Book Reviews (マイブック評)
島本理生さんの研ぎ澄まされた感性が全編から感じられ、素敵な読書時間を送った。15歳と16歳の時に書いた超短編も一緒に収録されている。15歳っていったら、中学3年かもよ!その若さで、宇宙空間遊泳しているような’文章が、どうして書けるのか・・・経験というものがなく、頭の中でイメージが湧き、そこでペンを取って、それが文章を紡いでいく訳。今後も、島本ワールドにお邪魔しますよ!
人間皆、多かれ少なかれ、間違いを犯しながら生きている。間違いを犯したときに、それを自分で認められる強さがあるかないかで、人生の舵取りが決まると思う。認められないと、それを何とか正当化しなくちゃならないし、挙句の果てには、うそをつくことになる。一回ついた嘘は、それを正当化して前に進むため、さらに迷宮に入る事に。この小説も、この当たりをテーマに描いている。そして社会問題にもなっている犯罪にあける加害者・被害者の関係も浮き彫りにしている。
2冊目の島本理生作品。割と身近に、精神性ほぼゼロ、現実性満開という人物を知っているので、この本の観点はどう映るのかなあ、と思ってしまった。人間って、とてつもなく強くなれるけど、その反対にちょっとした経験でどん底に行き着くこともある。私も、解決策のない辛い時期を過ごしたので、その「どん底にはまってしまって、出てこれない」感が、多少は分かる。どんなに、一つ事に執着せずに緩やかに物事考えようと思っても、無理なのだ。とにかく無理。そして自分で終わりのない穴倉に向かって、突き進んでいる。そういう危うい精神を、とてもポジテイブに描いていると思う。そして誇示していないところが、とても気に入った!
素敵な感性を持った作家ですね。初めて読みました、島本理生さんの御本を。表題のお話しに加えて、「クロコダイルの午睡」「猫と君のとなり」が一緒になって、一冊の本になっている。「大きな熊。。」を読み終えて、少しほんわかした気分になったところで、「クロコダイル。。」で、いきなりどうしても避けられない現実に直面し、どんーーんと崖下に転落。そして「猫と君。。」で、桃源郷のような美しい世界へ。こういう小説感、大好きですよ。でも私だけかなあ。。行間に吉本ばななの風が吹くのを感じるのは・・どちらにしても、もっと島本さんの御本読みますよ!
是枝監督の映画は大好きなので、この本も期待大にして読んだ。期待を裏切らず、素晴らしい本ですよ!日本の庶民の生活が、湾曲な愛情表現が、狭い家の中でわさわさしながらの暮らし、まさにホームシックにさせる材料ばかり!素敵な本ですよ!
本作は、第147直木賞を受賞した短編集。青春もので知られる著者が、今作ではより経験豊富な年代の人にも読んでもらう事を念頭において、執筆したらしい。ごく普通の女性5人が、ふと魔が差して起こしてしまった窃盗や放火といった犯罪をテーマとし、ちょっとミステリーっぽく、ちょっとホラーっぽく、書かれている。「才能あふれる」という言葉がぴったりの、意欲的で、言葉の美しい本。
これも、辻村さんの青春真っ只中物語。町おこしストーリー、狭い村の政治癒着、島にユートピアを求めやってくるIターン仲間、町の元気なおばちゃん達、もう役者には困らない。それをさらっと繋げ、とても面白い小説にしている。長さも丁度良いし、シングルマザーや、友情や、もう人生のすべてを網羅しているといっても過言ではないのに、なぜかうるさくない。流石です!是非、お読み下さい。一気に読んでしまいますよ!
辻村さんは、最近はまっている作家の一人。帯に「少し不思議な物語」とあるけれど、とても美しいお話しだと思う。ドラえもんが持っているいろいろなトリックを巧みに引用しているのもとても斬新!SF(サイエンス・フィクション)を日本語に置き換えて、Sukoshi・ナントカ(例えば、少し・不思議、とか少し・不安とか)とカテゴリーにして、人を見るのも、とても面白い発想だと思う。そういう脇役達を従え、主人公の高校生・芦沢理帆子は、自分と家族、友達、学校、ボーイフレンドなどの日常を、冷めた目で見る。というか、冷めた目で見ようとする。だけど、その究極は。。。熱い青春物語だと思う。
東野さんは、いつだって凄い。ダイナミックだけど、とても悲しいお話しを書く。主人公の父親の献身、それが彼の人生の指標になり、この小説の根幹になる。「赤い指」「手紙」に続く家族愛を書いた名作だと思う。俗に言うミステリー小説の分野もお得意だけど、東野さんの凄さはやっぱりヒューマニズムにあると思う。生きる事の意味、何を心の中に携えながら毎日を送り、一生を終えるのか。「幸せは自分で決めるもの」と言われるけど、本当にそうだと感じさせる一冊。是非読んで下さい。