Book Reviews (マイブック評)

東京アクアリウム  小池真理子  中央公論新社 2/15/15 February 15, 2015

これは、とても美しい短編集。東京の片隅で繰り広げられる愛の物語。それぞれにどこにでもいそうな主人公が出てきて、どこにでもいそうな誰かに関わる。心の襞に触れる、魂と魂の語らい、そして、別れ。読んでいると、時に自然に涙がこぼれてしまう。特別な気持ちに沈んでいく、小池真理子の恋愛ジャーニ―集。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年  村上春樹  文芸春秋社  1/28/15 January 28, 2015

これは、大層美しい小説だ。今回本当に思ったけれど、村上春樹の小説って、とても視覚的なんですね。何だか、映画を見ているような感じ。題名からしても、もちろんビジュアル的なんだけど、それにしても、カーテンがふんわか揺れる様子や、プールの中の水のゆらめきまで、目の前で起こってしまう。多崎つくるの日常、彼を取り巻くカラフルな人間模様、悲しみ、喜び、過去、現在、未来、不思議な空間を行ったり来たり。どっぷり村上ワールドに浸ってしまった。

PRIDE ・池袋ウエストゲートパーク 石田衣良 1/17/15 January 18, 2015

真島誠のカッコ良いシリーズも、どんどん続いている。何といっても設定が抜群だ。「池袋」という東京の中でも、ちょっと曲者の町を選び、そこに活躍(暗躍?)する少年団達の話。今回の章も、言ってみれば誠ちゃんをいかにカッコ良く見せるか、に集中している言っても過言ではない。ストーリー展開が、スピード感にあふれ、読者にとってはもうたまらない。

聖女救済 東野圭吾 文芸春秋 1/17/15 January 18, 2015

この本も2度目。どういう風にストーリーが展開するのか分かってても、面白い。題名の「聖女」という言葉に、作者の思いが出ているのでは?そして、何故「救済」なのか・・不思議な題名だ。現実にありえない状況を、人間観察から解いていく。とことん人間を見つめる。売れっ子の東野さん。凄い本を次から次に出していく。読者も、うかうかしていられない。

楽園 上・下 宮部みゆき 文芸春秋 1/17/15 January 18, 2015

この本を読むのは、2度目。それでも、思いっきりのめりこんでしまった。サイコメトラーという現実的でないテーマだけど、内容はとんでもなく人間的。そしてとても素敵な話だ。「愛」に溢れているとも言える。宮部さんの素晴らしいストーリー・テラーとしての才能が、存分に味わえる本。長編だが、一気に読んでしまう。  

灰色のピーターパン・池袋ゲートパークVI 石田衣良  文芸春秋 1/4/15 January 4, 2015

久しぶりの池袋ゲートパーク・シリーズ。まこっちゃん、いつも本当にカッコ良い。池袋の街を、背の高い、ちょっと痩せ型の真島誠が歩いているのが、目に見えるよう。平成のスーパーマン。次々に降りかかる(というか、呼び込む)トラブルを、いつもスリル満点にスマートに解決。そして老若男女にもてる、まこっちゃん。良いですね。石田さんの、「池袋」という土地の選び方が良い。現実的な設定なので、問題とその解決が夢物語になっても、何だかすぐお隣の話のように感じてしまう。文章のスピード感も絶妙。もしこの池袋シリーズ、一冊も読んでいなかったら、是非一度手に取って見て下さい。

悪意 東野圭吾  講談社  1/4/15 January 4, 2015

流石、東野圭吾さん。どんな新作も読者を決して失望させない。裏の裏の裏、本の中の本。考えてみれば、とてつもなく複雑な内容なのに、そんな事は微塵も読者に感じさせない。思いっきりストーリーに惹き込まれて下さい。読み始めたら、本当に止まらない。嫉妬心というのは、人間の持つ悲しい心だ。そして、人をとんでもない方向に導いてしまう。それは、「悪意」となって。

ノルウエーの森  村上春樹   講談社  12/21/14 December 21, 2014

何度目かなあ・・・この本読むの。何だか、訳もなく急に読みたくなってしまった。これは、多分にホームシックかも。数年前に映画にもなって、ロサンゼルスで試写会を見に。ちょっと本とは違う印象でがっかり来たけれど、映像は確かに美しかった。村上さんの本って、アメリカ文学の翻訳調だ、っていう人もいるし、それも当たっている感じもするけど、でもやっぱり独自の村上ワールドで、感受性が敏感で、素敵。村上さんと世代は違うとはいえ、ロンドンブーツはいて、ベルボトムのジーパン(ジーンズじゃなくて)に長髪のお兄ちゃん達が闊歩していた新宿を熟知していた私は、自然に彼の本の世界に溶け込める。ネットもなく、携帯もなく、人と人とのコミュニケーションがもっとゆっくりと、廻っていた時代。今から何十年先に、この2014年をどうやって懐かしく思うんだろうか。もっとテクノロジーが発展して、今我々が持っているものが、ノスタルジーになるのだろうか。不思議・・全編に流れる、とてつもない優しさ、若さゆえのどうしようもなさ、孤独、死、そして生、愛。2日間、「ノルウエーの森」に浸ってしまった。

写楽暗殺  今江祥智  理論社 12/14/14 December 14, 2014

ファンタジー小説。そして、とてもお洒落。江戸の話と現代を上手く絡めて、写楽という実在した人物に深く迫る。大人の世界に子供達が元気に飛び回って、痛快!

冬の光 今江祥智   理論社  11/30/14 December 1, 2014

「優しさごっこ」の続編。あかりが成長して、とうさんとの二人の生活も、変化していく。でも、いつも沢山の、それこそ優しさ一杯の人達に囲まれている。京都のちょっと田舎(私が勝手に作り上げているイメージ)で、日本の本式の食べ物を食べて、素敵な事に日々出会い、あかりととうさんの毎日。今江さんの素晴らしい筆で、本当に二人が生きて私に語りかけているみたいに、思える。これって、児童文学なの?そんな枠をどかっと超えた、位置にある。