Book Reviews (マイブック評)

文豪お墓参り記 山崎ナオコーラ 文春文庫

August 13, 2023

これを読みながら、少し前にパリの墓地で、音楽家の墓碑を巡ったことを思い出した。ええー!こんなに有名な作曲家が・・という風に、結構寂れて朽ち果ててしまったお墓も少なくなかった。園内は、ほとんど誰も歩いていなかったが、演奏旅行中の夫と二人、興奮しながら、一人一人大事にご挨拶をして廻った。結構な数の有名音楽家が葬られているのだ。もしご興味があれば、是非。

閑話休題。そう、この本は日本の文豪お墓まいりでした。私の大好きな、ナオコーラさんが、時には御夫君と、時には母君と、名だたる文豪のお墓まいりをして、その町の美味しい物を食するのが、テーマである。彼女の文豪への思いが、墓参日記と共に、綴られている。日本の風物詩としても、素敵な文章である。私の父方は、青山墓地、母方は浅草の墓地で、小さい頃には、良く両親、もしくは、祖母に連れられて、墓参をしたものである。不思議にその時々の風景が、結構鮮明に心の中に記録されている。お墓を洗ったり、お酒を撒いたり、お墓の周囲を掃き清めたり、とても日本らしい美しい伝統ではないかと思う。西洋には日本の「お盆」のような考え方はないので、亡き人を忍んで集まる、という様なことはない。私も夫の父が亡くなった時に、とても不思議な気持ちがしたものだ。宗教が違うから・・、という理由だけではないと思う。