Japanese Blog (日本語のブログ)
この本は、日本からLAに戻ってくる飛行機で読んだ。大好きな山崎ナオコーラさんのご本。青山ブックセンターで購入したものだ。ブック評とは少し話が逸れるが、このブックセンターなかなか良かったです。はい。山崎さんの独特のテンポ感が、とても好きだ。この本も、まさにナオコーラの不思議なテンポと、最高に傑作な登場人物で、いやいやとんでもなく面白い。 新聞のテレビ・ラジオ欄をつくる会社の「夕日テレビ班」での、若手社員6人の人間模様。ぽんぽんとやり合う若者達。とても良いです。地味な仕事の中に、社員達は自分を投影しながら、毎日が過ぎていく。言霊なんて大層なものではないかもしれないけれど、言葉の選択に皆四苦八苦。何気なく見ているテレビ欄に、こういう背景があったんですね。大変面白く読みました!
日本への帰国の飛行機で読んだ本。ひきこもり作家の元に、生まれてから一回も会ったことのなかった息子が、突然現れた!貴方ならどうする?誤解、思い込み、様々な葛藤が交錯した結果、息子は母の元で育てられ、作家はひたすら養育費を送り続けた。そして25歳の息子が、突然父である作家の家を訪ね、あれよあれよという間に、一緒の暮らしが始まった。孤独に慣れた作家は、好青年に育った息子に戸惑いながら、段々とその共同生活が快くなっていった。ユーモアあり、暖かな気持ちに溢れ、売れっ子作家の瀬尾さん、素敵な物語を編み出した。
凪良ゆう、本当に凄い!古い下宿屋さんの、心温まる友情物語か・・と思いきや、ストーリーの深さ、複雑さが、半端じゃあないです。「愛」が根底にある。人間の課題であり、夢であり、ゴールである、愛。それは、万華鏡の如く、様々に煌めき、消え、見失い、発見していく。登場人物が素晴らしく、我々がそうであるように、彼らも問題だらけでの人生を歩んでいる。問題は解決されない事が多いけれど、それをシェアしていくことで、肩の荷を少しだけ下ろし、前に進んでいく。この作家の他の本を読むことが、今から待ち遠しい。お薦めの一冊です。
朝日新聞上で連載されていた時から、大変な反響を呼んでいたエッセイとの事。こうして、本として発行されて、海外在の私も手に取ることが出来た。美しい文章と深い愛情が、紙面から溢れ出てくる。そして、軽井沢の自然がそれに寄り添い、我々読者に語りかけてくる。プロの作家は、一番近い人の死を文章にし、その過程で悲しみを浄化させるのかもしれない。作家同士のカップル、それは色々あっただろうけれど、こうして死を見送り、寂しさが押し寄せる。読んで本当に良かった本だ。
大変失礼ながら、この本を読むまではこの作者の事はほとんど知らなかったんです。正直に申し上げますが、「本屋大賞受賞作」という帯の文句に惹かれて買いました。でも買って良かった。とても心にズシンと来るテーマで、でも文章のキレが良くて、どんどんとページをめくってしまう。そういう、小説です。話の展開、テンポもとても良い! 更紗ちゃんは、幼少期をとても素敵なご両親と、「正直」に生きていた。でもその家庭がその姿を保てなくなり、そこから、新たな更紗の人生が始まる。そして「文」との出会い。最悪の出会い。最高の出会い。運命の出会い。何とでも取れる、その瞬間。人間は誰一人同じではなく、そして地球上にその「個性」が数限りなく存在する。その中で、奇跡的に出会った二人。この二人の出会いをどの様に取るか、それはこちら側の問題でもある。人の幸せって何?素朴な疑問に、少しだけ道筋をくれる小説かもしれない。是非、読んでみて下さい。
こんな風に思える「故郷」「家」があるって、とても素敵だと思う。綿矢さんご自身も京都の出身らしいので、京都の魅力を「住人」としての目線で語ってくれている。私は、とても幸運な事に、海外在住でありながら、祇園祭をアメリカ人の夫と経験している。計画を立てていた訳ではないのに、偶然日本旅行中に祇園祭に遭遇したのだ。それは素晴らしかった。私は、父・母両方の家とも何代も前から東京で、「京都」という街には、ひたすら憧れがある。あのはんなりとした語り口、薄味の煮物。すべてが、Sophisticatedだ。私は早口で、落ち着きがない! 個性豊かな3人姉妹が織りなす、日常の物語。読んでいて、京都に友達が出来たような気持ちになった。今度京都に行く機会があれば、是非この3姉妹の軌跡をたどりたい。
坂本龍一さん追悼 (1952−2023) 坂本龍一が、どうやって世界のRyuichi Sakamoto になって行ったのかを、克明な記録と共に、ご本人が語った自伝。幼少期から芸大に入るまでのところは、私自身も(時期は違えど)日本で同じ様な道を歩んで音大に入ったので、とても興味深かった。私は、高校時代とても不良で(こんな言葉は、もう死語かもしれないけれど)、坂本さんが遊んでいた周辺のことも何となく想像出来て、読んでいてとても楽しかった。私自身ロック喫茶に入り浸り、そこで知り合った仲間達と夜な夜な遊んでいたのだ。それでも、家に帰るとピアノの練習はキチンとしていたし、それをしないと気が済まなかった自分がいた。日本の音大卒業後に馴染みになった飲み屋さんが、千歳烏山にあって、そこには以前坂本さんが出入りしていたと、聞いていた。残念ながら、私は鉢合わせた事はなかったけれど。その意味がこの本を読んで理解!坂本さんのご実家が、その近くだったのだ。 我々の心を虜にしたYMOの数々のヒット曲。そして、映画音楽、コマーシャルソング、俳優やモデルとしての活動など、もうその功績は大きすぎて、短い文章の中で語る事は不可能だ。是非是非この本を読んで下さい。私はこの本を読みながら、しばし「Sakamoto World」に入り込み、素敵な時間を過ごさせてもらったから。心よりご冥福をお祈りします。
以前から耳にしていた(海外でも)8050現象について、真っ向勝負した小説。そんなまさか自分の家族に・・世間から隠せるならトコトン隠してしまう・・ひきこもりの我が子を拒絶しながら、それでも愛してしまう父・・ イジメから一つ目の階段を踏み外すことになり、それを修復しなかったばかりに、雪だるま式に引きこもりの世界へ封印されてしまった長男。優秀で将来は医院を継ぐはずだった彼。家族はもうありとあらゆる手段を講じて助けようとするが、どれもダメ。油に水を注ぐばかりの毎日が続く。再生する為に、最初の「階段、踏み外し」まで遡り、それをとことん追求し、そこに家族で向き合う事によって、再生の光が灯った。 緻密な準備段階を経て書かれたであろう、超力編である。ホームレス(アメリカでは Unhoused Peopleという呼称を使っている)問題も原点は同じであろうか。一歩を踏み外し、それを続けているうちに、修復のつかない所まで行ってしまう。そして、そこまで到達すると、復帰してくることは困難を極める。林さんに、是非 Unhoused Peopleについても、書いて頂きたいと思う(もし既に執筆済みであったなら、ご容赦下さい)。 「愛」を語った素晴らしい長編小説。涙なしには読めないと思う。
古都京都を舞台に、「美」への果てしない追求と愛憎絡まる人間関係。そして、最後に大きな秘密が明かされ、全てが陽光の元へと曝け出される。今までに沢山読んできた原田さんの、どの小説とも似て非なる御本に、最初は戸惑うも、次第に根底にある「美」への比類ない愛情に、納得。日常を超えた、超お金持ち「お嬢様」菜穂の、これまた超わがままな態度から始まる京都暮らし。その中で、様々な人間関係が交差し、菜穂の人生スタンスが見えてくる。情熱というのは恐ろしくも、美しい。神秘的な京都の街を舞台に、ストーリーが二転三転。最後のどんでん返しを誰が想像しただろう。
再びの登場!私はこの本を「座右の銘」とし、枕元に常に置く事としました。現実に、鞠子の様に生きられる幸運な人は稀であるかもしれないけれど、「必要」ではないと思われる事を、人生の主軸とする生き方。良いじゃないですか!鞠子の「趣味」の定義も素敵。「働かざる者食うべからず」を幼少期から父親に叩き込まれた小太郎と結婚した鞠子。他者には優しく、でも自分の軸はブレない鞠子の生き方に、最初は戸惑う小太郎。しかし、次第に。。。乞うご期待!「他人がどう思うか」に惑わされて、SNSの動向に一喜一憂する貴方。鞠子の生き方に触れてみませんか。