Book Reviews (マイブック評)

女たちよ! 伊丹十三 新潮文庫

October 12, 2022

私の成長過程で何故かこの本に巡り会う事がなく、昭和43年刊行の本を漸く手にしたという訳です。伊丹十三さんというのは、私が考えていたよりずーっと、巨大だったことを心底理解しました。昭和の知識人で文化人、独善的で洒落者、カッコ良くハイカラ。国内旅行だってままならなかった頃、颯爽とヨーロッパを語る。それが又、堂に入ってるんだなあ(と伊丹調になる!)。昭和の40年代前半に、女性の服装にもキチンと意見が言えるというのは、すごいの一言。又、伊丹さんの食に関する記述は、興味、愛、食いしん坊と混ざり合い、大変に面白い。読者に、「ああー、この食べ物を是非口に入れてみたい」と思わせるのです。ネット社会でグチャグチャになっている今、アナログ感いっぱいで、とても新鮮な書物ですよ。是非、読んでみてください。一家に一冊、必須です。

ここからは私の昭和論。私は、父方の祖母に連れられ、子供の頃渋谷から銀座線に乗り、浅草に買い物にいく事がしばしばあったんですね。祖母は、木目込み人形の先生をしていて、その材料を調達に、浅草のお店に定期的に足を運んでいた訳です。あの、駅に着く前に、地下鉄の電灯が消える頃のお話です。そして、その帰りに、渋谷の東横デパートの最上階の食堂でランチをご馳走になる、というのが、2人のパターンでした。私はもうその時間が待ちきれなかった!いつも、スパゲッテイ・ミートソースを所望したものです。口の周りをベタベタにしながら、幸福の絶頂に浸ったのを、この本を読んでいて思い出しました。そして、渋谷からほど遠くない所にある祖父母の家に、夏休みに長期滞在して、縁側に座ったり、近所の縁日に行ったりした事も、同時に思い出しました。お金に変える事の出来ない、大切な思い出を私の心に残してくれた祖父母に、感謝、感謝。