Book Reviews (マイブック評)

Variety Hideo Okuda 奥田英朗  Kodansha 11/7/17 November 6, 2017

奥田さんの短編集。作家ご自身もおしゃっているように、最後の「夏のアルバム」は、超傑作。涙なしには、読めません。今思い返しても、涙が出てくる。。。どういう心を持っていると、こういう美しい物語が紡ぎ出せるのかしら。「俺は社長だ!」「毎度おおきに」は連作。会社を始めた中年男性の、あがきと自信と愛と、そのすべて。しかし、これを読んで奮起して会社を辞めてしまわないように。あくまでも、お話しです。でも、とっても素敵だけどね。「ドライブ・イン・サマー」は、ハチャメチャなアンテイック喜劇。最高です!「住み込み可」は、哀愁たっぷり。「セブンテイーン」は、優しさが怒りに勝るという事かな。これも、ほっこりします。この本も、大推薦です。気持が洗われる、と気楽に言うけれど、日々泥まみれになり、生きている人間にこういう本は良い。とても良いです。是非、手に取ってみて下さい。

向田理髪店 奥田英朗  光文社 11/6/17 November 6, 2017

すっかり、奥田英朗さんの本にはまっている私です。この本も最高!北海道の札幌から2時間ほど離れた、過疎化一途の苫沢町のお話し。向田理髪店の店主、康彦の周りで起こる様々な事件、人間模様、恋愛風スキャンダルが、奥田さんの素晴らしいユーモアと執筆力で、描かれている。笑いあり、ペーソスあり、涙ありの、まさに「日本」の原風景なのだ。こういう小説を読むと、日本が懐かしくなります、本当に。でもこれは現実ではない!お話しだ。それに私は、「東京」出身。それも、少なくとも4代目の江戸っ子!向田家とは、180度別方向出身なのでね。それにしても、奥田さん、ファンが多いでしょうね。日本人は、やっぱり寅さんが好きだからね。これは、超お薦めの本です。

ナオミとカナコ  奥田英朗  幻冬舎 11/6/17 November 6, 2017

これをミステリーとして読むなら、多分及第点を上げられないと思う。だって、殺人のトリックや準備が余りにずさんで、読みながら、本を蹴っ飛ばしたくなるくらいだから。でも、DVを焦点に友情物語として読むなら、結構カッコ良い。最後の章は、ジェームス・ボンドも顔負けの、派手なアクションで攻めてくれる。こちらも、息がつけない。途中、ずさんな(すみません!)殺人計画に、頭に湯気が上り、途中棄権しようかと思ったけど、読破して良かったです。スカッと、気持ちがしますよ、最後のページを閉じた時は!

抱く女  桐野夏生 新潮社 10/18/17 October 18, 2017

最後の数ページで、涙が溢れて、止まらなかった。この主人公のモノローグのために、250ページが必要だったんだと思う。感動で、しばし動けなかった。1972年の学園紛争、浅間荘リンチ事件を背景に、物語は進んでいく。主人公の三浦直子は、ノンポリ学生。浮き草のように、その時代を浮遊している。どんな男とも寝るから、「公衆便所」扱いされる。逃げたくてしょうがなかった「家族」への愛、見つけるべくして逢った本物の「男」。そして、最後に来る兄との別れ。途中では、何となく本に入りこめなかったけど、一旦のめり込むと、ぐぐっと心に刺さった。そして、そのささくれが、涙に変わった。感動の一冊です。

Invitation 8人の売れっ子女流作家 文芸春秋 10/1/17 October 2, 2017

8人の当世きっての売れっ子女流作家が、一編づつ出し合った短編集。短編とは言え、それぞれとても読み応えがある。不倫ものあり、ミステリーあり、不思議物語りあり、厭世観たっぷり小話しあり、という訳で、とても楽しく読ませて頂いた。8人の語り部が、夜な夜な私に話かけてくれたように。。。高樹のぶ子さんの「夕陽と珊瑚」、圧巻!最後の数ページまで、上手く私を騙してくれて、思わず一人微笑みましたね。それぞれに感想を書くと、それこそ長編ブック評になってしまうので、ここはカット!いつもながら、「作家」という方々の頭の中、どうなってるのかなあ、としみじみ思いますよ。それぞれの素敵で、かつ、おぞましいストーリーが、どういう工程を経て、文字になっていくのか。まか不思議。これは、大推薦の本です。これを機に、それぞれの作家の本を手に取って見ると、ますます、その作家の世界に入りこめますよ!本、大好き!

空の拳  角田光代  日本経済新聞出版社 9/26/17 September 26, 2017

ノロウイルスにやられ、24時間基本的にはベッドとトイレを往復するしか出来ず、まあこの本を読んだ訳です。病気で眠る事も出来なかったので、益々時間はあったのね!、というのは簡単だけど、ノロの脅威は聞きしに勝るもので、ここでお話しするのも憚られます。閑話休題!題名からもご想像出来るでしょうが、この本は、ボクシングの本です。ボクシング案内、紹介、推奨をやりながら、若き編集者が成長していく様子を描く。でも、ちょっと美しすぎないかい!と思うのは、私がひねくれ者だからでしょうか。出来過ぎ感が、否定出来ないかなあ。。でも、ウイルスに侵された頭で読むには、脳細胞を余り必要とせず、完璧な書物であったとも言えますね!

桜ほうさら 宮部みゆき  PHP研究所 9/26/17 September 26, 2017

これは、本当に長編!読むエンジンがかかるのに、かなり時間がかかった。でも、100ページを過ぎた当たりから、俄然のめりこみ、一気に600ページを読破。江戸の町に住んでいるような気分で、るるるん!と、ページをめくった。主人公の笙之介の、賢さ、優しさ、初心さ、可愛らしさ、頑固さ。。。が、長屋の人々とのやり取り、初めて惚れた商家の娘さんなどと絡み合い、お話しが進む。ミステリーが根底にあるものの、ヒューマニズムがテーマだ。優しさに浸りたくて、素直に微笑みたければ、この本をお読みあれ!貴方も江戸の町にトリップ。べらんめえ!の声が聞こえ、子供たちの笑いが渦巻く長屋に着くはず。600ページの楽しい旅が待っています!

正妻 慶喜と美賀子 上・下 林真理子 講談社 9/11/17 September 11, 2017

林真理子さんの引き出しの多さ、興味の範囲、表現方法の多様さ。。全く恐るべし。江戸時代最後の将軍となった徳川慶喜に嫁いだ公家のお姫様、美賀子。約一年に渡って新聞小説として連載された力作で、女性の目として、男性の目として、時代の変遷を描く。江戸時代の公家として育ったお姫様が、自分の意志に関わらず、次第に下界に降りていく様子、そして正妻である自分の立ち位置、思い入れ、など、心の襞を追い、夫としての慶喜との葛藤、愛情が焦点だ。まさに”幸せ”とは??である。自分の中に籠らず、世界に世俗に興味が持てる事は、幸せだ。だけど、コアを失ってはいけない。美賀子は時に軟で、時に強情で、時に少女のようだ。とってもチャーミング!250年続いた徳川の世の最後を見、大奥の崩壊を見、明治開花を見、外国との交渉再開を見、ものすごい時代に生きた一人の女性。その人生を深い時代考証と共に、描き切る。どれだけの時間を準備に費やした事か。。。作家魂を見る思いで読んだ。

中島ハルコの恋愛相談室 林真理子 文芸春秋 8/15/17 August 17, 2017

林真理子のニューキャラクター!中島ハルコ。一つの事にすごく秀でて、その道を長く牽引している人は本当に違う。ものすごい才能あり、努力あり、そして沢山の引き出しあり。林さんの凄さが、すべてのページに凝縮されている本です!ハルコ女史は、魅力的かつ、ハチャメチャ。本のページを破って出てきそうな、エネルギーだ。こういう人ははっきり言って、どこにもいない!でも、何だかどこかで、お逢いしそうな気持にさせてくれる。ハルコ女史に一喝されたい!!!!

蛇にピアス & 軽薄 金原ひとみ 7/31/17 July 31, 2017

綿矢りさの「蹴りたい背中」と一緒に、2004年度の芥川賞を受賞した作品。まあ、海外にいるので、文壇の情報などにも疎く、今頃読んでいる訳です。こう来ましたか、という感じかなあ。確かに、暴力度最高なので、そのパワーに度肝を抜かれるというのは否めないけど、根底は究極の優しさだと思う。そして幸せの究明。私自身、スプリットタンにも入れ墨にも興味は全くないけど、人それぞれ、興味の対象も違うし、自分に対してどこまで出来るかという、挑戦の方向性も違う。京都の西陣織の職人なら、その道を究めようと切磋琢磨するだろうし、植物学者ならアマゾンの山奥に、目指す植物を探しに行くだろう。 いくつか彼女の初期の作品に目を通したけど、暴力全開、猥褻全開の世界感。そして、「軽薄」を読んだ。芥川賞から約12年経ち、結婚しお子さんも二人いらっしゃるご様子。アンダーグラウンド臭でぷんぷんしていた初期の作品から、「軽薄」の主人公は裕福層でカッコ良い仕事をしている。でもやはり「殺す」「死ぬ」という愛情表現がテーマだ。甥を愛し、心を埋めようとする30代既婚女性。そしてすべてを捨て解放されると言う。でもその後の人生は?いつでも「何か」の最初は、新鮮で素敵だ。その継続が、最も難しい。