Book Reviews (マイブック評)
新聞連載小説。読者は、さぞかし毎日ワクワクと新聞を開き、読んだ事と思う。私ははっきり言って、読むのを止められず、いくつかやらなければ行けない事を、放ってしまった・・とにかく、我々読者を惹きつける。それも、グイグイと。流行作家(こんな言葉、死語かもしれないけれど)をずっと続けているのは、そこには強い理由があるはず。本が大層面白いということ。それは、文章の上手さも、話の構築性も、話題性も色々あると思うし、作家自身の好奇心も努力も、才能もあると思う。「とめどなく囁く」では、ミステリー性を強く出しながらも、実は「自分」との対面が主になっている。玉の輿に乗った主人公、早樹だが、前夫の失踪から解放されず、その真相を追求するところから、目を背けていた真実を受け入れ、次に羽ばたいて行く。自分への自信を取り戻す旅でもある。時間に余裕があれば、どーんとこの本にのめり込むのも、夏に粋な過ごしかたかも!
所謂スーパー・ステイシオンものは、苦手なのだけど、今回は挑戦。ノロノロと読み進めるけど、諦めずに、三章くらいからスピードアップ。そうか、これがゴールだったんだなあと、実感するところまで来ると、満足感が!つまり、超人間がテーマではなく、それはゴールに辿り着く原動力だったと言う訳ですね。改めて、東野さんの懐の大きさというか、引き出しの多さに、平伏します。
こちらも、2度目に読む本です。後半のクライマックスでは、涙なしには読めないページが続きますよ。本が始まった段階では、全く想像も出来ない展開となり、登場人物達が、葛藤、苦しみを経て、成長し、深い愛の世界に到達する。題名に全てが込められている、と言っても過言ではないと思う。東野圭吾の代表作の一つですが、もしまだ読んでいなければ、是非読んで下さい。
この本読むの、2度目です。「本格推理」という概念がない街に、タイムスリップする私、探偵天下一。実際の世では、推理作家として活躍するが、この過去のない不思議な街では、探偵として求められる。童話の中に、真実が’隠されているように、この不思議な街の暮らしの中から、現実の世界の問題点の解決策が見つけられるよう。。この作品の後、東野さんは、名作群「手紙」「赤い指」「容疑者Xの献身」など、意欲的に発表する。純文学推理とでも言うべき、感動の小説ばかりだ。常に進化し、自分に挑戦し続ける東野圭吾。新しい本を手に取る時、いつもワクワクさせてくれる。私ごとで大変恐縮なのだが、この夏再びガーシュインのラプソディ・イン・ブルーを演奏する機会に恵まれ、一念発起し、新しい楽譜を買い、フレッシュな気持ちで練習を始めた。多分50回くらい演奏して来ていると思う。今までとは違ったフレーズを入れたり、指使いを変えたり、音の強弱もニュアンスも全く違う嗜好で弾いてみると、何だかとっても新鮮で、楽しい。こちらも、ワクワクさせてくれる。
This book was first published in 1985, when the woman’s studies were not common, and Ms.Reich became an advocate of the woman’s studies throughout her life. This biography depicts Clara Schumann’s life in many aspects, as a child prodigy, composer, pianist, artist, teacher, wife, mother of 8 children, business woman, music promoter, social figure, and […]
離婚応援歌、とも言うべき本。本の帯には、「愛はいかにして色あせていくのか」となっているけれど、「愛」というより、自己発見と自己成長記だと思う。だって、本当は、「愛」なんて、最初からなかったのだから。「愛」だと思い込んでいた何かと戦い、自分が良く分かっていなかった33歳の女性が、独り立ちする、奮闘記である。でも、私はこの話、結構好き!正直なところかなあ。ちょっと最後がカッコ良すぎる感があるけれど、も。
家族について、愛について、そう、永遠のテーマ。この本の中の一文「家族は家族であるだけでもうすでに問題点いっぱいだという事だったけれど。」。言い得て妙。そして句読点が一切ないところが、又とても良い。かなり変形な家族と、相反するようでいて実は全くそうでない、愛の濃さ。不思議さと普遍が混じり合い、独特の世界に連れて行ってくれる。心を自由に解き放ち、真実を見つめるのは、楽じゃあない。けれど、心が満たされる。
久しぶりの、ばなな本。彼女の本の魅力って、何だろうって、考える事ありません?世界各国で翻訳され、読まれている。国境を越えて、確実に共感出来るコンセプトがある。何だろう・・・って。圧倒的に女性の読者が多いとは思うのですが、女性の五感に語りかけるものがある。もう、本能と言っても良いような、ベースのところで。「語り部」調のリズムで、こちらの心にどんどん入って来る。心を捕らえられてしまう。はっきりと告白しますが、この「イルカ」も、何だか知らないうちにのめり込み、あっという間に読んでしまいました。説明不要ですね。
第135回 芥川賞受賞作。ネット生活が始まって、ほぼ20年。全てが、短いスパンで起こり、消えて行く。日本語も随分と変化した。表現方法も、コミュニケーションの仕方も変わった。そして、一番大事な自己表現というものも変わり、もちろん愛の表現も変わって来た。そういう多々ある日常の変化と、日本人の心の根底にある揺るぎないものとの共存。その接点にあるのが、この小説かなあ、と思う。なかなか、素敵だ。細切れにした日常を、とても丁寧に表現し、臨場感溢れるストーリーに。短いので、すぐ読めますよ!
ななんと!凄い感性。洒落た表現の対極にあるような、心の奥から絞り出すよう感じ。それでいて、軽やかなジョーク混じり。そして、残酷なんだけど、それが優しさ故だったりする。でも、やはり最後は「愛」なのだ。カッコなんて、つけている暇はない!テンポの良い文章に乗って、私こと中年読者も、大学時代に返って、学食を浮遊した模様。すっかり、本に入れ込んでしまいました。これが津村さんのデビュー作で、かつ太宰治賞受賞作。いやはや、余りのスゴさに、強烈なパンチを食らいました!