Japanese Blog (日本語のブログ)
この本も、直接ではないものの、DVが話の本筋になっている。アラフォーの不思議な年下の男性との恋物語。何が、真実なのか分からない。嘘のつきっこなのか。それとも、日本人特有の照れが災いしての、湾曲表現なのか。年下の男性に、ひょんな事から惹かれていく来実子。こんな事、現実には起こりえないけれど、こんな出会いがあったら、人生のスパイスになるのかなあ。
美しい話だと思う。最近読む本に、頻繁にDVの話が出てくるけれど、これは、今まで余り語られなかった家庭内暴力が、陽の目を見たという事なのかなあ。DVの連鎖についても語られているし。夫から逃げて来た妻と、警察から罪を着せられ逃げている男の、静かな、それでいて、とても強い恋愛小説だ。ちょっと湿った、でも、美しい世界は、小池真理子の骨頂だと思う。恋愛するカップルを取り巻く人々も、とても良い具合に設置されている。新聞小説だったので、きっと読者はワクワクしながら、毎日の夕刊を楽しみにしていたのでは。
下北沢・・・とてもノスタルジック。中学、高校と小田急線で下北沢を必ず通っていたので、他人事とは思えない響きがある。駅前から、ごちゃごちゃしているんだけど、とっても活気があって、楽しくなる街。飲み屋さんも沢山行ったし(これは少し大きくなってから・・一応!)、友人たちとも大騒ぎをした街だ。若くて、夜じゅう騒いでいても、翌日なんとか持ち直して、活動出来た、まさに私の「若さ」の時代。それが、下北沢とつながるので、この本は、ほおっておけなかったですね。時代は変わり、お店も街の風景も違っていると思うけど、この本を読む限り、本質は変わっていないみたい。嬉しいですね。お父さんが、愛人と心中するというのが、お話しの中心で、下北沢の優しさ、心地良さ、懐の深さが、それを大きく取り込んでいく。装丁もとても素敵!是非、手に取ってみて下さい。
これも、「ばなな」絶頂の本。こんなに、日常のさりげなさを、美しく愛おしく出来るんなんて・・素敵な本です。現実には、きっと有り得ないような優しい関係を、きちんと書いて、きちんと読者に提示して。最高!小柄な本が、「ばなな」本にぴったり。登場人物たちが、めちゃ優しいけど、きちんと自己主張して、自分の芯はずれない。まさに、「カッコ良い」。心から惚れてしまいました。
いっとき、「吉本ばなな」離れをしていたので、久しぶりのばなな本!まず、コミック調の装丁が、とっても”とんちんかん”で、カッコ良いけど、美しい文章と全く合ってない、と私はひどく怒っているんです。でも、それが良いのよね、キット。話の展開といい、キラキラした文体といい、完結でさっぱりした気性といい、すべてに私好み。それなのに、このふざけた(ふざけているとしか、言いようがない)、幼稚な挿絵はなんなのだ。読んでいて、ちっとも空想をかきたてないし、悲しくなる。でも、文章は最高。ばななワールドに、すっかり取り込まれてしまった。
田辺聖子さんの大阪弁、最高~!全くの江戸っ子の私(江戸っ子の定義は、3代以上東京都内に住んでいる事らしい。と、これは、アメリカ大使館にお勤めの、アメリカ人に聞いたんだけどね。)には、この威勢の良い浪速言葉、それはそれは、とても素敵なのだ。東京の、早口で、しらっけたしゃべりとは、本当に違う。いつもながら、田辺ワールドに、しばし惹きこまれた私でした。大阪弁のニュアンスで、短編が進んでいくのも、とっても面白い。いろいろな男女が、魅力いっぱい、紙面いっぱいに、飛び回る。大阪の美味しそうな食事が沢山出てくる。もう、最高!元気、って、本当に良いことです。
今でいう(私の日本語は、約20年前に日本を出てから成長を止めているので、古臭いのです。今でも、良くJRの事を国鉄と言うくらい!)、アラフォーのカッコ良さかなあ。自然でいて、とっても背筋がのびてて、周りに流されない生き方。藤堂さんって、そういうのを書くと、とても上手いと思う。何でもない日曜日のドライブが、人生を反映する、重大な時になっていく。本当に何でもない、どこにでもいるような男女が、ある日曜日を通過して、キラキラして素敵なカップルなんだぞ、っていう事になる。つまり、誰にでも、キラキラ**の可能性があるってこと。読んでみたいと思わない、この本??
読者(つまり、私)を、ぐいぐい惹きこみ、あっという間に読んでしまった。優しい、ほっとする、小説。そして正義まっしぐら、人情厚く、羨ましい限りの友人関係。そしてカッコ良い女を描ききっている。北海道を美しく讃えるのも忘れていない。
すっごい本!!本当に。山田詠美の才能の大きさって、半端じゃないよね。この本は1989年に出版された、いわばひと昔前の本。だけど、とても新鮮で、表現の古さが全くない。つまり、バブル崩壊の前の世界だよ。心奪われた文章が沢山あるのだけど、例えば 「まつ毛の上に雨が降っているように、瞳だけで泣いている。」「シーツのしわが、そのまま五線紙になって、それを柔く蹴とばす足先が、やさしい調べを奏でるような、そんな時間など、決して持てる筈がない。」「潤んだ大きな瞳でただひたすら、彼を見ていた。私は、その瞳に膜を張る湿り気が、その内、涙を形成って落ちて来やしないかと、人ごとながら心配になってしまった程だ。」「本当の大人の赤い唇って、絵の具箱の中のあの色みたいにあどけないんだ。」「人間が生きて行くことに限って言えば、塩と胡椒は、甘い味つけをするためにある。」素敵でしょ。本当、とってつけた表現が全くない。まだまだ沢山あるので、とにかく本を読んで下さい。それと、漢字と平仮名のバランスがとっても良い。ああ、すっかりハートを奪われた私です。
この題名、ちょっと素敵だと思いませんか。特に、音楽家の私には、ビビッと来ましたね。だけど、東野さんや、宮部さんの推理小説に慣れ親しんでいる私。夏樹さんには、大変申し訳ないけれど、一つ物足りなさを、感じ得ませんでした。本当にごめんなさい。ストーリーの根底にある、怨念や複雑化した養子問題などが、良い伏線を張りそうなのだけど、何故か、余りストーリーに入り込んでいけないんですね。文章も良いのだけどね・・読者をぐいっと、引っ張ってくれない、なんて贅沢な悩みを語っています。きっと、私自身の問題なんでしょう。