Book Reviews (マイブック評)
今でいう(私の日本語は、約20年前に日本を出てから成長を止めているので、古臭いのです。今でも、良くJRの事を国鉄と言うくらい!)、アラフォーのカッコ良さかなあ。自然でいて、とっても背筋がのびてて、周りに流されない生き方。藤堂さんって、そういうのを書くと、とても上手いと思う。何でもない日曜日のドライブが、人生を反映する、重大な時になっていく。本当に何でもない、どこにでもいるような男女が、ある日曜日を通過して、キラキラして素敵なカップルなんだぞ、っていう事になる。つまり、誰にでも、キラキラ**の可能性があるってこと。読んでみたいと思わない、この本??
読者(つまり、私)を、ぐいぐい惹きこみ、あっという間に読んでしまった。優しい、ほっとする、小説。そして正義まっしぐら、人情厚く、羨ましい限りの友人関係。そしてカッコ良い女を描ききっている。北海道を美しく讃えるのも忘れていない。
すっごい本!!本当に。山田詠美の才能の大きさって、半端じゃないよね。この本は1989年に出版された、いわばひと昔前の本。だけど、とても新鮮で、表現の古さが全くない。つまり、バブル崩壊の前の世界だよ。心奪われた文章が沢山あるのだけど、例えば 「まつ毛の上に雨が降っているように、瞳だけで泣いている。」「シーツのしわが、そのまま五線紙になって、それを柔く蹴とばす足先が、やさしい調べを奏でるような、そんな時間など、決して持てる筈がない。」「潤んだ大きな瞳でただひたすら、彼を見ていた。私は、その瞳に膜を張る湿り気が、その内、涙を形成って落ちて来やしないかと、人ごとながら心配になってしまった程だ。」「本当の大人の赤い唇って、絵の具箱の中のあの色みたいにあどけないんだ。」「人間が生きて行くことに限って言えば、塩と胡椒は、甘い味つけをするためにある。」素敵でしょ。本当、とってつけた表現が全くない。まだまだ沢山あるので、とにかく本を読んで下さい。それと、漢字と平仮名のバランスがとっても良い。ああ、すっかりハートを奪われた私です。
この題名、ちょっと素敵だと思いませんか。特に、音楽家の私には、ビビッと来ましたね。だけど、東野さんや、宮部さんの推理小説に慣れ親しんでいる私。夏樹さんには、大変申し訳ないけれど、一つ物足りなさを、感じ得ませんでした。本当にごめんなさい。ストーリーの根底にある、怨念や複雑化した養子問題などが、良い伏線を張りそうなのだけど、何故か、余りストーリーに入り込んでいけないんですね。文章も良いのだけどね・・読者をぐいっと、引っ張ってくれない、なんて贅沢な悩みを語っています。きっと、私自身の問題なんでしょう。
何たって、文章が美しい。お話の内容としては、一人の目立たない青年が、非の打ち所がない青年を愛してしまう。そしてその仮面の下に隠されたモンスター性に気付いた時から、その彼の愛の奴隷になるというものだ。究極の愛を奏でる。そして、最後にとてつもない幕切れが訪れる。テンポといい、ストーリー展開といい、人物の描き方といい、本物だと思う。ああ、こういうのを、小説と言うのだなあ、と思わせてくれる。長く、日本小説界のトップを走り続けている山田詠美さん、理由が心底わかりました。
人気沸騰中、という広告にあるように、読んでいてとても面白い。不思議な力に引き寄せられて、自然と高木聖大君を応援してしまう。「とどろきセブン」のメンバーも、爽快で、素敵。年を重ねてこんなお年寄りになれたら、良いなあ・・と、つい思ってしまう。事件解決のスリラーというより、どちらかというと「寅さん」的人情ものというほうが、相応しい。人気作家というのは、本当にツボを心得ているなあ。やめられない、止まらない、というコマーシャルが一昔前にあったけど、まさにそれです。
この話、とても気に入っています。主人公達の名前が、カタカナのところがとても良いし、文章がすきっとしているところがカッコ良い。映画化されたけど、やっぱり紙の上の文章読んで、映像を自分の中で膨らませるのが楽しい。それぞれ個性ある登場人物も、想像すると楽しいし、特に行った事のないヘルシンキの町というのが、完全に想像の中なので、素敵だ。短いお話の中に、爽やかできりっとした本筋が通っていて、あっという間に読んでしまうけど、読後に心の中にかもめ食堂が生きている。是非読んでみて下さい。
とっても健康的な、恋愛小説だと思う。この作者は、「新官能派」と呼ばれているみたいだけど、私にはちっともそんな感じはしなかった。久し振りに、清々しい青春ドラマを読んだ印象。陽に焼けた肌、自然と一体となった暮らし、ストレート勝負の表現。私には、とても新鮮だった。
文庫の裏表紙には、漱石の「こころ」現代版と書かれているけれど、かなりの現代版だと思う。彼岸先生は、クレイジーだし、突拍子もない。沢山の女性を愛し、そして愛される。魅力満載だ。終いには、精神病院へ入るが、これも「嘘つき」の続きなのか、よく分からない。自分に正直であり続けるための、方便か。彼岸先生のアメリカ滞在中の日記には、現在アメリカ暮らし25年を迎える私には、同意しかねる表現、解釈が出てくるけど、まあこれは小説だし、フィクションを生きる先生を描いたフィクションなので、深読みしないでおこうっと。大長編で、アメリカ暮らしの一挙手一投足が延々と続く箇所は、すみません・・少し飛ばしました。これは、超ロマンス小説とも言えるし、支離滅裂とも言える。大長編読みたいという方は、是非挑戦して、ご自分で答えを見つけて下さい。
とても美しい小説です。だけど、何だかこういうコンセプトのテレビドラマ最近見たなあ、と思ったら、「流星ワゴン」だった。1994年に発表された本作品がきっと先にあったのだろうけれど。過去と現実を行きつ戻りつ、お話が進む。とてもレトロに、戦時中まで戻るし、私にとってのレトロもある。地下鉄銀座線には、小さい頃祖母に連れられて、浅草まで渋谷から買い物に行ったので、あの駅近くになって、電気が消えて暗くなる一瞬を良く覚えている。ちょっとよそいきの格好して、祖母の横にちょこんと座っていた私。帰りには、よく東横の上の食堂で、スパゲッテイ・ミートソースをご馳走してくれたっけ。この小説に登場しそうな光景。