Japanese Blog (日本語のブログ)
こんな風に思える「故郷」「家」があるって、とても素敵だと思う。綿矢さんご自身も京都の出身らしいので、京都の魅力を「住人」としての目線で語ってくれている。私は、とても幸運な事に、海外在住でありながら、祇園祭をアメリカ人の夫と経験している。計画を立てていた訳ではないのに、偶然日本旅行中に祇園祭に遭遇したのだ。それは素晴らしかった。私は、父・母両方の家とも何代も前から東京で、「京都」という街には、ひたすら憧れがある。あのはんなりとした語り口、薄味の煮物。すべてが、Sophisticatedだ。私は早口で、落ち着きがない! 個性豊かな3人姉妹が織りなす、日常の物語。読んでいて、京都に友達が出来たような気持ちになった。今度京都に行く機会があれば、是非この3姉妹の軌跡をたどりたい。
坂本龍一さん追悼 (1952−2023) 坂本龍一が、どうやって世界のRyuichi Sakamoto になって行ったのかを、克明な記録と共に、ご本人が語った自伝。幼少期から芸大に入るまでのところは、私自身も(時期は違えど)日本で同じ様な道を歩んで音大に入ったので、とても興味深かった。私は、高校時代とても不良で(こんな言葉は、もう死語かもしれないけれど)、坂本さんが遊んでいた周辺のことも何となく想像出来て、読んでいてとても楽しかった。私自身ロック喫茶に入り浸り、そこで知り合った仲間達と夜な夜な遊んでいたのだ。それでも、家に帰るとピアノの練習はキチンとしていたし、それをしないと気が済まなかった自分がいた。日本の音大卒業後に馴染みになった飲み屋さんが、千歳烏山にあって、そこには以前坂本さんが出入りしていたと、聞いていた。残念ながら、私は鉢合わせた事はなかったけれど。その意味がこの本を読んで理解!坂本さんのご実家が、その近くだったのだ。 我々の心を虜にしたYMOの数々のヒット曲。そして、映画音楽、コマーシャルソング、俳優やモデルとしての活動など、もうその功績は大きすぎて、短い文章の中で語る事は不可能だ。是非是非この本を読んで下さい。私はこの本を読みながら、しばし「Sakamoto World」に入り込み、素敵な時間を過ごさせてもらったから。心よりご冥福をお祈りします。
以前から耳にしていた(海外でも)8050現象について、真っ向勝負した小説。そんなまさか自分の家族に・・世間から隠せるならトコトン隠してしまう・・ひきこもりの我が子を拒絶しながら、それでも愛してしまう父・・ イジメから一つ目の階段を踏み外すことになり、それを修復しなかったばかりに、雪だるま式に引きこもりの世界へ封印されてしまった長男。優秀で将来は医院を継ぐはずだった彼。家族はもうありとあらゆる手段を講じて助けようとするが、どれもダメ。油に水を注ぐばかりの毎日が続く。再生する為に、最初の「階段、踏み外し」まで遡り、それをとことん追求し、そこに家族で向き合う事によって、再生の光が灯った。 緻密な準備段階を経て書かれたであろう、超力編である。ホームレス(アメリカでは Unhoused Peopleという呼称を使っている)問題も原点は同じであろうか。一歩を踏み外し、それを続けているうちに、修復のつかない所まで行ってしまう。そして、そこまで到達すると、復帰してくることは困難を極める。林さんに、是非 Unhoused Peopleについても、書いて頂きたいと思う(もし既に執筆済みであったなら、ご容赦下さい)。 「愛」を語った素晴らしい長編小説。涙なしには読めないと思う。
古都京都を舞台に、「美」への果てしない追求と愛憎絡まる人間関係。そして、最後に大きな秘密が明かされ、全てが陽光の元へと曝け出される。今までに沢山読んできた原田さんの、どの小説とも似て非なる御本に、最初は戸惑うも、次第に根底にある「美」への比類ない愛情に、納得。日常を超えた、超お金持ち「お嬢様」菜穂の、これまた超わがままな態度から始まる京都暮らし。その中で、様々な人間関係が交差し、菜穂の人生スタンスが見えてくる。情熱というのは恐ろしくも、美しい。神秘的な京都の街を舞台に、ストーリーが二転三転。最後のどんでん返しを誰が想像しただろう。
再びの登場!私はこの本を「座右の銘」とし、枕元に常に置く事としました。現実に、鞠子の様に生きられる幸運な人は稀であるかもしれないけれど、「必要」ではないと思われる事を、人生の主軸とする生き方。良いじゃないですか!鞠子の「趣味」の定義も素敵。「働かざる者食うべからず」を幼少期から父親に叩き込まれた小太郎と結婚した鞠子。他者には優しく、でも自分の軸はブレない鞠子の生き方に、最初は戸惑う小太郎。しかし、次第に。。。乞うご期待!「他人がどう思うか」に惑わされて、SNSの動向に一喜一憂する貴方。鞠子の生き方に触れてみませんか。
これを読みながら、少し前にパリの墓地で、音楽家の墓碑を巡ったことを思い出した。ええー!こんなに有名な作曲家が・・という風に、結構寂れて朽ち果ててしまったお墓も少なくなかった。園内は、ほとんど誰も歩いていなかったが、演奏旅行中の夫と二人、興奮しながら、一人一人大事にご挨拶をして廻った。結構な数の有名音楽家が葬られているのだ。もしご興味があれば、是非。 閑話休題。そう、この本は日本の文豪お墓まいりでした。私の大好きな、ナオコーラさんが、時には御夫君と、時には母君と、名だたる文豪のお墓まいりをして、その町の美味しい物を食するのが、テーマである。彼女の文豪への思いが、墓参日記と共に、綴られている。日本の風物詩としても、素敵な文章である。私の父方は、青山墓地、母方は浅草の墓地で、小さい頃には、良く両親、もしくは、祖母に連れられて、墓参をしたものである。不思議にその時々の風景が、結構鮮明に心の中に記録されている。お墓を洗ったり、お酒を撒いたり、お墓の周囲を掃き清めたり、とても日本らしい美しい伝統ではないかと思う。西洋には日本の「お盆」のような考え方はないので、亡き人を忍んで集まる、という様なことはない。私も夫の父が亡くなった時に、とても不思議な気持ちがしたものだ。宗教が違うから・・、という理由だけではないと思う。
やっぱり、三浦しをんさんって、天才。現実(というか、現代の話)と中世のロマンス・ストーリーを並行させて進めていく、とても斬新な手法。現代が中世に深く影響することもあれば、その逆もあり。実は、現代の話の中の主人公が、中世の物語を訳しているという、不思議な関係でもある。この訳者、時に自分に起きた恋沙汰を、自分が訳している物語に大いに反映させてしまう。つまり、訳している原本を勝手に変えてしまうのだ。このが、最高でもあるのだけど・・でもでも、作者三浦さんの優しさに溢れる、素敵な御本ですよ。いやいや、面白く読ませて頂きました、本当に。
山崎ナオコーラ、スゴシ!この本を再び読んでしまった。彼女の本を読むと、独善的な価値観に囚われて、どれだけ損をしている人が多い事か・・と、つくづく思う。結婚式の準備に奔走する豆子の話なので、「通常」の形式で行けば、この本は恋愛小説というカテゴリーに入るのだろうけれど・・とんでも無い。経済小説、はたまた人生の指針を突きつけられる厳しい物語とも言える。ただし、痛快なのである。どこまでも、痛快。笑うのである。ははは!彼女の刺激レベルに慣れると、他の本が生ぬるく感じて物足りなさを感じますね。辛さと同じ。私の敬愛する山崎ナオコーラ大師匠の御本、是非手に取って下さい。
照ノ富士関、復帰の場所、優勝おめでとうございます!どれだけのプレッシャーの中で、横綱としての責任を背負い、場所に臨んだことでしょうか。照ノ富士関のここまでの軌跡を考えると、前人未到の快挙です。初めてのお子さんも昨年誕生していたとか・・本当におめでとうございます。又、大関取りの場所の霧馬山関、集中力を切らさずに最後まで、凄かったです。霧馬山関が、取り組み前に土俵の塩を体に撒くのに気が付いていましたが、何か神聖で私は好きです。そして、師匠の陸奥親方と、どこか顔が似て来ましたね。 師匠と言えば、陸奥親方の霧馬山への愛情、本当に深いです。錣山親方の阿炎への愛情も、いつもビシビシ感じています! 閑話休題。いやいや、もう凄い場所でした。毎日、ワクワクしてテレビ中継に向かいました。そして、感動を呼ぶ取り組みの数々・・例えば、11日目の若元春と北青鵬の一番。うっちゃりで若元春が勝ったのですが、私は感動で涙しました。照ノ富士関、朝乃山戦で白星を勝ち取った時、ひっそり泣いていましたね。気高さを誇る、照ノ富士関でも、感情の波には勝てなかった、というところでしょうか。 本場所の話題の一つと言えば、北青鵬の肩越しの上手。あんなの今までに見た事ありませんね。びっくりです!怪我でもしたのでしょうか、後半に入って北青鵬、元気を欠いていました。しかし白鵬が親方を引き継いだ、宮城野部屋。落合、北青鵬と大物が育っています。もちろん、豪栄道(武隈親方)の部屋の豪ノ山、忘れていませんよ。十両優勝おめでとうございます。 貴景勝関、角番脱出、おめでとうございます。もう、必死でしたね。これで、来場所は、東西大関が並びます。他の3関取も、もう大関が近い!元大関の正代と御嶽海も、力を出しました。そして、元大関の朝乃山の躍進。もう役者揃いです。これからの大相撲、目が離せませんよ。 NHKが場所と並行して放送する「どすこい研」。今回は「立ち合い」でしたが、二所ノ関親方のコメントに、立ち合い、少し遅れて立つと力が発揮出来る、というのがあり、ヨシヨシと相撲放送でそこに注目して観戦すると、何となく分かる気がしました。この番組は、我々相撲ファンの強い味方です。毎回楽しく拝見しています。 相撲観戦は、名古屋場所まで、休憩。そして、7月に終わりから2週間日本に帰国するので、巡業に行ければ、と願っています。
短編の中に、村上さんのお父様への想いが詰まっている一冊。所謂「昭和」を思い出させるイラストが、興を添えている。猫を一緒に海岸に捨てに行った思い出から、お父様の生涯を紐解いていく。長い年月親子関係は余り良好では無かったと理解しているが、お父様の亡くなる少し前に和解したと、記されている。文庫の帯にもあるように、ああこういうご家族から村上春樹は産まれたんだなあ、と「血」の不思議、「縁」の不思議、そして必然を感じた。