Book Reviews (マイブック評)
ファンタジー小説。そして、とてもお洒落。江戸の話と現代を上手く絡めて、写楽という実在した人物に深く迫る。大人の世界に子供達が元気に飛び回って、痛快!
「優しさごっこ」の続編。あかりが成長して、とうさんとの二人の生活も、変化していく。でも、いつも沢山の、それこそ優しさ一杯の人達に囲まれている。京都のちょっと田舎(私が勝手に作り上げているイメージ)で、日本の本式の食べ物を食べて、素敵な事に日々出会い、あかりととうさんの毎日。今江さんの素晴らしい筆で、本当に二人が生きて私に語りかけているみたいに、思える。これって、児童文学なの?そんな枠をどかっと超えた、位置にある。
最近再び今江さんの本と手に取っている。これは、もしかするとホームシック??「優しさごっこ」を読んでいると、とてつもなく日本が懐かしくなるのって、不思議である。言葉で言うと難しくなるけれど、心配りとか、丁寧さとか、心の襞に触れるような優しさかなあ。私も若かったころ、児童文学者に憧れていて、自分でもなりたっかったという歴史があるので、こうして再びあのころ読んだ本を読むと、そのころの気持ちに戻るのかもしれない。素晴らしい文章力と素敵な想像力で、読者をぐいぐい惹き込む今江文学。まだ読んだ事がなければ、是非一度読んでください。
これは、林芙美子の生涯を小説化した、桐野さんの力作。芙美子の強さと才能を、恋愛と絡めて、激しく迫っていく。読んでいる間にすべてが本当に起こったかのような錯覚に陥る。最高のロマンスなのか、すべてが創作なのか。芙美子の生涯をあらゆる角度から調べ尽くした上での、フィクション。桐野さんへの尊敬が、一段と大きくなった作品です。
3冊めになる、東野さんのご本!興奮が続きますね、この本は、ちょっと趣向が違って、現実からちょっと遠い感じ。殺人の動機が、植物にある訳です。人間って、悲しい動物ですね。切羽詰って人を殺すのだけど、その動機が小さな人間としての見栄だったり、誇りだったりする。自分らしく生きるのって、難しい、本当に。
これは、加賀恭一郎シリーズの一冊です。複雑に絡んだストーリーがおもしろくて、しょうがない。いくつもある秘密の扉をひとつひとつ開けていくみたい。これで終わりかな、と思うと又、すぐ目の前に次の扉がある。東野さん、本当にめちゃ頭が良いですね。日本の放射能問題にも鋭く触れ、「今っぽさ」も忘れていない(もちろん今だけの問題ではないのだけど)。話の構築性に、説得感があって、ばっちり、面白ろすぎます。
おもしろい!の一言ですね。下町の景色が、目の前に見えるよう。一章ごとに、背景を変え、登場人物を変え、あたかもお芝居のよう。いつも魅力的な、東野さんの小説。そして必ず人間の本質に関わる部分が出てくる。犯人には確固たる動機があるものの、それが中々表面に出てこない。一つ一つに状況証拠を積み重ね、真犯人に迫る。次が知りたくて、もう寝られなくなっちゃう。
皆さんも読書好きだと思いますが、私はとにかくお気に入りの本を読んでいれば、幸せ。「ハピネス」は、この旅の最後に読んだ本。最後を飾るに(!)相応しい、大作です。飛行機の中で読んでいて、涙が止まらなかった所がある。もうとんでもないくらい日本的な、主役の有紗。その彼女が脱皮していくお話です。途中はこちらがイライラするくらい、おどおどして自信のない彼女が、次第に太っ腹になり、自分が持てるようになる。とても説得力があり、私達を勇気づけますね。そして愛に満ち満ちた本。だって誰だって「愛」を探して生きているんじゃないのかしら。長編だけど、どーんと引きずり込まれて、一気に物語のなかに、自分も生きてしまう。私もタワマンの住民であるがごとく。是非読んでみて下さい。
現在の時間と過去の時間を、行きつ戻りつしながら、何が真実なのかを、探るお話し。時には涙することも。誰だって自分勝手。自分が可愛い。そして、人生ってとても不公平。悲しい運命を受け入れながら生きるキヨ。その両親。キヨの死は余りにも残酷だけど、何だか自然にも思えてしまう。霊媒師という非現実の媒体を通して語られる、真実の一冊。感動の一言です。
東野さんはどんな文体でも、どんな設定でも書けるらしい。この2冊は、少年達とそのセンセの話。とってもあったかくて、ユーモアたっぷりのお話しが、素敵に元気の良い大阪弁で書かれている。いろいろな難事件に遭遇(何故か巻き込まれる!)、それを優しく解決するしのぶセンセ。なんか、ほっくりくる推理短編小説だ。東野さんは7年の執筆期間を経て、このしのぶセンセシリーズにさよならする、と宣言。ですから、私達がしのぶセンセにお逢い出来るのは、この2冊だけです。どうぞお見逃しなく!