Book Reviews (マイブック評)

ユートピア 湊かなえ  集英社 9/16/19

September 16, 2019

売れっ子作家の力を見る、大変な力作。「善意は悪意より恐ろしい。」と本の帯のところに書いてあるけど、そんな単純な事ではない本書です。そして、子供を侮るな!ということですね。そしてこんな一文もある「地に足を着けた大半の人たちは、ユートピアなどどこにも存在しないことを知っている。ユートピアを求める人は、自分の不運を土地のせいにして、ここではないどこかを探しているだけだ。永遠にさまよい続けていればいい。」心の中だけは誰にも見えない人間の利点を生かし、誰でも、表の顔と裏の顔を、上手に使い分ける。その中で、楽しいことも、涙することも、経験する。皆、少しずつの秘密を持ち、毎日を生きる。ユートピアがあるにしても、ないにしても・・偶然に、先日あるテレビ局の放送で、地方に移住する人たちを取材していたのを観た。完璧なユートピアを求める人もいたし、現実的にユートピアと向き合おうとする人もいた。皆誰でも、それぞれの「ユートピア」があると思う。