Book Reviews (マイブック評)

永い言い訳 西川美和 文春文庫

February 24, 2025

初めて手に取る作家の本です。ミドルエイジ(化石となった言葉でしょうね)の夫婦。ちょっと成功している人気作家の夫と、美容院経営の妻。夫は、忙しく「人気作家」をやり、若い編集者と浮気。妻は、離れてしまった二人の心を憂いつつ、自分から近づいて行こうとはしない。そんなありきたりの日常が、突然のバス事故で妻を連れ去り、180度変わる。しっかりものであった妻が、夫の日常から消えるのだ。紆余曲折し、夫の「妻探し」、そして擬似家族体験が始まる。「素敵」な擬似家族体験。わー、良いなあ・・と読者を涙目にさせつつ、そこは作家の妙。涙が渇かないうちに、そんなの幻想だよ!、と我々を現実に戻らせる。そして、最後の一行で、本当の涙がこぼれる。テンポ良し、文章のキレ良し。この作家、又読んでみます。