 5, 2015

東野さんのすごい才能で、読者を強く引っ張っていく、かなりの長編だ。そして、ホテル業界の奥へ、ずんずん入っていく。そこで、起きる数々の人間ドラマ。事件だけでなく、ホテルの日常をドラマチックに書いている。面白いし、やめられなくなるのだが、結末というか、事件の動機が、私にはちょっと弱い気がした。450ページの本を読み進むと、それなりに愛着が湧き、最後への期待感が膨らむもので、長旅を共にした本の最後が、「こんな動機で、大それた事件を起こすだろうか・・・」という感じ。でも、東野さんの文章力のすごさに、私は今回も魅了され続けた。

噂の女  奥田英郎  新潮社  4/5/15 April 5, 2015

この噂の女は神出鬼没。いろいろな人の暮らしの、あちこちに出てくる。そして、とても強欲で、図々しい。又、頭も相当良い。色仕掛けで、次々に男を手玉に取る。ようするに、ハチャメチャなのだ。その噂の女に、私は筆者の強い愛情を感じてしまう。何か不思議な小説だ。

愛という字  向田邦子  ワニブックス  4/5/15 April 5, 2015

日本人の心の襞を書かせたら、この人に勝る人はいないのでは・・・東芝日曜劇場のために書かれたコレクションから、この本には3作入っている。昭和50年代前半に書かれたものだ。でも、全然古くない。そして、ユーモアたっぷり。昭和の家の感じ、家族の在り方、服装、食事まで、目の前に飛び出してきそうだ。本当に惜しい人を、早くに亡くしてしまったものだ。今もし生きていらっしゃったら、80代。どんな本を書いているだろうか。

二重生活 小池真理子 角川書店 3/23/15 March 23, 2015

まさにタイトル通りの、お話。不倫も出てくるし、若さの悩みも出てくるし、尽きるところ、人間のまあ本質で、「裏表」があるって事かなあ。そして、心の中は秘密で、恋人とも付き合い、親子とも生活を共にする。「文学的・哲学的尾行」が、本の大テーマ。これって、ちょっとカッコ良いよねえ・・・だけど、のぞき見趣味とどう違うのかなあ。言葉の綾??お話自体はとても素敵なのだけど、二重生活という本のタイトルと、文学的・哲学的尾行との間に、深い溝がある気がしてしょうがない。

理由 宮部みゆき 朝日新聞社 3/4/15 March 4, 2015

新聞連載を、加筆して刊行された、超大作。いろいろな時事問題が織り込まれ、思わず惹きこまれてしまう。もちろん、宮部さんの類まれな才能、洞察力、深い勉強に支えられている事は、言うまでもない。裁判所の競売に絡まる問題がメインになっているのだが、現在に生きる一筋縄ではいかない家族性、男女関係など、ミステリーを基本にしながら、深く切り込んでいる。私自身も、昨年3回目の家を購入したので、この辺のことは多少勉強し(もちろん日米の違いはあるが)、問題点など大いに共感した。子供の切なる声から、高齢の方々の老後の過ごし方まで、言ってみれば、すべての人に関わる問題が、一冊にまとまっていると言っても、過言ではないと思う。必読の長編一冊である。

正妻 慶喜と美賀子 上・下 林真理子 講談社 2/19/15 February 19, 2015

新聞連載小説に加筆修正された、長編小説。はっきり言って、とてもおもしろかった。江戸時代最後の将軍になった徳川慶喜に嫁いだ公家の姫、美賀子。徳川幕府が崩壊し、明治維新が始まった時代の今まであまり触れられることのなかった歴史に焦点を当てた小説。女性の視点から書かれ、世俗から離れた公家の姫が、「普通」の人になっていく姿を描く。もちろん、どんなことも、焦点の持って行き方によって、話の展開は大きく変わる訳で(離婚協議が良い例)、これが、男目線で、慶喜から見た美賀子を描いたら、また、それも面白いかも。明治維新の歴史について、新しいことを学んだ気がする。

東京アクアリウム  小池真理子  中央公論新社 2/15/15 February 15, 2015

これは、とても美しい短編集。東京の片隅で繰り広げられる愛の物語。それぞれにどこにでもいそうな主人公が出てきて、どこにでもいそうな誰かに関わる。心の襞に触れる、魂と魂の語らい、そして、別れ。読んでいると、時に自然に涙がこぼれてしまう。特別な気持ちに沈んでいく、小池真理子の恋愛ジャーニ―集。

散歩の楽しみ  2/2/15 February 2, 2015

寒い冬の真っ只中、日本。信じられないかもしれませんが、ロサンゼルスは今日も快晴。青空が広がり、鳥たちが一日中美しい声で、数えきれない歌を披露しています。窓は全開、気持ち良い風が、家の中を通り過ぎています。最近の私の楽しみの一つに散歩があるんですね!新しく引っ越してきた地域は、ロサンゼルスの中でも比較的古くからある場所で、それぞれの家がとても個性的。歩いていると、家の持ち主の主張が感じられ、すごく楽しい!スペイン風あり、1940年代のコンテンポラリー調あり、山小屋あり。それぞれの家が、歩いている私に語り掛けてきます。また、このあたりは、小さな丘が沢山あり、それを上手く利用して、テラスを造ったり、眺めを楽しめるようにも暮らしていて、それを見るのも楽しい。都心に近いので、クール(!)な人種が多いこともあるかも。カリフォルニアの自生の植物(サボテン系、何せ水が極端に少ないので。海は近いけれど)でお庭を造っている家も多く、それも私のもっかの楽しみ。我々の家も、前庭はカリフォルニアの自生植物庭園になっているのですが、裏庭の大きなスロープに手のかからない、それでいて綺麗で楽しい野生の庭にしたく、研究中なんです。仕事もあるので、毎日は出掛けられないけれど、時間を見つけて、近所を探索中。急坂が沢山あるので、運動にもなり、一石二鳥。今日も、午後行って来よう!

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年  村上春樹  文芸春秋社  1/28/15 January 28, 2015

これは、大層美しい小説だ。今回本当に思ったけれど、村上春樹の小説って、とても視覚的なんですね。何だか、映画を見ているような感じ。題名からしても、もちろんビジュアル的なんだけど、それにしても、カーテンがふんわか揺れる様子や、プールの中の水のゆらめきまで、目の前で起こってしまう。多崎つくるの日常、彼を取り巻くカラフルな人間模様、悲しみ、喜び、過去、現在、未来、不思議な空間を行ったり来たり。どっぷり村上ワールドに浸ってしまった。