Book Reviews (マイブック評)

古くてあたらしい仕事 島田潤一郎 新潮文庫

August 28, 2024

この本は、日本滞在中に必ず訪れる「青山ブックセンター」で、私の目に留まった本。本好きには、たまらないエッセイ集ではないだろうか。「ひとり出版社」という言葉があるのを、この本で知った。島田さんの経営する会社、「夏葉社」がまさにそれで、島田さんは、会社を立ち上げた当初から、一人で全てをこなしている。ご自分の作りたい本、ご自分が信じる本作り。大きなビジネスではないけれど、「仕事」として、自分と家族を養う収入源というコンセプトだ。とても緻密でないと、出来ないと思う。そして、心配りが出来る事。そして、その心配り、優しさに、重きをおける事。「本を読む」意義について、島田さんは随分と紙面を割いて語っていらっしゃるが、私の気持ちとして、それの全てに同意する事はない。でも、おっしゃっている事は、とても分かる。現代のスピード感覚、ネット社会で、我々は必要のないところで神経をすり減らし、それに気づく時間も持てぬまま、時代の波に押し流され、とても疲れている。島田さんのご本の中で、本を読む、本を作ることだけでなく、生きる指針の端っこを見つけられるかもしれない。

ふと、アメリカで、夏葉社のような本作りはあるのかなあ、と思った。何故かと言えば、とても日本的で、そして日本人にあった趣きに感じたからだ。