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Book Reviews (マイブック評) そして、いま一人になった   吉行和子  集英社 February 26, 2021

中々楽しい本!才能溢れる吉行一家の事が、長い年月のスパンで書かれている。ベタベタした家族ではない様だけど、心の通った素敵な家族の様が、訥々と描かれている。夭折した作家の父、エイスケと107歳まで生きた美容家の母、あぐり。作家の兄、淳之介、女優のご本人、詩人の妹、理恵。錚々たるメンバー。でも、和子さんの描く文章に、気負いは一切ない。普通の日常がそこには書かれている。お母様を亡くされ、現在一人になった85歳の和子さん。最後にこう書いていらっしゃる。「人をうらやむこともない。自分ができることだけをしていればいい。与えられたことだけを一生懸命していればいい。生きていられるのは素晴らしいことだから、明るくいよう。」

English Blog Ash Wednesday is coming up. Let’s play or listen to Robert Schumann’s celebrated Carnaval, Op. 9. February 14, 2021

Carnaval, Op. 9, was written in 1834-35. It consists of 21 short pieces woven with 4 notes (Cipher) so those 4 notes make Carnaval cohesive. Carnaval represents a masked festival before Lent. In 2021, Lent season starts this coming Wednesday, February 17, known as Ash Wednesday. Personally, Ash Wednesday is one of my favorite liturgical […]

Book Reviews (マイブック評) 漁港の肉子ちゃん 西加奈子  幻冬舎文庫 February 13, 2021

肉子ちゃん凄い!キクりん可愛い!そして、西加奈子さん、明るくて真実の物語り、ありがとう。宮城県の石巻市を(震災前に)編集者達と訪れ、そこで漁港に立つ「焼肉屋」を発見した事から、この物語りが生まれたと、あとがきにある。誰でも「焼肉屋」を見つける事はあるけれど、それをこんな素敵なお話しにしてしまうのは、西さんしかいない!本の発売後に、女川市に住む方から西さんに連絡があり、この漁港に立っていた(震災で被害に合い今はない)「焼肉屋」には、本当に肉子ちゃんのような、太陽のように明るい女将が居たと知る。何という事だろう。 肉子ちゃんはかなりの太っちょで、お人好し、小さなことには余り気が回らない。だけど、とんでもなく堂々としている。一瞬一瞬を真実に生きている。直ぐに泣く。声が大きい。ド派手なファッション。そして、その子供、キクりんは、しっかり者で、美人ちゃんだ。この親子を取り巻く、サッサン、マキさん、ゼンジさん、役者揃い。皆んな、必死に生きている。この本を読んで、元気になろう!道を大股で歩こう。大声で楽しく話そう!肉子ちゃん、最高!

Book Reviews (マイブック評) あちらにいる鬼 井上荒野 朝日新聞出版 January 31, 2021

この本を、面白くない!という人はいないでしょう。様々な分野で大きな影響力を持つ瀬戸内寂聴さんと、著者の父、大作家の井上光晴との不倫を書いているのだから。三角関係(!)の2辺を成す、著者のご両親は既に他界。外堀を埋める瀬戸内寂聴さんだけが、ご存命という中で書かれ、瀬戸内さんからも絶賛を受けたこの本である。携帯もインターネットもなかった頃の恋愛は、それはたおやかであった。電話、手紙、そして会いに行く、という段階のみである。文中から、「昭和」の美しさも漂う。鋭い観察力と洞察力で、ご自身の両親の恋愛からセックスライフまで書き込んでおり、さぞや難しいかと思いきや、何かのインタビューで、「・・小説の登場人物なんです。だから、この三人の事実を書いたわけでなくて、私にとっての、この三人の真実を書いたんだなって思います。」と、お答えになっている。又、「執筆中は、クタクタで寿命が縮まった気がしましたが、それだけ本当に、自分が書ける精一杯のことをやりました。」とも、仰っている。この三人の真実も素晴らしいのであるが、日常のさり気ない井上家の食卓風景も、私は大好きである。著者のお母様は作家でもあったが、一流の料理人であり、母であり、妻であった。「あちらにいる鬼」、素晴らしい小説である。

Book Reviews (マイブック評) 楽園のカンヴァス 原田マハ 新潮文庫  January 31, 2021

「楽園のカンヴァス」は、ー芸術への愛を語るーこの一言に尽きるのでは・・ そして、何重にも張り巡らされた伏線を、一つ一つ紐解いていくミステリー術も兼ね備えている。叡智と秘宝、出世欲にライバル心、恋愛に家族愛。人間の持つあらゆる感情を込め、最後は「真の芸術」の前で、涙を流し平伏す。早川織江とテイム・ブラウンの一騎打ち。又、この本の根底には、古典文学にも通じるような、たおやかさと雅が備わっている。原田マハさん、又やってくれましたね。

Japanese Blog (日本語のブログ) ロサンゼルス発 熟年スモジョ「どすこい日誌」ー 大栄翔関、初優勝おめでとうございます。 January 24, 2021

大栄翔関には、心から「おめでとう』と言いたいです。優勝インタビューも衒いがなく、真っ直ぐな性格が出ていて、ホッコリ。時には、作り過ぎた優勝インタビューもある中、お客様に阿る事もなく、受けを狙う訳でもなく、正直な気持ちが相撲ファンの我々の心に、直球で届きました。15日間を通し、力強く、そして安定した相撲を取った大栄翔関。これからの益々の活躍が、本当に楽しみです。そして、ご家族の夢を叶え、親孝行が出来た大栄翔関、本当に嬉しそうでしたね。埼玉のご家族、県民の皆さんにも、ここロサンゼルスから祝福を送ります!おめでとうございます。 物議を醸しながら始まった初場所で、私自身もこんな状況で開催して良いのか・・と批判していたのですが(!)、いざ始まれば、もう相撲の虜に。15日間フルに楽しませて頂きました。もちろん、コロナ感染で部屋ごと休場したところは、本当に気の毒でした。休場の力士達、どんな気持ちで毎日場所をフォローしていたのでしょうか。又その逆に、出稽古が出来ない状況の中、部屋に沢山関取を有している部屋の力士達は有利ですね。それは仕方がない事。そうでない部屋の力士にも、できる範囲での奮起を期待したいです。頑張って!角番を脱出した大関二人には、これをバネに、責任を持って相撲界を牽引して行って欲しいです。二人とも、体に恵まれ、才能に恵まれているんですから・・照ノ富士関には、本当に頭が下がります。春場所での大関復帰も手中に。大関に復帰した姿を是非、我々に見せて下さい。北の富士さんも絶賛する美しい奥様の支えで、「ここまで来られた」と、おっしゃっていました。そんな時の関取の顔は、幸せいっぱい。こちらも、幸せのお裾分けを頂きました。 世代交代が、はっきりした場所でもありました。技能賞受賞の翆富士関、明生関、琴ノ若関、隆の勝関、阿武咲関など。もちろん、ベテラン勢も負けてはいませんよ。今場所を沸かせた「パンの山」の明瀬山関、宝富士関、妙義龍関など。逸ノ城関と志摩の海関の活躍も忘れてはいけませんね。沢山の力士が休場を余儀なくさせられた2021年初場所。とにかく、千秋楽まで無事に終える事が出来て良かったです。批判を受けながらも、コロナ禍への対応を万全にし、果敢に場所開催に踏み切った日本相撲協会には、心より感謝申し上げます。15日間深夜の相撲観戦、スモ友のT子女子と携帯片手にテキスト(日本でのライン)の応酬、大いに楽しみました。文章の締めに、北の富士さんなら、「ここらで頂いた馬刺しでも食って寝よう」とでも、おっしゃるのでしょうね。北の富士さん、舞の海さん、そして素晴らしい解説の親方衆、相撲愛に溢れたNHKのアナウンサーの皆さん、本当にご苦労様でした。それでは、春場所で、お会いしましょう!       2021年初場所、リモート相撲愛好会

Book Reviews (マイブック評) ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 東野圭吾  光文社  (Black Showman and the Murder in an Obscure Town by Keigo Higashino) January 13, 2021

いやいや、東野さん、又やってくれましたね。パンデミックの状況を巧みに組み入れた、大変タイムリーなミステリー小説です。そして、この本、長編なんですよ。いつ、構想を練り、この本を書き始められたのかは定かではないのですが、発売が2020年の11月30日なんですね。という事は、2020年の初頭に中国から始まったコロナ禍が、11ヶ月後にまだ猛威を振るっているであろうと、予想していた訳ですね。そして、コロナ禍で、人命だけでなく暮らしが脅かされ、ビジネスに甚大な被害が及ぶ事も。凄いです。そして、私がLAでこの本を手にした2021年の1月の段階で、パンデミックは更に悪化しています。ワクチンが可能になったとは言え、まだ収束の観測は立っていません。予想が当たって勿論喜ばれているでしょうが、多分複雑な心理でしょうね。 殺人のコアになるトリックや心理的要因は、パンデミックとは関係なく設定されています。女性の結婚に対する願望と落とし罠、「有名になる」という事の意味、郷里の友人達など、誰の身にも降りかかるようなストーリー展開。そこを、東野マジックで、華やかなショーマンが登場。解決していくというものです。惹き込まれて、どどっと読んでしまいました。

Movie Reviews A Movie “Manhattan Murder Mystery (1993) ” by Woody Allen January 11, 2021

Woody Allen has made 8 wonderful films with Diane Keaton. Keaton said ” He just has a mind nobody else”. It is one of them and the movie was filmed in New York! Of Course! Larry Lipton (Woody Allen) and his wife, Carol (Diane Keaton), are adjusting to a new life together with their son away […]

English Blog Bach- Busoni Chaconne from the Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004 January 6, 2021

Chaconne, Italian Ciaccona, forms the fifth and final movement of the Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004. It is one of J. S. Bach’s monumental works (It may not be an appropriate description because there are so many of them), and written for solo violin. The Chaconne is the longest movement of this […]

Book Reviews (マイブック評) 永遠の出口 森絵都 集英社文庫 January 6, 2021

小学校3年生から、高校卒業、そして最後にエピローグとして、30歳になった現実の自分までを、それぞれの時代の一場面を切り取って描き切った、最高に面白い小説。正直にさり気なく、そして時には残酷さと戦い、敗れ、それでも、前に進む私、紀子。誰にでも、「ああ、こんな事私もしてたよなあ・」と思わせる、エピソードが沢山出て来て、つい自分の事の様に、のめりこんでしまう。人生、本当、カッコ良い事ばっかじゃない!最低にグレる中学生の紀子。お父さんの不倫。悪魔女の担任。そして、「夢」の30台が待っているのかなあ・・と、思いきや、今の自分もまだ「夢」の途中。行き先不明の夜行列車に乗車中なのだ。森さんに、今回もまんまと乗せられ、最後まで楽しく読ませて頂きました。読書の楽しみをまだ発見していない方は、是非この本を取ってみては?