Japanese Blog (日本語のブログ)
本作品は、第140回芥川賞を受賞。大きな文学賞というのは、何だかんだと言って、やっぱり「本を手に取る」、大きなキッカケになると思う。若手の出発地点にもなるし、中堅の作家の、長年の仕事への集大成にもなる。「ポトスライムの舟」は、作者ご自身の経験によるらしい。美しさに焦点を当てる手法ではないけれど、文章が輝いていると思う。そして「自分だけの世界」「自分だけの喜び」から、他人を受け入れ、愛して行く過程(男女間の愛ではなく)が、自然に書かれていて、とても良い。他人に何か出来る喜び、これは「人」である事の原点、そして「幸せ」になる入り口だと思う。だって、他人の喜びを嬉しい!!と感じられれば、人生が数倍も楽しくなるから。毎日の暮らしに張りが持てないのなら、是非この本を読んで見たら良い。日々の暮らしに、これだけ素敵な事が隠れていたかを実感出来るはず!
いつもの言い訳ですが、海外在住の為、この作者の事、知りませんでした。。ああ、感動!1ページ目の最初の数行読んで、虜になりました。淡々としながらも、無駄のない文章運び。町の美容室を中心に、飛び切り素敵な普通の人達が、紙面を闊歩する。暴言も吐く。恋ごときもする。ご飯も食べれば、深酒もする。極々日常の時間を、ボソボソと表現。良いなあ!高円寺というと(この本の中心地点)、私にも思い出の深い場所。町の商店街仲間っていうコンセプトが、アメリカにいると、とてつもなく、懐かしく思えるもの。「故郷は、遠きにありて、想うもの」、とは良く言ったものですね!
小池さんは、お姿も美しく、そして文体も美しい。素敵なエッセイ集。日常を切り取り、綺麗なモザイクのように、文章にしていく。緩やかな時間と、魅力的な光の加減。この本を、さり気なくコーヒーテーブルの上に置いて見たいなあ。ちょこっとソファーに腰掛けて、本を開くと、そこは現実から離れた、桃源郷。急がずに、ページをゆっくりめくって、読みたい本である。
こういう本を読むと、ああ!大阪に住んで見たいなあ、と思ってしまう。私の家は、両親とも東京出身で、大阪に親戚もいない!生粋の江戸っ子と言えば、カッコ良いけれど、そういう気っ風の良さがある訳でもない。気取らずに、サバサバと会話をして見たいものである。こっこ(主人公の女子)は、とっても可愛い。純粋だけど、納得できないことには、ガンとして戦う。そして、大家族だから、孤独に憧れ、病気に憧れ、素敵に憧れる。健気な冒険物語である。正直、私はこういう本、大好きである!
何とも、不思議なお話!そして、とっても素敵な挿絵の数々。天は二物を与えず、なんて言葉があるけれど、西さんには当て嵌まりませんね。ご本人、又とびきりの美人と来ているし!子供の目を通して、世の中の酸いも甘いも嚙み分ける現実。宇宙人が出て来たり(LIFEの宇宙人総理を思い出しますね!)、浮気相手が出て来たり、はたまた、不登校児が出て来たり、登場人物は千差万別。その中で、モヤモヤ、葛藤を経験。初恋も知る。自分を自分でどうして良いか分からなくなる毎日。私も子供の頃そうでしたね・・・葛藤と苦難の連続でした。まあ、それでも、大人になり、こうして中年になっています!慧(主人公)と一緒に温泉街の日々を過ごして見ませんか。不思議だけど、ほのぼのとする事、間違いなし!
私、正直言ってSF物は苦手なので、この本、最初読み始めた時は、どうしようかなあ。。。と迷っちゃって、すぐに読み始めなかった一冊です。「劫尽童女」は、超SFとも言えるけど、人間の悲しい一面と愛を書き切った、人間そのものとも言える小説です。人間の強さって何だ、愛するって何だ、ということを、超人間の童女を通して描いています。表紙の絵が、何を表しているのか、どういう観点でこの小説の表紙になったのか、ちょと訊ねてみたいですが・・
普通、短編集と言うと、クッキーの詰め合わせみたいな感じで、それとなくまとまっているものですよね。それが、なな何と、この短編集、キムチあり、ポタージュあり、はたまた、寿司に天ぷらと、何でもありの短編集なのです。しかし、そこが恩田さんの凄いところで、全編読むと、やっぱり同じ作者なんだなあ、と納得してしまう。デイヌ・リパッテイを題材にしたものから、賢い犬・猫のホラー物語まで、作者の懐の広さ、果てしない興味の奥行が出ています。一編一編が短いので、ちょこっと読めますよ。
恩田陸3作目!これも、期待通り。前回読んだ本は、デイープな音楽家の本だったけれど、今回は更にデイープな俳優のお話し。これも多分(私は俳優業を営んだ事がないので、想像だけど)、俳優という業をはるかに超えた人物を登場させる事で、ドキュメンタリー調でなく、ファンタジーとなり、成功しているのだと思う。主人公の飛鳥は、すべてにおいて超人間。その周りに、天体ではないけれど、いろいろな星が周り(キラキラの星もあれば、暗めの星座もある)、物語が生き生きと進む。”演じる”事に憑かれた人々の、”演じる事”を究極’に求める、終わりのない旅。そこにちょっと参加させてもらって、”演劇”の世界を見せてもらった。
恩田陸さんの「夜のピクニック」がとっても良かったので、それじゃあ、直木賞を取ったこの本も、と軽く手に取った本。ところがどっこい、何とピアノコンクールを題材にした、超大作。音楽にしたら、ワーグナーのオペラである。まあ。言ってみれば私の専門分野。冒頭で、コンクールの審査員の一人が、演奏者に対して非常な嫌悪を催す一節があるが、私も自分の分野であることもあり、「何だーー。知ったかぶりして!」というような、反応をしてしまうかと、思ったのだけど、この作者、大物である。コンクールのドキュメンタリーではなく、完璧で高貴な小説なのである。緻密な取材、インタービューをもとに(浜松国際ピアノコンクールを基盤にしているのは、間違いないと思う)、完璧なフィクションに仕上がっている。音楽のビジネスの現実的な部分を根本に、とても素敵なファンタジー。音楽コンクールを使って、人間の深淵に臨み、愛を語らい、葛藤を描く。「演奏家」である事の真実を、小説家がこれほどまでに描けるのか。。。びっくりするぐらい、「演奏家」の真実にも触れている。しかし一番大事な点は、相反するようだが、究極的に非現実であるところだ。。私の知る限り、登場人物達は、余りに素敵すぎ、大天才すぎる。でも、それで良いのだ。だって、これは、小説だから。それも、とっても素晴らしい一冊だからだ。
中々、良い小説ですよ!高校生活最後の経験として(一年生も二年生も参加しているが)、夜を徹して長距離を歩き、そこでいろいろ話し、経験し、学び、次へのステップへの道筋を見つけるという、体育系でもあり、文科系でもある、総合小説。私自身も最近、女子中学時代の友人4人と、一泊旅行に行き、中年で似たような経験をした。旅を共にするのは、時間の共有だから、話しが沢山出来る。そして、学生時代(それも中学時代)の友人となると、カッコつける必要なし!今更化けても、意味がないのだ。すっぽんぽんで居られるのは(温泉入浴も入れ)、大変気持がよい。バカ話しの合間に、バスで隣に座った時など、相談事をしたりする。景色も良いし、食事も最高(私達の場合は!本の中の高校生達は、苦行である)!情報過多、インターネットに振り回される毎日を忘れ、こういう「時間」を共有するのは、人生の真の喜びだと思う。私はこの中学時代の友人達に、いろいろな場面で、そっと助けられて来たし、これからも、私の人生の大切な一部分になる事は、間違いない。「夜のピクニック」はそういう意味で、老いも若きも、楽しめて勇気をもらえる小説だと思う。是非お勧め!恩田さんの本、他も読んでみます。