Book Reviews (マイブック評)

マイストーリー 私の物語  林真理子 朝日新聞社 7/21/17 July 21, 2017

作者の言いたかった事は、帯を見れば一目瞭然。「人は、自分のことを語る時、思い出したくないこと、喋りたくないことは絶対書きません。都合のいい綺麗なことばかり書きます。それでいいんです。それだから自費出版なんです。もし客たちが、自分の恥部をすべてさらけ出すようなことが出来たら、彼らは作家になっています。」この本は、インターネットにあふれる飾った文章、気取った文章、カッコつけた文章、自分の夢見る自分になれるインターネット、それを自費出版の世界と並行させて、書いている(本の中にネットばなしは、はっきり出てこないけれど、ブログ文化が根源にあるのは間違いなし)。でも「なりきれる」人って、強い!羨ましいくらい。様々なネットの形態を使って、人は自分の事を話す、はなす、ハナス!そして、なりきる。現実といくら離れようとも、気にしない。林真理子の新しい境地。はまって、長編だけど、一気に読んでしまいました。

私をくいとめて  綿矢りさ  朝日新聞出版 7/7/17 July 7, 2017

まさに、新しい感性。とってもこういう感覚分かるよ!と思いながら読むけど、発想がとても新鮮。驚きの連続、逆転あり、涙あり、みつ子の人生、七変化!綿矢さんの本、しばらく読みますよ。

シルエット 島本理生 講談社 6/27/17 June 27, 2017

島本理生さんの研ぎ澄まされた感性が全編から感じられ、素敵な読書時間を送った。15歳と16歳の時に書いた超短編も一緒に収録されている。15歳っていったら、中学3年かもよ!その若さで、宇宙空間遊泳しているような’文章が、どうして書けるのか・・・経験というものがなく、頭の中でイメージが湧き、そこでペンを取って、それが文章を紡いでいく訳。今後も、島本ワールドにお邪魔しますよ!

虚ろな十字架 東野圭吾 光文社 6/27/17 June 27, 2017

人間皆、多かれ少なかれ、間違いを犯しながら生きている。間違いを犯したときに、それを自分で認められる強さがあるかないかで、人生の舵取りが決まると思う。認められないと、それを何とか正当化しなくちゃならないし、挙句の果てには、うそをつくことになる。一回ついた嘘は、それを正当化して前に進むため、さらに迷宮に入る事に。この小説も、この当たりをテーマに描いている。そして社会問題にもなっている犯罪にあける加害者・被害者の関係も浮き彫りにしている。

波打ち際の蛍 島本理生 角川書店 6/19/17 June 19, 2017

2冊目の島本理生作品。割と身近に、精神性ほぼゼロ、現実性満開という人物を知っているので、この本の観点はどう映るのかなあ、と思ってしまった。人間って、とてつもなく強くなれるけど、その反対にちょっとした経験でどん底に行き着くこともある。私も、解決策のない辛い時期を過ごしたので、その「どん底にはまってしまって、出てこれない」感が、多少は分かる。どんなに、一つ事に執着せずに緩やかに物事考えようと思っても、無理なのだ。とにかく無理。そして自分で終わりのない穴倉に向かって、突き進んでいる。そういう危うい精神を、とてもポジテイブに描いていると思う。そして誇示していないところが、とても気に入った!

大きな熊が来る前に、おやすみ。   島本理生 新潮社  6/19/17 June 19, 2017

素敵な感性を持った作家ですね。初めて読みました、島本理生さんの御本を。表題のお話しに加えて、「クロコダイルの午睡」「猫と君のとなり」が一緒になって、一冊の本になっている。「大きな熊。。」を読み終えて、少しほんわかした気分になったところで、「クロコダイル。。」で、いきなりどうしても避けられない現実に直面し、どんーーんと崖下に転落。そして「猫と君。。」で、桃源郷のような美しい世界へ。こういう小説感、大好きですよ。でも私だけかなあ。。行間に吉本ばななの風が吹くのを感じるのは・・どちらにしても、もっと島本さんの御本読みますよ!

まほろ駅前狂騒曲・番外地 三浦しをん  5/31/17 June 1, 2017

続編で、登場人物も設定もおんなじ!最高に面白いですよ!

歩いても歩いても 是枝祐和 幻冬舎 5/31/17 June 1, 2017

是枝監督の映画は大好きなので、この本も期待大にして読んだ。期待を裏切らず、素晴らしい本ですよ!日本の庶民の生活が、湾曲な愛情表現が、狭い家の中でわさわさしながらの暮らし、まさにホームシックにさせる材料ばかり!素敵な本ですよ!

鍵のない夢を見る  辻村美月  文芸春秋 5/26/17 May 26, 2017

本作は、第147直木賞を受賞した短編集。青春もので知られる著者が、今作ではより経験豊富な年代の人にも読んでもらう事を念頭において、執筆したらしい。ごく普通の女性5人が、ふと魔が差して起こしてしまった窃盗や放火といった犯罪をテーマとし、ちょっとミステリーっぽく、ちょっとホラーっぽく、書かれている。「才能あふれる」という言葉がぴったりの、意欲的で、言葉の美しい本。

島はぼくらと 辻村深月 講談社 5/18/17 May 18, 2017

これも、辻村さんの青春真っ只中物語。町おこしストーリー、狭い村の政治癒着、島にユートピアを求めやってくるIターン仲間、町の元気なおばちゃん達、もう役者には困らない。それをさらっと繋げ、とても面白い小説にしている。長さも丁度良いし、シングルマザーや、友情や、もう人生のすべてを網羅しているといっても過言ではないのに、なぜかうるさくない。流石です!是非、お読み下さい。一気に読んでしまいますよ!