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Book Reviews (マイブック評) ファミリー・ビジネス 米谷ふみ子 新潮社 May 19, 2022

的を得ている事だらけで、(米谷さんの文体を拝借して)「オー・マイ・ゴッド!」。作者の米谷さん、ロサンゼルスにお住まいなのに、全く知らずに今日まで過ごして来た事に、呵責の念に苛まれています「アイ・アム・ソーリ」。98年に、女流文学賞を受賞した本作品。文章の切れとテンポ、関西弁と英語日本語のうま〜い共存、どれを取っても最高です。どん底の苦しみも、笑いに変え強く生きていく、主人公とその家族。米谷さんご本人の人生経験がベースの小説だと思うのですが、ドロドロしていなくて、とても爽やか。解決の糸口が見えない、家族のしがらみに絡みとられている貴方。必読ですよ!解決は望めないかも知れないけれど、気持ちがスキッとなる事、請け合いデス。「ハバ・ナイス・デイ!」

Book Reviews (マイブック評) ラン 森絵都 理論社 May 14, 2022

小説の初期段階に、「幽霊」的なところが出て来て、これは私の苦手分野かなあ、と尻込みするも、勇気を奮って読み進める。「トンネルを抜けると・・・」ではないけれど、そこには素晴らしい世界が待っていたんですね。前世と現世の境が、40キロのレーン越えによって繋がっていて、主人公夏目環は、ひょんな事からそこを通り抜け、幼少時に失った家族に会うチャンスに巡り会う。前世に行った人達は、そこでそれぞれの前世の自分を洗い流す。最初に溶けるのは、苦しい過去や悲しい記憶、そしてやがてきれいな思い出も溶け、しまいには自分そのものが溶けていく。続いて、自分と他人の区別がつかなくなり、その段階で前世の中の次のステップへ進み、最終的に「輪廻転生」という「輪」の中へ入っていくという訳。そして、現世では(もちろん誰も、全然洗われていない世界!)、人がぶつかり、けなしあい、いじめがあり、でもどん底から這い上がり、愛を見つけ、心の平和を見つけていく。この小説の登場人物は、皆(良くも悪くも)とても真剣だ。真剣すぎて、時に背負わなくても良い苦労を請け負ってしまう。長編小説なので、紆余曲折ありありで、最終的に夏目環は、強くそして自分を信じられるようになる。読後、「良い小説だなあ」、と心から思いますよ!お薦めです。

Book Reviews (マイブック評) いつかパラソルの下で 森絵都 角川書店 May 2, 2022

森さん、又やってくれましたね!と言っても、これは私の感想で、この本自体は、平成17年に出版されています。森絵都さんの御本には、毎回ハートを根こそぎ持って行かれ、一人本を読みながら「良いよね〜。分かるよ、その気持ち!」と独り言連発で、読む私です。何と言っても、文体が素晴らしい。例えば、主人公がもそっと屋外に出たシーンでは、「太陽も健全だ。もったいぶったところがない。素直にぴかぴか光ってる。」と言わせている。もう、彼女(主人公の野々)が見ている景色が、自分の目の前にあるみたい!引用し始めたら、キリがないのでやめるけれど、文章に命があり、呼吸をしている。そんな感じ。 どうしようもなく自分である事。そして、それを知りながら、ドツボにハマる事。私自身の人生もそんな感じでやっているけれど、それが人生。されど人生。だから生きる事は楽しい。

Book Reviews (マイブック評) そこへ行くな 井上荒野  集英社 April 10, 2022

井上荒野さんも、私の大好きな作家の一人だ。今このブック評を書きながらしばし思ったのは、前作浅田次郎氏の「見知らぬ妻へ」と、もしかしたら、この本は根底でとても繋がるところがあるのかも・・つまり、人間の悲しみである。人間の性である。上手く世の中渡る「処世術」と、相反した生き方が、つまり「そこへ行くな」であろうか。バカっ正直とは違うが、「要領よく」出来ない、情の深さ。情念とも言うかもしれない。この本も短編集で、どのお話しも大層素晴らしい。自分の一生をどう生きるのか、何に基準を置いて生きるのか、これは難問のようでいて、案外単純なものかもしれない。

Book Reviews (マイブック評) 見知らぬ妻へ 浅田次郎 光文社 April 10, 2022

大変美しい短編集。こういうお話しは、日本人にしか書けないと思う。「もっと、カッコ良く生きろよな!」とか、「損得考えて、物事判断しろ!」とか、常識的な観念は通用しない。大損と分かっていても、情念に生きる。そして、ドン底に落ちる。でも、とても人間らしい。涙を誘う。「どうして、そんな道、敢えて選ぶのよ〜・・」と、いくら本のこちら側から叫んでも、主人公達は知らん顔だ。そして、とても気高く、清いのだ。浅田次郎さんは、私の大好きな作家である。

Book Reviews (マイブック評) 美しき愚かものたちのタブロー  原田マハ  文藝春秋 April 10, 2022

私は、この明治から昭和にかけての、とてつもないエリート達が好きだ。「選りすぐり」の特別な人達。由緒正しいお金持ち。明治開花から余り時を経ない時代に、海外に行き、外国語を操る。「平等」という観念とは裏腹の、庶民には手の届かない存在。この本は、そういった人達の、夢追い物語りである。東京にある、国立西洋美術館の誕生に導く、このエリート集団の尽力。中心人物の松方幸次郎のスケールの大きい変遷。「絵空事」とは良く言ったものである。日本国の首相を巻き込み、タブローに魅せられ、魂を捧げた人達の大冒険談だ。

English Blog 2022 Ash Wednesday March 2, 2022

Today is Ash Wednesday and this is my reflection to the beginning of Lent. From Psalm 102 For I eat ashes as my food and mingle my drink with tears.. Psalm 51 Have mercy on me, O God, according to your unfailing love; according to your great compassion blot out my transgressions. Wash away all […]

English Blog A Movie “Drive My Car” January 31, 2022

Adapted from Haruki Murakami’s short story, Drive My Car depicts people who are devastated by loss, allowing time to ripen those wounds, and rebuilding their understanding of love and life’s reason. It is fascinating to hear from non-Japanese speaking audience who perfectly understands the atmosphere and nuances in this movie. That is the power of “Drive […]

Japanese Blog (日本語のブログ) ロサンゼルス発 熟年スモジョ「どすこい日誌」華々しい相撲界:初場所、新大関誕生、続々結婚! January 27, 2022

楽しかった初場所相撲観戦も終わり、数日。続々と相撲関連ニュースが入って来ます。まず、御嶽海関、優勝、三賞受賞、そして大関取りおめでとうございます。又、結婚発表も同時に行い、ダブル・ダブルのお祝いですね。北の富士さんがファンだと公言して止まない母上、マルガリータさんも大喜びの様子です。結婚が起爆剤になったのか、今場所の御嶽海関は、顔つきもインタビューでの受け答えも違っていて、「やるかも・・」と予感させてくれ、我々の期待通りの結果に。身体的にも、気持ちの強さでも、次の地位を狙える才能に恵まれているので、益々の活躍を望んでいます。 もう一人の三賞受賞の阿炎の活躍には、感動感動!錣山親方の喜ぶ顔が目に浮かびます。相撲勘がとても良く、反応が良い。土俵を縦横無尽に飛び回り、相手を押し出す相撲。上の地位での活躍が早く見られますように。最後の三賞受賞者は、若手のホープ琴ノ若。お祖父ちゃん、お父さんと、脈々と流れる相撲の血。体格にも恵まれ、落ち着いた相撲振りが最高ですね。今後、再び怪我で休場という事のない様に、「怪我をしない」相撲で頑張って下さい。 横綱照ノ富士は、堂々と15日間取り切りました。踵の怪我を公表せず、千秋楽まで相撲を取り続けた姿は、流石です。しかし、今後もあるので、是非とも無理をしないで頂きたい。若・3兄弟の二人が幕内で勝ち越しの快挙。宇良も、三役に手が届くところまで来ました。阿武咲、豊昇龍の活躍も、見逃せませんね。正代のことについては、触れないことにします!貴景勝、怪我を直して早く復帰して欲しいです。佐ノ山親方、結婚おめでとうございます!お兄さんの千代丸関が、先を越された!と、言っていましたよ。千代丸関、貴方にはあなたの人生があります。又、志摩ノ海関、婚約おめでとうございます。 私の中での今場所の大きな出来事は、NHK藤井アナの引退です。私の相撲人生は、藤井アナと一緒に合ったと言っても過言ではなく、本当に惜しまれます。北の富士さんも、舞の海さんも、お別れの言葉を述べられていましたね。藤井アナの相撲の歴史への深い造詣、相撲愛、もう誰にも負けません。ゲストで相撲中継に出演して頂きものです。NHKの皆様、どうぞ宜しくお願いします。 又、相撲部屋の世代交代、名跡変更が多々行われた場所でもありました。尾車親方、長年の相撲界への功績、ありがとうございました。3月まで、暫し相撲とは、お別れ。全ての力士の皆さん、素晴らしい場所をありがとうございました。これにて、千秋楽!

Book Reviews (マイブック評) 山崎ナオコーラに夢中!一気に4冊読む。人のセックスを笑うな、美しい距離、リボンの男、鞠子はすてきな役立たず January 8, 2022

何と素晴らしい作家なのか・・私のハートを射止め、虜にさせてしまった山崎ナオコーラさん。今までにも、貴書は多々読んでいるものの、ご時世なのか、ドーンと心に響きました。涙あり、笑いありで(寅さんか!)、もう夢中で読んでしまったんですよ、本当に。だから、この年末、年始、山崎さんの生み出す魅力ある登場人物達と、幸せな時を過ごせました(感無量)。 まず「人のセックスを笑うな」。この本は、題名からは想像もつかない(ただ単に私の想像力の欠如かも・・)、繊細な恋愛小説です。このブック評を書くために最後のくだりを読んでいて、又泣けてしまった。山崎さんの文体が最高なのもそうだけど、文と文の間のスペース感(現実の)が、とても良い。ページに言葉が羅列せず、うま〜い具合に、隙間が空いている感だ。その隙間で、読者は、ググッと来て、想いにふける事が出来る。こういう、さりげない「時」が、大事なんだなあと、今更ながら痛感。そして、次に手に取ったのが、「美しい距離」。最愛の妻が不治の病いになり、残された日々、残された時間を、正直に、だけど葛藤しながら、生きる夫の話だ。夫は、とにかく、ひたすら妻を愛している。何でもしてあげたい。そこで「美しい距離」なのだ。ああ、又読み返して、ここでも泣いてしまった。亡くなった後、妻は、次第に遠くにいく。お墓参りをすると、妻への言葉が尊敬語になり、謙譲語も出てくる。「淡いのも濃いのも近いのも遠いのも、全ての関係が光っている。遠くても、関係さえあればいい。」と締め括る。 「リボンの男」。これは、子育てに全力を注ぐ、主夫の話。妹子(夫のあだ名)は、毎日自問自答する。自分の置かれた立場について、生産性について、子育ての喜びについて・・タロウ(子供)は、無邪気で、正直。そして、感性豊か。正に、夢の様な「子供」。みどり(妻)は、書店の店長。本に関われる事に、真の喜びを感じ、日々仕事に邁進している。この家族の何気ない、だけどとても真実な毎日を描いた小説です。最後に、「鞠子はすてきな役立たず」。もうこれは最高ですよ。公共の場で読む時は、人様からどう思われても良い覚悟で読んでくださいね。だって、大笑い、必須ですから。この本を読むと、ああ人生って、素敵だなあ。人間って、凄いなあ、って思いますよ。小太郎(夫)と鞠子(妻)は、夫婦漫才か!と思うぐらい、可笑しなカップルです。本人達は、至って真剣に毎日を送っているのですけど、ね。真面目な銀行員の夫と、専業主婦になった妻の凡庸な新婚暮らしから、お話しは始まる。しかし、鞠子は、役に立たない「趣味」に生きる事に。これは、小太郎の父の格言「働かざるもの、食うべからず」に大いに反する。小太郎は、妻を愛するものの、深い苦悩の毎日だ。ここからが、夫婦漫才の始まりという訳。どうぞ、読んで、お笑いして下さい。この夫婦のたどった道、読者も多く学ぶ事が出来ます。 2022年も、大好きな本達と一緒に幕開け。明るい年になりそうです。今年も、音楽だけでなく、相撲、読書、料理など、鞠子に負けないくらい、「役立たず」で、過ごせると良いなあ、と願っています。ああ、今日から初場所だ!仲良しの相撲ファンのT子女子と一緒に(それぞれの家から)、真夜中スマホでテキストしながら観戦します。「今の見た?」「宇良、可愛い!」などと、正に「役立たず」道をいく会話を楽しみますよ!それでは、本年もどうぞ宜しくお願いします。