Book Reviews (マイブック評)
いっとき、「吉本ばなな」離れをしていたので、久しぶりのばなな本!まず、コミック調の装丁が、とっても”とんちんかん”で、カッコ良いけど、美しい文章と全く合ってない、と私はひどく怒っているんです。でも、それが良いのよね、キット。話の展開といい、キラキラした文体といい、完結でさっぱりした気性といい、すべてに私好み。それなのに、このふざけた(ふざけているとしか、言いようがない)、幼稚な挿絵はなんなのだ。読んでいて、ちっとも空想をかきたてないし、悲しくなる。でも、文章は最高。ばななワールドに、すっかり取り込まれてしまった。
田辺聖子さんの大阪弁、最高~!全くの江戸っ子の私(江戸っ子の定義は、3代以上東京都内に住んでいる事らしい。と、これは、アメリカ大使館にお勤めの、アメリカ人に聞いたんだけどね。)には、この威勢の良い浪速言葉、それはそれは、とても素敵なのだ。東京の、早口で、しらっけたしゃべりとは、本当に違う。いつもながら、田辺ワールドに、しばし惹きこまれた私でした。大阪弁のニュアンスで、短編が進んでいくのも、とっても面白い。いろいろな男女が、魅力いっぱい、紙面いっぱいに、飛び回る。大阪の美味しそうな食事が沢山出てくる。もう、最高!元気、って、本当に良いことです。
今でいう(私の日本語は、約20年前に日本を出てから成長を止めているので、古臭いのです。今でも、良くJRの事を国鉄と言うくらい!)、アラフォーのカッコ良さかなあ。自然でいて、とっても背筋がのびてて、周りに流されない生き方。藤堂さんって、そういうのを書くと、とても上手いと思う。何でもない日曜日のドライブが、人生を反映する、重大な時になっていく。本当に何でもない、どこにでもいるような男女が、ある日曜日を通過して、キラキラして素敵なカップルなんだぞ、っていう事になる。つまり、誰にでも、キラキラ**の可能性があるってこと。読んでみたいと思わない、この本??
読者(つまり、私)を、ぐいぐい惹きこみ、あっという間に読んでしまった。優しい、ほっとする、小説。そして正義まっしぐら、人情厚く、羨ましい限りの友人関係。そしてカッコ良い女を描ききっている。北海道を美しく讃えるのも忘れていない。
すっごい本!!本当に。山田詠美の才能の大きさって、半端じゃないよね。この本は1989年に出版された、いわばひと昔前の本。だけど、とても新鮮で、表現の古さが全くない。つまり、バブル崩壊の前の世界だよ。心奪われた文章が沢山あるのだけど、例えば 「まつ毛の上に雨が降っているように、瞳だけで泣いている。」「シーツのしわが、そのまま五線紙になって、それを柔く蹴とばす足先が、やさしい調べを奏でるような、そんな時間など、決して持てる筈がない。」「潤んだ大きな瞳でただひたすら、彼を見ていた。私は、その瞳に膜を張る湿り気が、その内、涙を形成って落ちて来やしないかと、人ごとながら心配になってしまった程だ。」「本当の大人の赤い唇って、絵の具箱の中のあの色みたいにあどけないんだ。」「人間が生きて行くことに限って言えば、塩と胡椒は、甘い味つけをするためにある。」素敵でしょ。本当、とってつけた表現が全くない。まだまだ沢山あるので、とにかく本を読んで下さい。それと、漢字と平仮名のバランスがとっても良い。ああ、すっかりハートを奪われた私です。
この題名、ちょっと素敵だと思いませんか。特に、音楽家の私には、ビビッと来ましたね。だけど、東野さんや、宮部さんの推理小説に慣れ親しんでいる私。夏樹さんには、大変申し訳ないけれど、一つ物足りなさを、感じ得ませんでした。本当にごめんなさい。ストーリーの根底にある、怨念や複雑化した養子問題などが、良い伏線を張りそうなのだけど、何故か、余りストーリーに入り込んでいけないんですね。文章も良いのだけどね・・読者をぐいっと、引っ張ってくれない、なんて贅沢な悩みを語っています。きっと、私自身の問題なんでしょう。
何たって、文章が美しい。お話の内容としては、一人の目立たない青年が、非の打ち所がない青年を愛してしまう。そしてその仮面の下に隠されたモンスター性に気付いた時から、その彼の愛の奴隷になるというものだ。究極の愛を奏でる。そして、最後にとてつもない幕切れが訪れる。テンポといい、ストーリー展開といい、人物の描き方といい、本物だと思う。ああ、こういうのを、小説と言うのだなあ、と思わせてくれる。長く、日本小説界のトップを走り続けている山田詠美さん、理由が心底わかりました。
人気沸騰中、という広告にあるように、読んでいてとても面白い。不思議な力に引き寄せられて、自然と高木聖大君を応援してしまう。「とどろきセブン」のメンバーも、爽快で、素敵。年を重ねてこんなお年寄りになれたら、良いなあ・・と、つい思ってしまう。事件解決のスリラーというより、どちらかというと「寅さん」的人情ものというほうが、相応しい。人気作家というのは、本当にツボを心得ているなあ。やめられない、止まらない、というコマーシャルが一昔前にあったけど、まさにそれです。
この話、とても気に入っています。主人公達の名前が、カタカナのところがとても良いし、文章がすきっとしているところがカッコ良い。映画化されたけど、やっぱり紙の上の文章読んで、映像を自分の中で膨らませるのが楽しい。それぞれ個性ある登場人物も、想像すると楽しいし、特に行った事のないヘルシンキの町というのが、完全に想像の中なので、素敵だ。短いお話の中に、爽やかできりっとした本筋が通っていて、あっという間に読んでしまうけど、読後に心の中にかもめ食堂が生きている。是非読んでみて下さい。
とっても健康的な、恋愛小説だと思う。この作者は、「新官能派」と呼ばれているみたいだけど、私にはちっともそんな感じはしなかった。久し振りに、清々しい青春ドラマを読んだ印象。陽に焼けた肌、自然と一体となった暮らし、ストレート勝負の表現。私には、とても新鮮だった。