Book Reviews (マイブック評)
吉本ばななさんの、ひと昔前のエッセイ集。だから、登場する人物が、カート・コバーンだったり、アイルトン・セナだったり、する。でも、「ばなな調」には、変わらないよ。つまり、ただ単に生活の中の独り言という訳ではないってこと。彼女の人生に大きなインパクトを与えた人の話しや、身近にいるアーテイスト仲間の話など。私が知らない人の話だったりすると、ちょっと分からなくて、ついていけない感もあったけど、なかなか面白い発想もあって、読破。
これは、「手紙」とはうって変わって、軽いタッチの学園推理小説、短編集。非常勤講師が、行く先々の学校で遭遇する不思議を、解決していく、ちょっと暖かくも、可笑しくも、楽しい、まさに「学園もの」だ。多彩で、いろいろな顔を持つ、東野さんにふさわしいですね。軽く何かを、というのなら、是非お薦め!
南米コンサートツアーでは、全部で8回飛行機に乗ったので(!)、本を読む時間は、たっぷり。5冊持って行って、読んだうちの一冊が、この名著。もちろん以前にも何回か読んだことがある。しかし、何度読んでも泣けてしまうんですね。結果が分かっている、途中の経過も知っていて、それでも感動。すごいお話しです。もし、まだこの本を知らない方いるなら、是非手に取ってみて下さいね。
これぞ、まさに正統派作家。文章がとにかく美しい。流れるような文体に、そこかしこに、キラキラ光る宝石が埋まっている。お話そのものも最高だけど、表現の、そして言葉の使い方にひたすら感動、感動。とってつけた、わざとらしい表現が一つもなく、読んでいると、川の流れに身を任せるような感じで、すーっと、言葉が入ってくる。そこに、水を通して見えるプリズムみたいに、きれいな言葉がさらっと、近くを流れていく。こういう文章にいつも浸っていたいと、つくづく思うのです。そして、「無銭優雅」という言葉の持つ、不思議な魅力。是非読んで見て下さいね。
美しい短編集。素敵な宝石箱に詰まった、ジュエリーとでも言えるかな。一人称だったり、二人称だったり、はたまた3人称だったり。光の当て方は様々だけど、それぞれの短編はキラキラしている。短編同志は全く繋がっていないのだけど、一冊読み終わると、なんだか長編を読んだような不思議な気分になる。小池真理子さんの才能で、全編が美しい愛であふれている。
とても散文的。詩的小説っていうのかな。非現実的なんだけど、それが何だっていうかんじ。素敵な文章だと思った。青年(すごく古い表現)のやるせなさとか、本音とか、自分ではコントロール出来ないエネルギーが、文章の合間に溢れている。お洒落な設定なのに、それだけに走らないところがとっても良い。
この本も、直接ではないものの、DVが話の本筋になっている。アラフォーの不思議な年下の男性との恋物語。何が、真実なのか分からない。嘘のつきっこなのか。それとも、日本人特有の照れが災いしての、湾曲表現なのか。年下の男性に、ひょんな事から惹かれていく来実子。こんな事、現実には起こりえないけれど、こんな出会いがあったら、人生のスパイスになるのかなあ。
美しい話だと思う。最近読む本に、頻繁にDVの話が出てくるけれど、これは、今まで余り語られなかった家庭内暴力が、陽の目を見たという事なのかなあ。DVの連鎖についても語られているし。夫から逃げて来た妻と、警察から罪を着せられ逃げている男の、静かな、それでいて、とても強い恋愛小説だ。ちょっと湿った、でも、美しい世界は、小池真理子の骨頂だと思う。恋愛するカップルを取り巻く人々も、とても良い具合に設置されている。新聞小説だったので、きっと読者はワクワクしながら、毎日の夕刊を楽しみにしていたのでは。
下北沢・・・とてもノスタルジック。中学、高校と小田急線で下北沢を必ず通っていたので、他人事とは思えない響きがある。駅前から、ごちゃごちゃしているんだけど、とっても活気があって、楽しくなる街。飲み屋さんも沢山行ったし(これは少し大きくなってから・・一応!)、友人たちとも大騒ぎをした街だ。若くて、夜じゅう騒いでいても、翌日なんとか持ち直して、活動出来た、まさに私の「若さ」の時代。それが、下北沢とつながるので、この本は、ほおっておけなかったですね。時代は変わり、お店も街の風景も違っていると思うけど、この本を読む限り、本質は変わっていないみたい。嬉しいですね。お父さんが、愛人と心中するというのが、お話しの中心で、下北沢の優しさ、心地良さ、懐の深さが、それを大きく取り込んでいく。装丁もとても素敵!是非、手に取ってみて下さい。
これも、「ばなな」絶頂の本。こんなに、日常のさりげなさを、美しく愛おしく出来るんなんて・・素敵な本です。現実には、きっと有り得ないような優しい関係を、きちんと書いて、きちんと読者に提示して。最高!小柄な本が、「ばなな」本にぴったり。登場人物たちが、めちゃ優しいけど、きちんと自己主張して、自分の芯はずれない。まさに、「カッコ良い」。心から惚れてしまいました。