Book Reviews 2008 – 2012

2012

椿山課長の七日間 浅田次郎  朝日新聞社 12/25/12
この本も、「再読」組の一冊。人生の目的に迫る、これも名作だ。人間の一生は、短いことも、とても長いことも、いろいろあるし、職業も様々、お金の有るなし、顔かたち、すべてにおいて、一人一人全く違う。しかしその根底に流れる、ヒューマニテイとでもいったら良いのか、生き方の軸は、自分で決められる。そして、その軸が、「死」と対峙したときに、前面に押し出される、というのが、この本のテーマではないだろうか。自分の生き方を見直すことが出来る、素晴らしい一冊だと思う。新年を目前に、新たな年をいかに迎えるか、椿山課長と一緒に考えてみるのも、素晴らしいと思う。

赤い指・手紙・容疑者Xの献身  東野圭吾  12/20/12
この3冊とも以前に読んだことがあるのだけど、再び「東野願望」にかられて、手に取った。「手紙」は既に、不朽の名作となっているし、確か「容疑者Xの献身」では、東野さん直木賞も取られているはず。「赤い指」は、受賞後の、第一作として、さすがだ!と皆を唸らせた作品だ。今更、何を・・・・と言われるかもしれない。でも、この3作、すごいのだ。文章の上手さ、ストーリーの構築性などへの賞賛を超えた、芸術性とでも言うのだろうか。人間観察のするどさ、深い愛情、とっつきやすく、共感が持て、涙を誘う。発表する作品ごとに、新たな境地を開き、読者を厭きさせない。もし、まだ東野さんのご本を読んだことがないのなら、是非この3作からを、お薦めする。もし既に読んだことがある方も、もう一度手に取って、堪能するのも素敵だと思う。

ひそやかな花園  角田光代  毎日新聞社  12/3/12
非常に難しい、センシテイブな、不妊治療と体外受精を扱ったお話。精子ドナーによっての、体外受精がもたらす、夫婦のゆがみ。それを乗り越えられなかった夫婦の姿。そうして誕生した子供たちの将来。子供たちの、見たことのない父親探し。これは、お話だけど、実際に同じ立場にいる人達が、世界に沢山いることを考えると、とても勇気のいる、テーマだと思う。アメリカの社会では、血を分けた親子というのと、アダプトした子供、もしくは、結婚・再婚によって出来た新たな親子関係が、全く同等に扱われていると、思う。少なくとも、それが、前提だ。そして、離婚をしても、はっきりと、親子関係は続く。日本のように、子供が家に所属しないし、母親だけ・父親だけに、所属しない。だから、この同じ問題でも、アメリカで取り扱ったなら、随分と違う展開になるだろうし、それぞれの国で、反応は違うだろう。でも、角田さん、最後に光を見出だし、明るい最後にしている。まあ、新聞連載小説なのだから、明るさがなくては、難しいかもね。ただ、最初のきっかけになる、森の家での集まりは、ちょっと無理があるような気がする。それでなくても、難しい状況にいる数組の夫婦が、こんなに明るく、集まって、夏を謳歌出来るのだろうか。日本的に考えて、夫が同意するというのも、不思議だし、そういう感情を無視して、妻が勝手に楽しむ場を作るというのも、解せない気が、私はする。

刑事の子  宮部みゆき 光文社  11/30/12
ちょっと可愛い、子供刑事の活躍。この設定って、いつの時代にもほのぼのするし、ドロドロした殺人も、子供の登場で何故か、血みどろさが薄れるって、思いませんか?という訳で、中学生の順少年が、彼の仲間と一緒になって、大人顔負けの名探偵振り。そこに絡まって、誠実なお手伝いさんも登場。大事な役どころを押さえ、事件解明に乗り出す。次々に新たな人物が出てきて、はたまた複雑、何事件か、というと。。。。とこの辺で、あらすじをお話しするのは、中断。軽く読める、娯楽・推理小説です。アニメ調の表紙カバーのイラストが、こういう本なんだぞ!と、宣言している感じですね。

新参者  東野圭吾   講談社       11/26/12
下町を物語のベースに選び、下町情緒、家族の愛、日本人的な間接的愛情表現、を、上手く絡ませながら、殺人事件を解いていく。加賀警部補の、すごい頭脳と、繊細な心配り、人間的な魅力、そして、ハンサムっぽい風貌。すべてが、とっても良いバランス。これも、ぐぐーーんと読者を惹きつけてしまう。東野さんは、本当に大天才だ。私も日本を離れて長いけれど、この本を読みながら、下町の風情を、心置きなく思い起こさせてもらった。ああ、そうだ、こういう風景が、今でも残っているのだなあ、って。この本も、とても面白いよ!

パラドックス13  東野圭吾  毎日新聞社          11/23/12
非現実の中に、現実を組み込んだ、複雑なストーリー?、と思い気や、これが、逆に物語の本質は、シンプルなのだ。東野さんの天才肌が、存分に発揮。そして、私がいつも感じている、東野さんの描く「深い愛」。素晴らしいストーリーになっている。冒険小説に欠かせない、ヒーローの活躍、統率力、そして皆の犠牲になり死んでいく。日常の些細な生活と、東京破壊という全くかけ離れた状況を、上手く操りながら、読者を強く引っ張っていく。そして、最後に、どーーーんと、「ああこういう事だったのね。」と、答えを突きつけられる。東野さんは、それぞれの本で新境地を開き、一ヶ所に留まらない。この本は、スピルバーグばりの大冒険でありながら、繊細な日本人的の内面を的確に描いている。是非お薦め!

桐野夏生   インIN  集英社   11/19/12
これは、とんでもない恋愛小説である。切なく、限りなく美しい。小説家のまわりに起こる、様々な物語を、小説内で作られた、小説を探るという姿勢で、お話が進む。そして、日本語の音読みの面白さを生かし、「いん」に当たる漢字がそれぞれの章をかたどる。深い構築性に裏づけされ、芯のぶれない、力強い、恋愛小説になっている。新しい登場人物が出てくる度に、物語が一層面白くなる。是非、お読み下され!

遠藤周作  沈黙  新潮社   10/25/12
日本のキリシタンの歴史を、史実に基づいて小説化した、非常に深い本だ。この本も随分昔に読んで、そのままになっていたので、改めて読んでみた。私自身歳を重ねたこともあるし、キリスト教に対する考え方が深くなったこともあると思うが、読後、かなり”ずしん”と来た。キリシタンの歴史というのは、私がここ15年くらい行ってきた日本の音楽の歴史にも、かなり通ずるのである。ポルトガル人の船乗りが、嵐に襲われて日本の島に漂流してきたのが、16世紀の中ごろで、それが文献上、日本人がみた最初の西洋人となっている。その後、宣教師達が日本に渡り、それに伴って西洋音楽も日本に入ってきた。そして、豊臣、徳川と続く、キリスト教禁止令となり、当初非常に成功していた布教活動も根を絶たれ、その後の辛酸なキリシタンの歴史となる。宣教師として、高い意思を持って来日するも、歴史の渦に巻き込まれ、葛藤の末、「転ぶこと」を余儀なくされた宣教師達を、容赦なく我々の前に突きつける。何ができたのか。。。この本は、我々に答えを出していない。我々に考えさせる。

遠藤周作  私のイエス  祥伝社   10/20/12
日本人の視点で捉えた、聖書入門である。久しぶりに読んでみて、大変興味深かった。又、35年以上前に書かれた本なので、その時代背景もあると思う。インターネットで、世界の情報、知識が瞬く間に入り、それが当然となっている現在。好景気、バブル崩壊、世界経済の悪化、日本の国力の低下などを経て、日本人の宗教観は、違ってきているかもしれない。20年以上日本を離れている私にとっての、感想だけど。キリスト教の歴史や、聖書を紐解いたことのない方にとって、この本はとても分かりやすいし、日本人に優しい。キリスト教に興味がなくても、どんな宗教なのかを知ることは悪くない。是非、お読み下さい。

小川洋子  猫を抱いて象と泳ぐ   文芸春秋 10/5/12
何て不思議な小説なんだろうーーー。こんなお話、今までに読んだことがない気持ち。しいて言うなら、アリスの国とか、そういうお伽噺かなあ。小川さんの創造性に、感服。現実には、全く存在しない状況の中で、とんでもなく人間の中身を描く。悲しくて、美しい。ファンタジーで、泣ける。そんな本に触れたかったら、是非この本を手にとって見て下さい。

角田光代    夜をゆく飛行機   中央公論新社      9/11/12
「ツリーハウス」に似た、大家族ゴタゴタ物語。何だかんだと言っても、本音でぶつかり、本気で喧嘩して、それでいて、家族の強い絆で結ばれている、谷島一家。谷島家の正反対の家庭に育った私としては、ただただ「本当にこんな家、あるのかなあーー」と思う側から、大きな憧れも抱く。雰囲気が、日本的。特に海外(どでかいアメリカ)在住の私には、きゅーんとさせる、下町風景がとっても良い。ざわざわ感が良い。売れっ子の角田さん。「売れっ子」たる所以が本当に分かります。

東野圭吾   幻夜  集英社文庫             9/5/12
超大長編!広告にも、「白夜」に続くーーとなっているけれど、まさにその通りです。もちろんミステリーだから、謎に迫る訳なのだけど、その謎が一昔前の推理小説と違って、「密室」とか、「時刻表の裏をかく」とか、「アリバイのすきを衝く」とかじゃなくて、何ていうか、結構見え見えの謎であるのが、大変面白い!それに、心理戦法を駆使しているから、数倍面白くなる。東野さんの大物ぶりを発揮する、すごい小説です。長編に虜になると、時間がーーーー。という訳で、私もどっぷりとハマリ、ピアノの練習をおろそかにしてしまったのです。

角田光代  薄闇シルエット   角川書店                      8/31/12
角田さんの「3月の招待状」とちょっと似た題材かな。やっぱり、私も自分が何者なのか、という事にしっかり気が付くまでに、大分時間がかかったもんね。主人公のハナちゃんと同様です。時流に乗る、とか、かっこ良い人の真似をする、とか、雑誌に載っている素敵なモデルみたいになりたい、とか、あるけれど、それって、結局どこかで行き詰るよね!影響受けたり、勉強するのとは、ちょっと訳が違うでしょ。と、まあ、そういう経緯を経て、ハナちゃんが自分に自信持っていけるようになるまでの、お話。角田さんのストーリー・テラーの才能に改めて、脱帽です。だって、面白いからね!

小川洋子  ニーナの行進   中央公論社 8/25/12
2005年に新聞連載された、小説。優しくて、穏やか。ああ、こんな小説が毎日読む新聞に載っていたら、朝が爽快になるなあ、と思った。そして、寺田順三さんの、挿絵がとても美しい。ファンタジー、そしてとても非現実的なんだけど、とても共感できる、不思議な小説です。そして、こういうお話って、最後の締めくくりが難しいと思うのだけど、さらっと、とても良く終わっていると思う。是非、読んでみてください。

角田光代  ロック母  講談社 8/20/12
角田さんの非常に若い時から、最近の作品をまとめたもので、とてもすごい短編集です。最初に出てくる作品「ゆうべの神様」は、彼女が25歳のときのもの。才能っていうのは、自ずと開花するものなのか、この若さで、大変思いテーマに臨んでいる。そして、書ききっている。「ロック母」は13年後の、38歳の時のもので、テーマも全く違うし、語り口も違う。それぞれの短編が、方向性を別にしながらも、何となく、繫がっているような感じも。とにかく、お読み下さい!

角田光代  ツリーハウス   文芸春秋社   8/17/12
家族の中の小さい世界を描いているのだが、このお話はとてつもなく、デカイ。それぞれの章に出てくる、背景が違うので、あたかも映像を見ているような感じだった。時には、新宿の脂ぎった中華料理店(この場面が一番多いけど)、広大な中国の景色、戦時中に中国から帰国した船、戦前の貧しいの農家の暮らし、登場人物の表情までしっかり頭の中で見える。この本って、映画化、もしくはテレビドラマ化されたのだろうか。感動の一冊です。何度、途中で泣いたことか。とても魅力的な家族の姿を描きつつも、人間の根源に迫る、鋭いテーマを描いている。世間的には不良だったり、ぐーたらだったりする人々が、ものすごく真剣に生きている。安っぽい愛情でなない、本物の強くてしっかりした「愛」がある。

角田光代   3月の招待状   集英社  8/15/12
文章が旨い。とっても旨い。登場人物達が、紙面を破って出て来そうなくらい、元気で、生き生きしている。登場人物の名前が、どれも、ピッタリ。大学時代の仲良しグループが、卒業から10年くらい経ったても、強固な絆で結ばれ、その中で繰り広げる、すったもんだのお話だ。恋愛あり、離婚あり、結婚あり、同窓会あり、飲み会しょっちゅう(!)、何かある度、皆で集まり、議論を戦わす。その周辺にいる、夫であり、恋人であり、彼女が、否応なしに、仲良しグループに翻弄されていく。でも、最後は、「大学学食の乗り」から、卒業していくというもの。面白くて、途中でやめられない。本当にーーー。私も、日本にいた時は、中学(女子校)、高校(音楽高校)、大学(音楽大学)それぞれに、仲良しグループがいて、他校の友人もいれて、それはそれは楽しい毎日だった。でもそれって、どこかで自然に形を変え、大人(!)の生活になっていった。過去には戻れないのだ。

東野圭吾   プラチナデータ   幻冬舎   8/14/12
とても恐ろしい話だし、何か現実のような気もしてしまう。遺伝子、DNAで犯罪をコントロール、つまり国民一人一人のデータをインプットしてしまう、というお話。そして、大事なのが、この「プラチナ」の部分だ。真の平等なんて有り得ない、けど不平等を生み出す必然性はない。遺伝子で犯罪検挙率を上げるというところまでは良いのだが、その先に落とし穴あり。政府のトップが、自分達の周辺だけ「特別」にして、どんな犯罪を家族の中で起こしても、データから判定できないように、システムを作ったのだ。そして、それを逆手に取るもの、そのプラチナデータシステムを壊すソフトの開発され、それをめぐっての殺人、2重人格者、美女(これはミステリーには必須アイテムだ!)など、様々に絡み合い、お話を引っ張っていく。社会風刺ミステリー傑作!

東野圭吾  麒麟の翼    講談社    8/13/12
以前から書いているように、長年東野さんの大ファンです。一流の演奏家にしても、一流の作曲家の曲にしても、そして一流の作家の書く作品にしても、共通して言えるのは、てらいがない、自然の流れ、無理がない、そして、その芸術から生み出されるものは、私達に深い感動と感銘をもたらすという事だ。つまり、無理やりに構築されたものでないということだろう。それはもちろんご本人達の努力の継続なのだが、やはり「才能」である。そして、その才能がどうやって幼少時からはぐくまれ、開花するかにも、かかっている。才能だけでは、駄目なのだ。と、まあ前書きが長くなったが、この本も東野さんの生み出した加賀恭一郎の大傑作のひとつであろう。「新参者」のテレビドラマで、阿部寛が演じた加賀恭一郎が重なり、本を読んでいる間も、どのイメージから抜け出せなかった。悔しい!映画化、テレビ化された小説は素晴らしいのだが、いったんそれを見てしまうと、その映像に大きく影響される弊害がある。まあ、仕方ない。東野さんは何と言っても、売れっ子だからね!という訳で、読者を最後までどどーーっと、引っ張っていく、人間ドラマ・スリラーである。

Artur Schnabel      “My Life and Music”        Dover Publications       8/8/12
This book is so important that I will write the review in my blog. Please read it there.

Menaham Pressler: Artistry in Piano Teaching     William Brown      Indiana University Press     7/9/12
It is a great book to learn Pressler’s life and teaching. Also it is interesting to read about the development of the Music Department at Indiana University, which is one of the greatest music schools in the world, from 1950′s to the current time. Mr. Pressler has been keeping the performing career in both solo and chamber music, and teaching equally. Once in Houston, TX, I heard his concerts of solo recital and Beaux Arts Trio concerts back to back. Both concerts were amazing. He is a year shy to 90, and still very active performing and teaching. We can see his secret of long and fruitful life in this book. I really like his exercises which he gives to his students every year. I have already given this exercise to my student! Almost the half of this book is dedicated to Mr. Pressler’s instruction for major piano pieces(measure by measure suggestion and instruction). The author is his students at IU, and he collected the comments from his former students which are fun to read.

水の翼  小池真理子   幻冬舎     7/7/12
耽美を書かせたら、小池さんに勝る人は、現代には中々いないのではーー。谷崎の世界も思い出す(最近読んでいないけれど)。狭い空間で広げられる、男女の葛藤だ。古い日本家屋の、磨きこまれた廊下、居心地の良い居間、なまめかしい寝間。そんなに大きくはないけれど、適度な広さがあって、縁側から庭に通じる空間がある。この家が、このお話のほとんどすべての舞台だ。登場人物もそんなに多くはいない。男女の心と心が織り成す、美しい物語が、仙台の町で静かに流れる。そして、劇的な最後を迎える。この本を読んでいる時間、とことん耽美に浸った。

妊娠カレンダー  小川洋子   文芸春秋     7/4/12
パステル調のような、墨絵のような、美しくも、醜くもある、小川ワールドだ。不思議な思考回路。それでいて、突然とても現実的になる。お隣で起こっている出来事のようにも、全くの頭の中の空想にも、感じられる。優しさの中に、本質を突いた、素晴らしい小説だ。

ひとかげ よしもとばなな   幻冬舎     7/1/12
例えば、アメリカンコーヒー(日本にしかない飲み物だけど)を作るのに、普通にコーヒーを入れて薄める。味噌汁が塩辛いといって、お湯で薄める。この「ひとかげ」もそんな感じ。「とかげ」という小説を読んだことがなかったので、後半についていたオリジナルのお話「とかげ」から読んだ。確かに、この「とかげ」、魅力的で素敵である。そして、作者言うところの、改変版の「ひとかげ」を読む。まさに、薄めた、水増し感が否めない。作者には申し訳ないけれど、途中まで読んでそれ以上、読む気になれなかった。

空中ブランコ  奥田英郎  文芸春秋  7/1/12
これは、もしかして、伊良部一郎シリーズの最初ではなかろうか。何とも洒落ていて、それでいて、人間生活の核心を突く、現代に生きる我々のバイブルである。蓄積する我々の問題に、伊良部流のアプローチで向かい、自然に肩の力が抜け、大事な点に気づかせてくれる。決して押し付けがましくなく、ユーモアたっぷり。現実に、伊良部先生は存在しないけれど、我々の心の中に、彼の人間像を持つことは出来る。そして、問題が噴出した時、その扉を開け、彼の生き方をそっと見てみる。きっと、我々を問題の原点に連れていってくれ、「大事な事」を教えてくれるはずだ。

愛ある追跡  藤田宣永 文芸春秋  6/25/12
連作ミステリーと、帯に書いてあるが、ミステリーというカテゴリーにも、連作という枠にも、何だか当てはまらない、もやもやとしたお話だ。藤田さんのご本は通常とても感動を持って読ませて頂くのだが、この本は、芯がぶれている感じで、満足感が味わえなかった。何が言いたいのかーー。そもそも、何がミステリーの発端なのか。そこをぼかしてみるというのが、手法なのだろうが、読者に訴えてくるものが、希薄な気がした。

まぶた(新潮社)   偶然の祝福(角川文庫)  小川洋子  6/22/12
とても詩的、文章がきれいで、澄んでいる。透明感があると言っても過言ではない。頭でっかちになりそうな、文体なんだけれど、そこが、そうはならないのが小川さん。短編でいて、そこはかとなく、繫がっている風でもある。人間描写が、不思議ーーなんだけど、とても的を得ている。素敵な文章に出会いたかったら、この作者の作品をどうぞ。

ファイアボール・ブルース - 逃亡 桐野夏生  集英社 6/20/12
桐野さん、カッコ良い!女子プロレスの世界を描いた、会心作。女子が女子にあこがれる、その強さに惹かれる、現実とは違うプロレスの世界だ。女子プロの人間関係に加え、ミステリーも組み込み、絶妙なストーリーに仕立てている。もう絶対に終わりのページが来るまで、本から離れられない!!お薦めの一冊。

淋しい狩人   宮部みゆき 新潮社  6/15/12
短編集だが、それぞれのお話が、繋がっている形式の本。宮部さんの文才の一つである、文章の美しさ、そして登場人物に対する滅茶苦茶な優しさが、如実に出てくる本でもある。ちょっと頑固なおじいちゃんと、元気全開の高校生の孫息子が主人公で、おじいちゃんのやっている古本屋を中心に、いろいろな事件が巻き起こるのだ。そして、一般的なミステリー方式でなく、問題の解決の仕方が、とてもヒューマンなのである。登場人物達が紙面をはみ出るくらい、活発で元気。自己主張がしっかりしている。そして、一つ一つのお話に沸き起こる課題が、社会への問題提起的な部分も、完全にあると思う。宮部さんファンなら、もしくは、全くそうでなくても、読む価値のある本ですよ!

I’m sorry, Mama.   桐野夏生   集英社6/7/12
怖くて、でもとっても悲しい本ですね。人間の本質を突き詰めていくと、主人公のアイ子のようになるのかも。本質と言うより、本能かな??滅茶苦茶に最悪の状況で生を受けたアイ子の、生涯の話である。容姿から、環境から、家族から、本当にすべてが、最悪なアイ子。アイ子は、ある意味、「悪魔の子」とも言える。その彼女が引き起こす、悪魔旋風に、周囲が次々に巻き込まれ、いたぶられ、時には殺され、人生をぐちゃぐちゃにされる。吐き気さえ催してしまう程の、「悪」である。桐野さんの書かれる小説は、毎回(私が読む限り)強いインパクトを持つ。あなたも、強くないと、この小説を読んでいる最中に、アイ子にやられてしまうかもーーー。

木暮写真館     宮部みゆき   講談社   5/25/12
大大長編である。第4話からなるのだが、それぞれが大概に長いのだ。長い、長いとばかり言っていられないですね!これは、幽霊の話。心霊写真の話。そして、そこから、ある家族の話を描いていく。もちろん、その家族を囲む人間関係も。何が一番好きだったかと言うと、宮部さんの美しい言葉の使い方、洒落た言いまわしかなあ。とっても優しくて、ほんわかさせられる文章だ。ストーリーは、心霊写真から来るものなので、個人的には信じられず、かと言って、サイエンス・フィクションという訳でもないので、そこのところが、心に響くという感じにはいかなかった。そして、場面場面の描写が細かく、長く続ので、この点にも、(そこがポイントなのだろうけれど)、個人的にはピタッと来ることはなかった。

プリズンホテル  浅田次郎  徳間書店 5/11/12
浅田さんの、ユーモアと話の構築性を、世に示したプリズンホテルシリーズの最終版。いやはや、プリズンホテルの面々はすごい。そして、寅さん映画のように、正に下町人情ものなのだ。主人公の小説家は、乱暴もので躁鬱だけど、最後は育ての母親を求めて、取り乱す。取り乱しつつ、自分の本質を見つけていく。音楽もそうなのだけど、私は物語/音楽の情景が、目に浮かぶのが好き。本を読みながら、音楽を弾き/聴きながら、空想にふけり、登場人物達や風景を想像するのが楽しい。この本も、山間の自然の中にある、キンピカホテルでの、人間模様が、手に取るようだ。浅田さんは、何でも書ける小説家で、その一冊一冊が、完成度がとても高く、いつも本当に感服してしまう。

無理   奥田英朗   文芸春秋         5/8/12
無理はするな、と言うのか、無理と思っても気を入れてやれ!と言っているのか、この世の中、無理だらけ、というのかーーー。これは、多分「最悪」の続編っぽい。無理という言葉は大変興味深い。だって、「理」が無いというのだからね。しかし、我々は、無理という言葉を、そんなに深い意味では日常使わない。「そんなの無理に決まってるジャン!」とか、「無理は体に毒ーー」とか。じゃあ「理」がないというのは、無法地帯なのか??全く、混乱させる本のタイトルだ。悪循環という生き方を絵に描いたような数人が、「最悪」と同様、最後に同じ場面に出くわす。私も少し前までは、アメリカの地方には、犯罪なんて存在しない、とアホな考えを持っていたのだ。何せ、広大な土地が広がり、小さな集落に犯罪という絵は相応しくないからだ。が、しかし、何もする事がないと、人間おとなしくはしていられない。この「無理」も、日本の地方都市の実態を強くえぐり、人間の本質をこれでもか、これでもか、とさらけ出す。読んでてちょっと吐き気がしそうになるけれど、私も人間の一員。全くごもっともな事だらけなのである。

サウスバウンド  奥田英朗    角川書店        5/4/12
多分読者すべてが、上原一郎のファンになるのだ!作家ってのは、全くすごい話を考えるもので、その頭の構造、日常って、どうなってんの?と思ってしまう。この元過激派のお父さんの、「世間」に迎合しない生き方に、強く惹かれてしまう現代人は大勢いると思う。本当に魅力的な「男」である。そのハチャメチャに、家族も周囲も翻弄され、反発し、問題を多々起こし、それでもなおかつ、一郎の「どでかさ」に引き込まれてしまうのだ。巨体で大声、と余りに分かりやすい体躯。自分の信じたことしか、しない。この大長編、読者を完全虜にし、一切の外界から声を遮断し、本の世界に没頭させてしまう、奥田さんという作家。本当に頭が下がります。お薦めの、冒険ロマン大長編です!

凶気の桜    ヒキタクニオ     新潮社       4/30/12
任侠の世界と、若者の生きる渋谷の物語である。若さの狂気の中で、そのエネルギーとパワーを発散させる、3人組。そこに、からんでくるヤクザの面々。容赦のない暴力が、飛び交う。とてつもない悪がき軍団が、ヤクザエリートに、取り込まれ、利用され、ずたずたにされる。テンポも良く、暴力で頭がぐらぐらしても私自身、物語から、離れられなかった。それにしても、日本では最近やくざ物が、流行っているのかなあ。

最悪   奥田英朗    講談社   4/25/12
胃がきりきりするくらい、もうどうしてわかんないのーー!!と、登場人物たちに叫んでしまう本である。はっきり物が言えず、その上特上の見栄っ張りで、自分が何なのかが、てんで分かっていない。それでいて、ちょっとお人好し。純粋という意味ではなく、人を簡単に信じてしまったり、つまり何から何まで「最悪」なのである。メインの3人はそれぞれに背負うものは違えど、状況としてはとっても似ていて、全く違う世界で生きていたものの、何の力か、次第に引き寄せられていく。日本人には裂けて通れない、日本人性なのである。

イン・ザ・プール   奥田英朗  文芸春秋  4/22/12
これは、私にとって伊良部一郎シリーズの第2弾!前回の「町長選挙」が大物達の問題にスポットを当てていたのに反し、こちらは、完全な「庶民」版だ。女優を目指すコンパニオンガールは、完全な妄想狂でストーカーを頭の中で作り出す、他人におもねて自分の意見が言えない男性はその怒りが反映し常に勃起してしまう、ケータイ中毒の高校生、強迫神経症のルポライター、ストレスから水泳にのめりこみ中毒化する会社員。その誰もが私達でもある。読みながら、笑い、ふんふんとうなずき、伊良部一郎医師の診察室にいる気持ちである。わあーーー、私も伊良部一郎医師とお知り合いになってみたいものである。

真夜中のマーチ  奥田英朗   集英社    4/21/12
これも、奥田英郎さんのご本です。てんぷくトリオって、一昔前にいたの覚えているかなあーー。この本に登場する3人組、ヨコケン、クロチェ、ミタゾウは、まさにそれだ。このトリオの周りに、フルテツ、アキラ、タケシ、ストローベリー(犬)、白鳥、トイツなど、魅力ある配役になっている。皆、本のページから飛び出して来そうなほど、生き生きしている。でも、作者は、この魅力ある役者陣に、決してベタベタしない。勝手にやれ!、という風情なのだ。お話自体は、ミステリーともサスペンスとも言えるのだろうけれど、3人組の冒険談だ。それも、とっても愉快で、豪快な。

町長選挙  奥田英朗    文芸春秋      4/19/12
いやはや、全くすごい発想である。伊良部一郎シリーズ!このシリーズのパワーを知らずにこの本を手に取った私は、その魅力に完全に取り込まれてしまったーー。それぞれの短編に登場する人物は、皆問題を抱え、この伊良部医師を訪れるのだ。その問題がまさに、我々自身の問題でもある。この本に登場する問題人物は、皆「大物」で「有名人」であるけれど、伊良部医師の前で、最初はバカにしているも、次第に幼児化していき、その問題の本質を見つけていく。そして、問題を自ら乗り越え、本来の自分に戻っていく。この伊良部医師、一見「何じゃ!こいつ!」という風貌、応対なのだが、実に人生の本質に導く、凄腕医師。自分を登場人物に同一化してしまうよ!

ガール  奥田英朗  講談社 4/16/12
30代女性への、応援歌である。そして、深ーーーーい愛情に溢れている。5つの短編から成っていて、つまりそこに5人の30代女性が登場するのだけど、皆な一生懸命に生きているのである。それも、真っ直ぐに。読んでいる私達も、がんばれ!良いぞ!と、思わず、独り言をつぶやいてしまう。そして、困難があるものの、それを乗り越え、女同士の友情を深めていく。最後は、ハッピーエンド。嬉しくなる、何だか、スキップしたくなる、一冊だ。

べりィ・タルト  ヒキタクニオ   文芸春秋  4/13
やくざ調の口ぶりや態度、服装が目に浮かぶような、作品である。ヒキタさん、もしかして、こういう世界に身をおいていた事があるのではーー、と思わせる。そして、こういう事を一読者(私のこと)がいうと、きっと、ほくそ笑むのが、この作者なのであろうと、私は勝手に想像しているのです!超美少女のリンちゃんと、それを囲む様々な人達。しかし、出てくる登場人物の男性群がカッコ良すぎる!スーツの着こなし、筋肉の付き方など、ぞっこん惚れてしまうのである。

カッコウの卵は誰のもの  東野圭吾  光文社  4/11
二点・三点、状況と人間関係が変化していく。その中で、ある意味人間の根本とも言える、血のつながりと、親子関係を描いていく。そこに、犯罪あり、サスペンスあり、といつもながら、推理小説の枠を大きく超えた東野さんのご本に感嘆する。又、人間の「才能」についての定義。これは、我々音楽家にも当てはまり、やはり成功の鍵は、果てしない努力に尽きるのである。もっと言えば、努力することを、楽しめる人かなあ?私の記憶が正しければ、東野さん過去にも、スキーに関する(この時はジャンプ競技だったような気がするけど)ご本があったような気がーーー。何はともあれ、東野さんは、一冊一冊、深いご本を発表されて、毎回手に取るのが楽しみなのである。

Menotti: A Biography             John Gruen            MacMillan       4/9/12
Menotti is one of most celebrated opera composers in 20th century, and many areas from his operas are still sang frequently at recitals. I love his operas. I was curious about the relationship between Barber and Menotti. How did those great composers share their lives together?? They met at Curtis, and kept the close relationship for a long time. They collaborated for occasions, and produced amazing works. With this book I learned many different aspects of Menotti, social butterfly, solitude, Christianism, relationship to others, an attitude toward composing—. If you like his music it is an interesting book to follow Menotti’s life. Definitely he was an old fashioned man with fascinating and charming personality.

角  ヒキタクニオ  光文社      3/30/12
この何とも不思議な題材を、キラキラした作品にしているヒキタさん。どんな方なんでしょうねーーー。とてもチャーミングなお話ですよ。これは、作家が書く、文筆業と出版社の物語です。作家はちゃらんぽらんで、信用出来ないと、作中でおっしゃっている訳なので、その作家が書く文筆の世界というのを、何も知らない無垢な読者は、どうとらえたら良いのでしょうねーーー。これは、とてつもない、ラブ・ストーリーです。感動的です。ヒキタさんがお書きになる登場人物は、ご近所に住む何気ない隣人といった風情。でもとても魅力的。「角」の世界で、いまだに浮遊している私です。

東京ボイス  ヒキタクニオ   講談社      3/20/12
私、だんだんこの作家のファンになっています。すごい人間描写と、リアリテイー。皮肉と鋭い切り口。人間の醜さも、可愛さも、ごった煮にして、それでいて、筆はとても洗練されている。そして、出てくるすべての登場人物への、深い愛情。素敵な作家だなあーーー。そして、古臭い言葉で言うなら、文化人というのかなあ。芸能界、主婦の世界、水商売、ゲイ仲間、それぞれが、うんとかけ離れているようでいて、実はポイントは同じだよー、と伝わってくる。すごい本だよ!

愛という字    向田邦子  ラインブックス     3/11/12
昭和の庶民の幸せを描いて、向田さんの右に出る者はいない。ちょっと暗い、でもとても綺麗に磨き上げられた一軒家、襖の破れたところに当てられた桜の模様の日本紙、「はばかり」と呼ばれていたお手洗い、お客間から庭に出るところにある下駄、ちっともお洒落でない台所。私の父方の祖父母の家を思い出させる。小学生の時に私は、この世田谷にある祖父母の家に、毎週末泊まっていた。夏休みは、長いこと滞在していたのである。最初は怖かった「はばかり」も、慣れてくると平気になった。今でも不思議なことに、この祖父母の家の夢を見ることがある。閑話休題。このご本は向田さんの脚本を(東芝日曜劇場から)中野玲子さんが小説家したもので、登場人物が、紙面を飛び出すほどの、主体性を持っている。まさに、本を読みながらテレビを見ている気持ちになる。家族のやり取りが、この昭和の家にとっても溶け込む。平成生まれの世代には、どう写るのかなーー。本当にすごい才能を早くに亡くしたことを、改めて思い起こさせた。

原宿団地物語  ヒキタクニオ   徳間書店    3/10/12
これは、まさに「バカボン」に出てくる「レレレのおじさん」の話である。レレレのおじさん、季節を問わず、いつも街を箒で掃いているが、この本の主人公「小曽根さん」も同じ。毎朝自分が住んでいる原宿団地を、掃きながら、そこに住む住人達を観察、交流。その人達との関わりから生み出された、いわゆる「心温まる」お話しだ。とても日本的な、肩の寄せ合い方が、私をちょこっと、ホームシックにした。この作者も、海外に長いこと住んでいて、知らずに来てしまった一人で、今回「原宿団地」を通じてお知り合いになれたこと、とても嬉しい!今後も、手にしたい作家の一人になった。

スイート・リトル・ライズ   江国香織  幻冬舎  3/6/12
とっても日本的な、「可愛い」ものの象徴のようなテデイー・ベアと、不思議だけど怖いカップルのお話し。結婚してまだ余り月日のたたない、今日的な彼らは、コミュニケーシオンのない、「形式」の中で、ぶつかることもなく、体裁はちょっとカッコイイ。何かふわふわした、植物男子とパステル調の女子。そのどろどろとは無縁の二人が、植物系の不倫を始めてしまい、結果はどうなった分からないまま、終わる。とても登場人物と一体感は持てないけれど、その現実感のないところが、良いのかも。そして、一体感を持てない私は、化石化しているのかもね。

ルパンの消息  横山秀夫  カッパノベルス  3/4/12 これは、正統派推理小説。この作者も初めて読んだけど、私の知らないところで(もちろんアメリカにいるので、これはかなり難しいのだけど)、どんどん良い作家が出ているのだなあ、と改めて思った。現在と15年前を前後させながら、話しを進める手法は、そう新しいものではないけれど、超悪ガキ3人組みを、あたかも目の前にこの3人組がいるかのように、生き生きと描いて、ストーリーが紙面からはみ出るようだ。犯人逮捕までの経緯も、二転三転しながら、的を外れず、登場人物への愛情を失わずに、読者を惹き込んでいく。おもしろかった!

我が家の問題   奥田英朗   集英社  2/29/12 この作家のものを読んだのは初めて!これって、新婚カップル必須の本じゃないかなあ。何てことのない、まさに「我が家」のそれぞれの問題なのだけど、その問題の進行が愛に溢れているのだ。こんな風にお互いを想う事が出来れば、結婚は本当に最高だ!と実感する一冊。短編集だけど、それぞれのお話が、まさにキラキラ、庶民レベルで光っている。最後のマラソンの話しには、思わず、登場人物のご主人にもらい泣きしてしまった。

東京タワー  江国香織  マガジンハウス  2/25/12 20歳前後の「男の子」達の物語り。私はもちろん、「男の子」であった事がないので、とっても面白かったし、何か不思議な気もした。おごりもあり、恋もあり、辛い日々もあり、友情もあり、年上あり、で物語りが進んでいく。年上の女性の状況が、ちょっとおしゃれすぎて、現実味をおびていないけれど、又そこが良いのかもしれないなあ。東京の地形を知らないと、面白みが半減するかもね!

The Immortal Life of Henrietta Lacks        Rebecca Skloot         Broadway             2/17/12
It is an amazing book. I worte my review in my blogs. Please read there.

もっと塩味を!  林真理子  中央公論新社     2/1/12
林さんの典型的な文体がちりばめられているーー。辛口で人間の深いところまで、ざくっと切り込む。男女の関係が始まり、悲しくも終焉を迎える。そして、どんどん読者を引き入れていく、ストーリー性。華やかな、ファッション。いつも言っているけど、林さんが超売れっ子なのが、うなずける一冊。

夢で逢いましょう   藤田宣永   小学館  1/29/12
とっても素敵なお話。この本も村上さんのご本のように、いろいろな要素が含まれていて、又登場人物も沢山いるから、ある意味複雑なストーリーなのだけど、芯が一本どーんと通っていて引き込まれてしまう。この本は、フロリダからの帰りの飛行機で読んだ。あっという間に時間がすぎちゃったけどね。藤田さんって、ロマンチストなんだと思う。それぞれの登場人物の心の襞が、じんじん伝わってくる。心の叫びが聞こえる。これも大長編だけど、あっという間に読んでしまった。大推薦の一冊。

1Q84   Book 3                      Haruki Murakami                 Shinchousha 1/26/12
I love Murakami’s books. After seeing a movie “Norwegian Wood” I was thinking to read his book again. So I picked this one, and took it with me on the way to Florida for my concert tour. I was listening Beethoven’s string quartets and reading Murakami world. I could be in my own world separated from the plane. It can be called mystery, or science fiction, or love story. It has all these elements. Well done! We can hear Murakami language throughout the book, if you know what I mean.

1Q84 Book 3   村上 春樹   新潮社  1/26/12
私は、村上春樹の大ファン!ノルウェイの森の映画(がっかりした映画だったけど)を見てから、ずっと村上さんの本が読みたくて、フロリダへのコンサートツアーの行きの飛行機でこの本を読んだ。ベートーベンの弦楽四重奏曲集を聞きながら、この長編を読んでたら、長旅も気にならなかった。飛行機の中で、自分の世界に浸ってよかったなあ。ミステリーとも言えるし、サイエンス・フィクションとも言えるし、とんでもない恋愛小説でもあるし。私達を不思議な世界に導いてくれるよ。イメージと現実が交差、実在の人間なのか、それとも架空なのかーーーー。絶対にお薦めの一冊です。

Some of My Lives, a Scrapbook Memoir     Rosamond Bernier    FSG New York    1/10/12
It is really fun to learn about Copland and Bernstein in this book, and of course other artists as well. I did not know this author before, and it is fascinating to learn about this lady. But is it her self-promoting book?? Everybody loves and adores her for her beauty and charm in this book. Painters, Musicians, Writers—-. Yes, she looks pretty in photos! And what she has accomplished is amazing. Don’t you think we like to eat creamy sauce dish once in a while?

Cosima Wagner, The lady of Bayreuth      Oliver Hilmes       Yale University Press 1/2/12
The concept of the book is very interesting, but it goes through very small details that sometimes it was difficult to focus on the theme. I love to learn about the life of Cosima, but not where she went and who she met on every single day. I was fascinated by the anecdotes between Wagner and Cosima! Of couse she is a special woman. The photos included in this book are fun to see.

2011

リアル・シンデレラ 姫野 カオルコ  光文社 8/30/11
姫野さんのお名前は、以前聞いた事あるけど、実際彼女の本を読むのは始めて。海外に住んでいると、情報はそう簡単には伝わってこないのである。文章が自然で、ストーリーも自然で、時間も忘れて一気に読んでしまった。そして最後には、泣いてしまった。ストーリーは題名の人物、泉さんの生涯である。そして、それもとんでもなく、素晴らしい生涯であす。どうぞお読みあれ!

The Countess of Stanlein Restored:
A Hiotory of the Countess of Stanlein EX Pasanini Stradivarius Cello of 1707
Nicholas Delbanco Verso 8/18/11
One of the greatest cellos, The Countess of Stanlein by Stradivarius has been in the hand of the great cellist, Bernard Greenhouse, and in his eighties and semi-retired, he determinded to give back the value to the world. He left his cello at the instrument repar shop in NY. She has been traveling with Greenhouse for 40 years, and visited many concert halls. Now she is rested in the shop to be restored. This book follows the precess of the restoration going with the history of this instrument. It is very touching to observe the intimate relationship between the player and the instrument.

月下の恋人 浅田 次郎 光文社  8/15/11
美しい短編集。浅田さんのファンなら、是非、そうでなくても、是非。読んでいる間、素敵な空間に遊ばせてくれる。一編づつに、テーマも文体もちょこっと違うけど、全体を読むと、底辺に流れる共通項で繋がりがあるように感じるのは、とても不思議だ。浅田さんの大歴史ものも、大好きだけど、こうした、どこにでもいるような普通の人を美しく書いた、小説も大好き。

Cellist   Gregor Piatigorsky  Doubeday (1965) /reprint Da Capo Press (1976) out of print   8/11/11 
It is hard to express how much I enjoyed this book !!! I feel as if I was visiting uncle Grisha (Piatigorsky) – and heard his fun stories and adventure day after day. He is a great story teller with the skill of creativeness and imagination (!). In last 2 days I have been very efficient so that I could focus on reading this book! This book contains full of love to music and to his family and friends. He was handsome, witty and naughty. His life had full of fun! Now I understand Mr. Piatigorsky was not only one of the greatest cellists, but also the greatest human being.

小池 真理子 天の刻 文芸春秋社  8/8/11
死を巡っての短編集である。「死」は、小池 真理子の永遠のテーマなのであろうか。死の誘惑から逃れ、生きる道を見つける女性。生きることへの誘いを捨て、一人死んでいく男性。いろいろな人が出てくる。美しい短編集であるが、現在の自分に沿わなくて、最後まで行かずに本を閉じてしまった。気分の違うときに、又再びこの本を手に取ってみようと、思う。

優しいおとな  桐野 夏生   中央公論新社  8/4/11
桐野さんって、どうしてこんなに、すごいんだろうねーー。毎回、手法を変え、テーマが全く違い、今回もちょっと未来のストリート・キッズの話。どんどん、惹きこまれてしまった。どんどん、イオン(主人公)の世界に、暗闇の世界へ、引きずり込まれた。桐野さんの奥深い下調べに支えられ、話の展開に、人物描写に、心から納得がいった。桐野さんのファンの貴方なら是非、ファンでなければ、これを読んで是非ファンになって下さい。

1973年のピンボール  村上 春樹  講談社  7/31/11 
ノルウエイの森で興奮した私は、再び村上さんの本を手に。この本、何ていうか、昔のウッデイ・アレンの映画みたいな世界。ファンタジーと言えばそう。だけど、良く分からないとも言える。不思議な境界線にある本。70年代の青春を描いているので、2011年に読めば確かに、懐メロ風のノスタルジーに浸れるよ。でも、じゃあ何だんだ?といえば、良く分からないかも。

The Keyboard Music of J.S.Bach     David Schulenberg       Shirmer Books       7/14/11
This book is also a part of my study on the Goldberg Variations. I like this book in the different point from Troeger’s. Both book s are great! This book is written piece by piece so it is easy to look for the particular information. It is more likely for the players or music students. It has full of great information!

Playing Bach on the Keyboard: A Practical Guide     Richard Troeger      Amadeus Press    7/13/11
It is a fantastic book full of love to Bach’s music. His points of view to Bach’s music are always “practical”
and useful, convincing, artful–. I understand Troeger himself is a performer on harpsichord and clavichord (Unfortunately I have not had a chance to hear him yet), and his discussion on keyboards and music never gets too scholarly which I like the most. You would enjoy reading this book whether you play instrument or not. As J.S. wrote on the cover of Clavierubung (Keyboard Practice) Bach intended to compose them for ” refresh the spirits of music-lovers”.

 Bach: The Goldberg Variations Peter Williams Cambridge University Press 7/10/11
I was so excited to read this book. You may have read my blogs that I have been practicing the Goldberg Variations. Honestly this book did not help me much. I got some factual information, but not musical information.

ノルウェイの森 上・下 村上 春樹  講談社  7/7/11
もう古典と呼んでも良い、村上 春樹の名本。昔読んだ記憶があるのだけど、改めて読んでみて、感動した。感動というのは、ちょっと相応しくない表現かもしれないなあ。自分の若いころの事を、ぎんぎんと思い出して、ノスタルジーに浸った(この本の時代設定は、学生運動のころで、私の学生時代とはちょっと違うのだけど)。70年代から80年代にかけて東京で学生生活を送った私にとって、ワタナベや直子や緑、レイコさんの世界は、まさに、私そのものだった。きっと、そう思う人は、沢山いると思うけどね。新宿を駅から伊勢丹の方に歩いていくと、お気に入りのロック喫茶があった。音楽高校時代は、そういうところに入り浸って、ロンドンブーツのお兄ちゃん達と、たむろしていたものだ。模索の連続、訳の分からないイライラ、若さの真っ只中で、無我夢中に滅茶苦茶に生きていた。でも、音楽だけは、別で、どんなに遅く帰宅しても、ピアノに毛布をまいて、雨戸締め切って練習だけは、怠らなかったね。音大入学後も、方向は変わったものの、いや、少し歳を取った分だけ分別臭くなって、滅茶苦茶に迷うことはなくなったかもしれないけど、その分、真剣に迷っていなかったかも、しれないなあ。沢山の失敗で、ひとを沢山傷つけて(自分も)、今思い返すと、不思議な気持ちにすらなる。全く、若いというのは、大変な事である。ワタナベが時々言う「やれやれ」である。閑話休題。緑のお父さんが、ぽりぽりとキウリを美味しそうにかむシーンでは、涙が止まらなかった。ワタナベの優しさが、ドーンと出てくる場面だ。この本は、バブル時代に突入する前の日本の若者を描いた名作。そして、究極の恋愛小説だ。

風の墓碑銘(エピタフ) 乃南 アサ  新潮社    7/4/11
もう、どうしてこういう風にゴタゴタ考えてしまうのか、という主人公、音道 貴子。これって、とても日本人女性っぽい。それでいて、「竹を割ったよう」な、音道。心理戦を駆使して、犯人を追い詰めていく。あれ、この本って、推理小説じゃなかった、け、と思う瞬間が結構出てくる。そして、超長編!でも、最後はすきっと終わる。素晴らしい登場人物を誕生させた作者の乃南さん。今後も期待しています。

人質カノン  宮部 みゆき 文芸春秋社  7/2/11
1993年から95年にかけて、雑誌等に発表された短編を集めた本。宮部さんの最近の文体とはちょっと違う視点で書かれているみたい。推理小説という枠には囚われない、というか、これらの短編は推理小説とは言わないでしょうね。宮部さんというと、超すごい推理小説、もしくは、粋な江戸ものが、私にはすぐに思いつくから、ちょっと異色な感じです。読む価値大有り!

恋しい女 藤田 宜永  新潮社 6/30/11
これは、「セカンド・バージン」の連載に加筆、修正して、出された単行本だ。作者も書いているように、「男なら一度は、過ごしてみたい人生」なのかもしれない、主人公江田 俊太郎の生き方。ものすごい長編である!おおまかに言えば、3人の女性の間を、勝手きままに生きる、職から離れた中金持ち中年男性。現実に見つける事は、はっきり言ってかなり困難だと思う。唐突な比喩が、何となく浮いていると思ったのは、私一人かしらーー?結構話題になったらしいけど、私にはいまひとつ中心点を掴めずに終わった本だ。

知りたがりやの猫  林 真理子 新潮社 6/28/11
いつも感服する林さんの文才。辛らつであり、スマート。お洒落で、テンポが速い。これは、短編を集めた、人生の縮図だ。あっという間に読んでしまうが、心のどこかにちゃんとひっかっている。主人公達が繰り広げる日常が、映画のように目に浮かぶ。人気作家は、すごいのである。

禁猟区  乃南 アサ  新潮社   6/4/11
中々、面白かった。警察の内部が、警察官達を裁く話である。文章が、とにかく巧みで、つい惹きこまれてしまった。犯人を見つけるというスリルではなく、警察官達が、どういう経緯を辿って、悪くなってしまったのかを、描く。だからと言って、そういう心理戦で犯人を許している訳では決っしてないところが良い。石田 衣良のウエスト・ゲートパークが、池袋を立ち回りにしてのカッコ良い正義を書いているのなら、この本は、悲しくも道を踏み外した警官達を裁く正義を、書いている。

彼女について  よしもとばなな  文芸春秋  5/31/11
久しぶりによしもとワールドに触れて、嬉しかった。彼女の初期のころの作品みたいで、限りなく美しく、優しい。そして、不思議な世界に私達を連れて行ってくれる。この本は、ファンタジーなんだけど、ちょっとひねってあって、推理小説っぽいところも有りだよ。読んでいない人のために、何でなのかは秘密だけど。海外でも盛んに読まれているよしもとさんの作品たち。又、いろいろと彼女の本が読みたくなってしまった。

池袋ウエストゲートパークIX ドラゴン・テイアーズ 龍涙  石田 衣良 文芸春秋 5/26/11
マコト君は、余りにもカッコ良い。池袋の町を、何気ない白いTシャツにジーンズで、闊歩している様子が、目に浮かんでしまう。現実にはこんなイカシタ奴なんていないのだ、と分かっていても、想いを寄せてしまうマコト君。あーー乙女心には、辛い!これは、石田さんが文学賞をお取りになった第一作から続く、ウエストゲートパークシリーズの9作目。すべて読んでいる訳ではないけれど、どの作品でも、マコト君は、威張らず、すかっと、正義の味方なのである。石田さんの、とってもお洒落な(何かの雑誌の、男の書斎拝見で見ました)仕事場で、ストーリーに沿った音楽を聴きながら、生み出されているんだなあ、と思いながら、どっぷりと、マコトワールドに浸りました。

山野愛子 美への執念  勝部 祐子  にっかん書房  5/19/11
あの有名な、山野王国を築いたご本人の事、興味があったので読んでみました。まあ、とにかくすごい馬力人生。6人の男の子を次々に生み、その翌日からすぐに働き出す。手術後でも、病院で消灯後に、看護婦さんの目を盗んで仕事。とにかく仕事にすべてを賭けた一生。あっけらかんと自分を信じ、周りを動かして来た、太陽のような存在ですね。美容の先端を、日本の戦中、戦後と走り続けて来た、まさに日本の発展と共に自分もあり、そして、日本の経済と発展に陰りが見えて来たら、ご自分も天に召された、そんな感じです。「空気を読む」などという、最近語のなかった時代の、生き字引みたいな方ですね。

いいんだか 悪いんだか  林 真理子 文芸春秋  5/15/11
林 真理子さんのエッセイ、久しぶりに読ませて頂きました。相変わらず、短い文章の中に、きちんと起承転結があり、熱い話題を取り入れ、かつ巧妙に面白く、批評するところは、きちんとして、さきっとした文章で書き切る、流石です。やはり、相当な才能ですね。それを、ご本人の言葉を信じれば、芝居見物、家族の事、友人達とのお芝居稽古、旅から旅へのスケジュール、犬の散歩などの合間に、ほこっと書いてしまうんですから。こういう人を世間がほっておく訳がない。だから、引っ張りだこなのも、うなずけます。こういう風に、私も音楽の世界で、すきっと、演奏活動続けていきたいものです。

ウエハースの椅子  江国香織  ハルキ文庫  5/13/11 
とても美しい恋愛小説である。詩的で、優しくて、文章の流れが優雅で、文句のつけようがないです。ちょっと、吉本ばななを思い出してしまったけど、ね。すごい量の文学賞を取っている江国さん。(すみません、このホームページのプログラムでは、本当の彼女の「国」という漢字がないんです)これからも、機会があれば是非読ませて頂きますので、文学賞の数に負けずに、美しい文章を書き続けて下さいね。

沙高楼綺譚   浅田 次郎   徳間書店  5/10/11
子供にファンタジー小説があるなら(例えばハリーポッターなど。ハリーポッターは、大人も読むけどね!)、この本は、大人のファンタジーである。それぞれに、語り手が違う、秘密の話を、秘密結社のようだが、とても優雅な会で、参列者に語るという、設定だ。語り手によって、その物語は様々だが、何だか、心にずーんと来るものばかり。浅田さんて、本当にすごいね。特に、最後のやくざの大親分の話は、圧巻である。又、浅田さんの本を手にとってしまいそう!

ニサッタ、ニサッタ  乃南 アサ   講談社  5/4/11 
もちろん主役の片貝 耕平の破天荒で、ハチャメチャな失敗談、だらしなさ、オッチョコチョイなところが、全面に出ている訳だけど、「人は人との関わりなしには、生きられない」という、まあ当たり前ともいうテーマが、この本の言いたいところだろう。乃南さんのご本を読ませて頂くのは、始めてだけど、文章の切れが良く、さっぱりしていて、それでいて、人の事を丁寧に描くところがとっても気に入った!大長編だけど、何だかあっという間に、読んでしまった気がする。ずばずば言って、時には喧嘩もするけど、深い愛情で結ばれた、耕平親子や、姉達。こういうのって、きっと皆が憧れる親子関係。テレビや映画では見るけど、現実には中々ない、「素敵」な関係ではないだろうか。

神様のカルテ 2 夏川 草介 小学館 5/2/11
優しい風が、そっと頬をなでるような、ふわーっとした小説です。多分現実にはあり得ないような、人間関係だと思うけど、こんな人達に囲まれていたら、良いなあーーと、思うような登場人物達。信州の病院(作者も同様なお仕事のようですが)を中心に、お医者様の日々を追う。医療システムは、日本とアメリカではあまりにも違いすぎて、私の現実には起こり得ない状況だけど、とても日本的な熱血医の話だ。ささっと読めて、心に灯がともるような、本ですよ。

Eat Pray Love Elizabeth Gilbert Penguin Books 4/20/11
I enjoyed reading her book. I have not seen the movie yet, so it was fresh to read her stories in those 3 countries, Italy, India, and Indonesia. She has a great wit and humor, and knows how to express women’s emotion! Since I do Yoga daily to finish my day and I have visited India twice the section on India was interesting. I don’t know how guys would take this book, but it is a great book for us to feel the connection to the author.

In the Absence of Sun    Helie Lee     Three Rivers Press  2/24/11
I must admit that this book became one of the worst book I ever read. My expectation was high after Still Life with Rice by the same author. The theme of this book is an interesting one, but the author treats the story as a cheap soap opera. It sounds like a high school girl’s selfish diary. I don’t want to know what kind of reaction her family had after the release of this book.

Secret Lives of Great Composers  Elizabeth Lunday  Quirk Books   2/15/11
It is a fun book. If you are a classic music lover it will serve you a lot. We learn the secret anecdotes of the great composers! And each composer is about 4-5 pages long so it is nice that we can finish one in 10 minutes! It won’t give us any scholastic background of music, but there are full of fun music stories!

Still Life with Rice    Helie Lee    A Touch Stone Book   2/7/11
It is a story of an amazing woman who is a grand mother of the author. It begins with the journey to seek the root of the author after struggling to understand her origin. Her family is from Korea, and the author was raised in US. She went to stay in Korea and China for a while, and the story begins with the voice of her grand mother. Her grand mother survived through the horrible war between North and South Korea, but she never gave up. Her strength, her wisdom, her courage and her love saved her family and many people. Each page contains full of everyday life, and I could almost feel her breath, her heat, her smell–. It made me cry for several times. Her unlimited love became the bridge of people. I look forward to reading the next story of Helie Lee. It is an inspiring book.

自由恋愛  石井 志麻子 中央公論新社  1/20/11 
先日読んだ林 真理子さんの「下流の宴」のアンティック判とも言えようか。設定が非常に分かりやすく、又その話の展開も分かりやすい。望んだ様に、と言おうか、ありきたりに、と言おうか、とにかく、ストーリーが、すらすらと進んでいく。でも、清子さんは、頑張った!大正ロマン風の、風景が良かった。綺麗なおべべに、リボンを結んだ女学生達のざわめきが、聞こえてくるようだった。

活動寫眞の女  浅田 次郎 双葉社 1/15/11
浅田さんの、いつもながらの素晴らしいストーリーテラー振り!大正、昭和の日本映画の最盛期と平行させながら、男女の美しい関係、心持ちを描く。こういう関係は現代には、絶対見つからないだろうなあ、という愛の形。そして、ファンタジー、と昔の女優の悲話がかぶさり、何とも物悲しくも、美しい。心にどーーんと響くという本ではないが、何とも素敵な気分にしてくれる。

乙女の密告  赤染 晶子  新潮社  1/6/11
アメリカに住んでいる事もあって、日本の新しい作家事情にとっても疎い。この作家の芥川賞受賞も知らなかった。ただ何となく手に取ったこの本。美しい話で、惹きこまれた。「乙女」というキーワードが中心となり、ほんの数人の乙女達が織り成すストーリーだ。作者が外国語大学を卒業しているのだから、その経験が基になっているのは確か。でも、ある意味とてもフレッシュ、そしてユニーク。そして、綺麗な物語だ。

My Nine Lives: A Memoir of Many Careers in Music  Leon Fleisher Doubleday 1/1/11
It was a perfect book to read while I was on vacation at my husband’s family gathering. Also I heard Leon Fleisher performing his signature Ravel at Hollywood Bowl this past summer with LA Phil so in that sense it was perfect to read as well. First I really enjoyed reading this book. It is truly unfortunate that I have never had chance to play for Mr. Fleisher or attend his masterclass. My encounter with him is his performance of Ravel. How beautiful he played, how thoughtful his performance was, how timeless it was, I remember. I still clearly remember that day I was listening his Ravel in Hollywood Bowl. I don’t go to the details in this book because I was so involved in many pages and I simply can’t pick certain pages. I felt his sincere approach to this book, and I could easily relate that to his concert. As a pianist myself I am fascinated by his approach to music and to piano. I strongly recommend this book to anyone. And I am so proud of Leon Fleisher’s achievement in his life.

2010

秋の森の奇跡  林 真理子  12/20/10
もちろん林さんの小説に登場するんだから、素敵な男女ばかり。でも、話の根源は、どんな中年(敢えてこういう言い方します。)女性にで も、起こり得る、そして希望的に起こって欲しいと思うことでは。主人公の裕子の置かれた立場、心理的切羽詰感など、私だけでなく、誰もがこの年齢なら経験 しているはずですね。でも、もちろんこれはお話だから、素敵な男性が現れ(まあ昔風に言う、白馬に乗った騎士)、その窮状を救ってくれる。この本を読む と、心理的中年症候群に陥っている女性は、新井さんの出現を望み、裕子さんと新井さんのロマンスに自分を重ねるのか。掲載された雑誌がどういう種類のもの か分からない私ですが、きっとこのお話を読んで、一喜一憂した女性がたーーくさんいると思います。現実には、こんなに夢のような事が、起こる訳ないんだけ どね!

下流の宴  林 真理子  12/19/10
たった今、この本を読み終わったけど、何だか余韻がすごくで、その力に酔いそう。林さんの独特の視線と、バブル風俗から続く饗宴の様、 人間の本質と現実、勝者と敗者、この余りの真実に打ちのめされています。これが、新聞連載小説だったなんて、本当にすごい。物語の最初に出てくる登場人物 が、其々典型的な人物描写で、ある意味では、物語の最後が見えているとも言えるのだけど、その進行過程が生半可じゃない。そして、最後のお母さんの言葉 も、本当に恐ろしい。真実に正面から向かうには勇気がいるけれど、それなしには、未来もない、明日もない。自分のことを知ることがどれだけ大事か、そうし てこそ、家族にも、隣人にも、友人にも、真実の対処が出来る。名著です。

Violin Dreams     Arnold Steinhardt        Houghton Mifflin Company    11/21/10 
This is the second book of Mr. Steinhardt. He is an amazing writer! His dreams and stories around the violin are so lively, so personal, so moving—-. Again his book gave me tears. Especially I was touched by his parents history as Jews. How fundamental the music is in Jewish lives, and I started to think about my own heritage as Japanese. My thought still continues–. This book has full of beautiful and thoughtful stories.

シェエラザード 上・下 浅田 次郎  講談社文庫 11/3/10
浅田さんの大長編・歴史ロマン小説を読み終えました。正直に言えば、出だしは何だか調子が出なくて、もたもた読んでいたのですが、話に 一旦惹きこまれてからは、時も忘れて読み耽ってしまいました。実際に存在する阿波丸のお話が基になっているらしいのですが、浅田さんご本人の口から、「調 べていけばいくほど目を背けたくなるような悲惨な事件でーー、あのくらいの歯の浮くようなロマンスがないと、なかなか悲惨さを中和できない」というコメン トがあります。第二次大戦末期に沈没した「弥勒丸」を中心に、過去と現在を行きつ戻りつして、お話が展開していきます。戦争によって引き裂かれた許婚達、 船に乗船していた一人一人のドラマ、軍部の決断に最後まで抵抗する人間、白系ロシア人の悲劇、など、文中にも出てきキーワード「ジグソーパズル」のピース がばらまかれ、そして時間とともに、一つの絵になるような、壮大なお話です。感動しました。

野ばら  林 真理子 文春文庫  10/19/10
全編、林 真理子ワールドです。これも引きずられるように、一気に読んでしまいました。女性の心理を描いたら本当に右に出るものはいない、という感じ。宝 塚と歌舞伎の世界を交差させ、不倫と離婚を交差させ(これは当たり前か!)、若く美しい女性の甘ったるくも、小ずるい毎日ーー。二人の親友のそれぞれの社 会人・人生の初期を描いています。若い事の素晴らしさと、その影に隠れる不安と不遜。ああ、私にもこんな時が、うーーーーんと前にあったんだなあ、と思っ て読みました。

姫椿  浅田 次郎 文春文庫 10/15/10
美しいお話ばかりの、短編集。浅田さんの様々な語り口が、それぞれの短編に生きています。どの登場人物も、もしかしたらご近所でお見かけするような方ばか り。その方達のそれぞれの人生が、短編の中に凝縮され、涙を誘います。浅田さん、自他共に認める、「ラスベガス大好き!」のようですが、こういう繊細な心 の襞を描く小説を読むと、その対比が面白いです。やっぱり、プロフェッショナルっていう事なんですね。素晴らしい短編集です。

RURIKO   林 真理子 角川書店 10/12/10
面白くて、一気に読んでしまった!登場人物が、もう目の前にいるみたい。小林 旭が、石原 裕次郎が、美空 ひばりが、生き生きと、作 者の手の中で動いている。自由にしゃべり、自由に恋愛し、自由に行動している。林 真理子さん、本当にすごいです。貴方の頭の中で考え出された物語の輪 が、大スター達に乗り移って、悲しみ、喜び、笑っている。膨大な量の資料を読み込んで、現地に行ってその場を見、匂いを嗅ぎ、浅丘さんに会って、お話しを 聞きーー。でも、それをまとめて大きな箱に入れて、次にその箱から出て来た時は、林 真理子の小説になっている。感服。そして、昭和の大スター達の世界 に、一時連れて行って下さって、本当にありがとうございます。

エンジェル  石田 衣良 集英社文庫  10/10/10
石田さんのご本はいつも大好きです。残念ながら、今回のこの「エンジェル」には、ちょっとついていけませんでした。これは私個人の完全 な独断ですがこういう「死の世界からやって来てーー」というお話嫌いではないのですが、何だかファンタジーが足りないような気がしました。現実を遥かに超 えたところでのお話なので(といっても、ストーリーを作る事自体が、現実ではない訳だけど)、私の希望としてはいっそ、もっと現実離れして欲しい、ふあふ あ感が欲しい、となってしまうのです。ごめんなさい。これは、私の完全な独断です。これからも、石田さんのご本は読み続けたいと思います。

恋にあっぷあっぷ  田辺 聖子 (光文社) 9/2/10
大ベテランの田辺さんの、お若い時のご本です。長く第一線で多くの読者を惹きつけ、常にフレッシュなアイデアを世に問い、そしてインタビュー、講演などで も、魅力あるお話をなさる、田辺さん。本当に脱帽です。この本も、田辺さん独自の語り口で、可愛くも、真実を突いて、主人公達があたかも自分のお隣さんの ような、気分にさせてしまう。今回の女主人公アキラには、随分と冒険をさせましたね。大好きなお話です。だから、又しつこいけれど、私本中毒なので、一回 詠み始めると、止められないんです。だから、勉強に集中する時は、辛いけれど、禁本(普通の意味じゃないけどね)しなけりゃ、いけないんです。

闇のカルテット 小池 真理子 (双葉社) 9/1/10
再び、小池真理子さんです。この本も、若いときに書かれたもののようです。物語に惹きこまれて、一気に読んでしまいました。サスペンスとしての話の構築も すごいし、人間描写という面でもすごい!男と女の愛を書かせたら、この人に右に出る人はいないのでは、といつも思っていますが(ご主人も美しい話を書かれ ているのですが)、今回のこの本も何とも言えない辛さと美しさの狭間で、ストーリーが動いていきます。読み始めたら、もう貴方も虜になってしまいますよ。 だからピアノの練習や勉強に集中したい時は、本を遠ざける私なんです。

柩の中の猫  小池 真理子 (白水社) 8/2/10
小池 真理子さんの本は、いつも感動するんです。この本は発行日を見ると、1990年となっているので、20年近く前に、執筆なさった んですね。美しい話です。まるで、自分の手の中に、白くてふわふわの猫を抱いているような、現実的な感覚に、陥りました。雪のシーンも、とっても身近に感 じられたーー。作者の描写力のすごさなんですね。何だか、本当に自分も川久保 悟郎の家に下宿しているような、気分になりました。そして、ほの暗い廊下を 夜歩いたり、一人妄想にふけったり。お薦めです。

無傷の愛   岩井 志麻子  (双葉社)7/30/10
久しぶりの日本語の本!!何だかとても嬉しいです。それにしても、作家という人の頭の中はどうなっているんでしょうねーー。10の短編 からなるこの本ですが、どの話も日常では絶対に有り得ない物語ばかり。どういう状況に自分を置くと、こういうストーリーが浮かんで来るのか。それとも、次 から次へと、湧き水のように、涌いて来るのか。其々が、奇怪でかつファンタジーのあるお話。特に、「マイナスのアイドル」という発想、良くあるようでい て、こういう定義で聞くのは初めてで、その独創性に、もう平身低頭です。すごい短編集ですよ!

The Cello Suites: J. S. Bach, Pablo Casals, and the Search for a Baroque Masterpiece  Eric Siblin (Atlantic Monthly Press) 7/24/10
I have two entirely different feelings toward this book. I enjoyed knowing about the lives of J. S. Bach and Casals because some facts were new to me. On the other hand some of basic musical knowledge was not needed for me, but for many of readers I am sure they enjoyed them as well. I think it is a very clever idea to write 3 things in parallel motion, using formats of Bach’s unaccompanied cello suites, but some point of this book I started to feel unconnected between those 3 matters. If you don’t know anything about J. S. Bach’s cello suites this is the great book to be introduced.

Chopin’s Funeral     Benita Eisler  (Alfred A. Knopf)  7/15/10
I have read several Chopin’s biographical books, and this one is very poetic. But somehow I got little bit bored in the middle of the book—. I suppose I prefer more direct expression, like Steinhardt’s.

Indivisible by Four: A String Quartet in Pursuit of Harmony  Arnold Steinhardt (Farrar, Straus and Giroux) 5/27/10
Please read my review in blog section in English page.

The New Toughness Training For Sports     James E. Loehr  (A Plume Penguin Book)  4/25/10
I have had this book for a while, and it was the second time to read it. This is a sports psychology book which can be related to music performance. That was the reason I wanted to read it again! It is an excellent book describing the mental stages going through the tough situations, like STAGE Fright!! Aha—. It is a “Forever Topic” for the musicians, and I wanted to learn for me and my students. The author uses Physical, Mental, and Emotional parts of the humans, and analyzes them, and leads to how to get tough on those. It is a Big Recommendation Book!

Mozart in the Jungle: sex, drugs, and classical music      Blair Tindall (Grove Press)   1/2 5/10
Well– it is very hard to describe this book. Is it a scandal book, a memoir of Samuel Sanders, a system of classical music business, or author’s life long complaint?? First of all I did not have good feeling after I finished reading it. I never met her or never heard her playing so I only can judge this book from reading. I am also a professional musician, and married to an orchestra player who has played with 6 different orchestras. I have lived as musician since when I was 3 years old, and I never gotten any other job besides being a musician, performing and teaching. I know many many many wonderful musicians!! If we focus on sex and drugs in our lives we can write anything, like, Bar Exams in the Jungle:sex, drugs, and law schools, or Beauty on the Ice:sex, drugs and a figure skating. If she likes to focus on those themes that is her choice, but it does not apply to most of musicians. Also her attitude toward finding male friends is obscure. After I reading this book I felt so sorry to her friends (she calls them her friends, but I don’t know they think the same way or not) who are criticized without much of the reason or made fun of, including big name musicians. I don’t think I would recommend this book to you.

Grand Obsession      Perri Knize (Scribner) 1/15/10
This is the book which we learn about the world of piano instrument. We follow the journey the author took to seek the best piano for her. It was not easy at all! After reading the first part I realized we, professional pianists, have a different view to our instrument. Of course we love our home piano, but we have to perform on different pianos all the time, and one of the most important tasks for us is to get used to each piano to make the piano the best sound and to get the good relationship with any piano we perform. Each piano (even though they look similar–) has different personality, different voicing, different regulation, different sonority, different action, different everything!! And the regular maintenance is important on any piano. The great piano can be out of tune, bad voicing , etc if we don’t take care of them.

It is an interesting story around piano.

Romance on Three Legs: Glenn Gould’s Obsessive Quest for the Perfect Piano
Katie Hafner (Bloomsbury) 1/2/10
It is all about Glenn Gould’s famous personality, good or bad. I believe this is the first book that the name of his lover was revealed, the wife of Lucas Foss, Cornelia. As the author wrote I was one of many people believing Gould was gay.
All of us can relate to Gould on the obsession to our instruments, not necessary in piano, any instrument. I started to play piano when I was 3, and I am still playing after 100 years!! So it is a part of our IMPORTANT lives.Actually piano is the most distant instrument compare to others, like wood winds or brass. And one of the most important task for the pianists is to get used to each instrument prior to the concert. Each one has different personality! I enjoyed reading this book, especially I am always curious about Gould!
I am reading another “Piano Search” book, this time by the amateur pianist. I will give you a report once I finish reading it.

2009

The Lost Cellos of Lev Aronson   Frances Brent (Atlas & CO)  12/10/09
It is a very strong story around music, cello, friendship, family and love in the very sad time in our history. It is just amazing how Aronson had survived through the worst possible situations for such a long time. I got so involved imagining pictures, situations, and sceneries in this book. The author depicts the countryside beautifully contrast to what happening in ghettos. It is so true that if we think about the pieces we know well, we can time precisely, like Aronson sang 3 cello concertos to time for 1 hour. Also I liked Aronson’s word, somethings like “Thinking kept him going. That was still free to do anytime.”

対岸の彼女  角田 光代 (文芸春秋社)  11/25/09
これは、普通の主婦のお話。弱気な主人公が、次第に強くなり、「周りの目」を気にしなくなる。中々元気が出る本です。本当に私も思うけれど、他人は自分が 思うほど人の事なんて気にしてないし、仮に気にしていたって、そういう人を気にして何かをする程、意味’のないことなないと思います。何故って、それで自 分の行動を決めて、上手くいかなかったら、どうすれば良いの?そういう時に世間は責任取ってくれる訳じゃないからね。人生は、やりたい事と、やらなければ いけない事で、溢れていて、時間はいくらあっても足りないでしょ?

空中庭園  角田 光代 (文芸う春秋社)  11/18/09 
とても惹きこまれる小説です。あまり角田さんのご本は読んだ事がないのだけど、これから少し読んでいきたいなあと、思っています。桐野 夏生さんの 「OUT」の時にも思ったけれど、とんでもなく醜かったり、生々しかったすると、それが突然すーーと気持ちに入って来て、とても自然な感じになる。すごく 変なんだけど、体にぴったり来るセーターみたに、心地良い感じ。滅茶苦茶ともいえるこの家族が、日常の中からいろい見つけて行く様が、角田さんの才能で、 スムーズに描かれています。お奨めです。

ウーマンズ・アイランド  林 真理子  (マガジンハウス) 11/15/09
最初から読んでいくと、いろいろな女性が出てきて、ありゃーどんな展開なのかしら、と思ってしまいます。最後の章エピローグ「深沢裕人の告白」が、正に日 本流のオチ。そういう事だったのか、と納得です。どんなにスターでも、そりゃあ普通の過去もあるし、毎日はトイレにも行けば、夫婦けんかもする。そして、 帰っていける港があるって事が、本当に本当に大事なんじゃないのかな。

夜ふけのなわとび 林 真理子  (文芸春秋社) 11/10/09
林 真理子さんのエッセイ集、久しぶりに読んでみました。この方、本当にすごいですね。こういう軽めの本も、見事にさらっと書き、直木賞その他の文芸賞も 総なめして、又、雑誌インタビューなども沢山こなし、どういう毎日を送っていらっしゃるのでしょうかーー?ご自分のまわりに起こる事柄を、面白おかしく、 時には超軽薄調で、正に変幻自在。こんなに頭が良い方は、中々いらっしゃらないのでは、ないでしょうか。林さんのご本、「本を読む女」や「葡萄が目にしみ る」は、私の大好きな本です。

銀座のカラス 上・下  椎名 誠  (朝日新聞社) 11/06/09
これは椎名さんのご本を一度も読んだことがないという貴重な人がもしも、もしも、存在したなら、是非最初に触れて頂きたい、青春ぶっちぎり本です。周囲に出てくる登場人物が、もう本の中から飛び出して来そうなほど、躍動しています。椎名さん天才!!

続 岳物語 椎名 誠  (集英社文庫)  11/04/09
これは、かの有名な(こんな事を言うから、ご本人の岳さんが、遠くサンフランシスコに住んでいるのかな??と言っても、私が住んでいるロスアンジェルスと は、少し離れた隣町ですけどね!)ご子息の岳さんの周りを描いたもので、犬やら人間やら、木々や自然やら、すごく良いバランスで、出て来ます。私にも自分 が生んだ子供ではないけれど、息子がいるので、何となくふあーーーーと、いう気持ちで、読ませて頂きました。私も、彼とは沢山の思い出があるからね!

海ちゃん、おはよう  椎名 誠 (朝日新聞社) 11/03/09
はっきりこれらの、最近読んでいる椎名さんのご本はすべて、以前読んでいて、もう一度ページをめくって、味わってみたくて、読み直して いる訳です。これは、お嬢さんが生まれたあたりのお話を元に、とても素敵な若夫婦の成長の姿を、追っています。若夫婦でない私にも、感動的です!

新橋烏森口青春編  椎名 誠 (新潮社)  10/31/09
これは、「銀座のカラス」同様、椎名さんの若きころの時代を描いたもので、中々青春しています。そして、この辺が本当に椎名氏の才能な んだけど、この作り話と実話の境目がごっちゃになって、あたかもセピア色の映画を見ているような、何だか不思議な感じに取り付かれるんです。元気やら、躍 動感から、もうすごく肯定的です!

すっぽんの首  椎名 誠 (文芸春秋)10/28/09
椎名中毒になりきっている私です。まあ、これが「アルコール」やら「薬物」なら困るけどね。と、椎名語調になって、すっかり中毒症状を顕著に現しています。これも、ご自身の身の回りにある出来事を、椎名目線で追った、素敵な短編集です。お薦め品。

ニューヨークからきた猫      椎名 誠 (朝日新聞社) 10/25/09
著者の生活の周りにある人、物を優しくとらえている、椎名さんの傑作私小説/エッセイ集。すっと読めてしまうので、お薦め。

波切り草 椎名 誠 (文藝意春秋社)10/21/09 
これも私の大好きな椎名さんの私小説/エッセイ集です。こういうのって、本当に読者を行間に引きずり込ませ、あっという間に読んでしまいます。椎名さんの お話しのテンポは、まさにRubato。これは、テンポを感性のままに、自由に膨らませ、それでいてとても自然だからです。他のご本では、ご自身の不眠症 の事など書かれていらっしゃって、いつもいつも長調(メージャーキー)だけではないご様子ですがーーーー。

春画  椎名 誠 (集英社文庫)10/18/09 
これは、エッセイ集なのか、私小説集なのか、想いを膨らませながら読ませて頂きました。まさに、椎名さんの世界。優しさの一杯詰まった家族関係や友人達と の日々。良いなあー、と憧れながら、だけどこれってお話しなんだっけと思ったり。又、しばらく椎名さんのご本との日々になりそうです。

かえっていく場所    椎名 誠 (集英社)  10/15/09
椎名さんのエッセイ集は大好きです。このご本では、ご家族の事にも沢山触れていらっしゃるので、読者としては、あれやこれやと想像しな がら読む事が出来、楽しかったです。又、ご自身の気持ちも随所に書かれているので、作者ととても近距離に感じました。素敵なエッセイ集です、とって もーー。南米の果てで息子さんと再会なさるシーンでは、こちらもジーンとなりました。私も時折南米に公演旅行があり、ホテルでの一人の時など、どーんと寂 しさを感じる時もあるので。でもこのホームページの写真を見てもらうと分かるでしょうが、チャンスがあれば公演の合間に、結構街を一人歩きして、楽しんで いますけどね!

レイクサイド   東野 圭吾 (文春文庫)  10/13/09 
ああーーー又もや東野さんのご本を読んだのです。最後のどんでん返しまで、読者を引っ張っていらっしゃる力、本当にすごいですね。この本の主人公、俊介が 信じ込まされているシナリオは、すぐに「作り物!」という事を分からせておきながら、その裏の真実は何だーーーと、読者を悶々とさせてしまう手法。それぞ れの人物描写の確かさ。東野さんの才能に、またもや敬服です。でも私事を言わせてもらうと、変人子供だった私は、親に私立の中学を受験したいと申し立て (小学校で男子にいじめられていたので、女子高を断固希望)、説得(だって月謝も高いですものね)。まだそんなに中学受験というのが厳しくなかったことも あり、目的校に入学、そこで、生涯の友人達を得たのでした。と、ハッピーエンド物語なのです。東野さんの文章は、きれが良く、かといって端折る事もなく、 自然でいて、とても魅力的。そして当代一の伊達男、と来りゃあ、もう言う事なしです。

Chopin in Paris          Tad Szulc        (Da Capo Press)       10/5/09
If you are a fan of Romantic music it is a good book to read and to learn about the lives of big Romantic composers, of course including Chopin! Like Clara Schumann’s book I read several months ago it is really interesting to imagine the interaction of those big Romantic composers, Liszt, Mendelssohn, Chopin, Schumann—. As a pianist Chopin’s music has been a part of my life. I started to play his small pieces when I was very young, and through schools up to my doctoral degree I had played most of his music. After finishing school I have learned more of his music! I have listened many of Chopin’s recordings by big names. Pollini’s recording of Chopin Etudes was my bible when I was at the Toho conservatory in Tokyo. Now I teach those pieces for my students, and I am always amazed how idiomatic his piano pieces are. I wish this book was little bit more concise, but I enjoyed being a part of lives in Paris while I was reading it!

虹を操る少年   東野 圭吾  (講談社文庫) 9/26/09
とても恐ろしく、そしてファンタジーなお話しですね。”音楽”をやっている者にとって、光楽という発想はとってもおもしろい!いろいろ想像してしてみまし た、自分を観客に置いてみてーー。実際光の点滅が激しい映画を見て、癲癇の発作を起こした人がいるので、”光”の影響力はかなりと思いますね。でも、”五 感”というように、見るものと聞くものの感性は、全く違う範疇に入るので、この本に出てくる怪しい気持ちの良さは、どんなものだろうか、と、今も想像の翼 を羽ばたかせています!

どちらかが彼女を殺した  東野 圭吾  (講談社文庫)  9/24/09
こんな推理小説って有りですか???結論のないお話ですよ。本当に!何だか、魚の骨が喉に刺さって、何日も経っている状態です。東野さんの、いじわる!と、大声で(でも心の中で!)叫んでいる私です。このジレンマに勝てる人は、是非読むべき。

ひとは情熱がなければ、生きていけない  浅田 次郎9/15/09
タイトルだけで、本当に十分なくらい、浅田さんのおっしゃること、モットモとひれ伏してしまいます。大共感です!この8月に義理の父(アメリカの父)が亡 くなり、その生き様を見ていて、ああ本当に人生一回、一期一会、自分の真実に忠実に、一生懸命、そしてうんと楽しく、人生全うしたいなあと、思っていま す。それはどんなことでも結構。時間も忘れて、のめり込んでしまえるような事、そしてそれをひたすら生涯続けられる事に出会えた人は幸せです。これは、社 会現象でちょっと気の利いた事でも、自分探し(ごめんさい。この言葉、私あまり好きじゃないんです)でようやく見つけた事でもなく、自然に自分達の人生に 入って来て、もうそれに夢中!となる事。皆それぞれに、顔も体格も性格も違うように、友達がやってるからーーということでは、ないはずですね。偉そう にーーお許し下さいね。こんな事を言わせて頂くきっかけを下さった浅田さん、ありがとうございます。

我らが隣人の犯罪  宮部 みゆき   (新潮社) 9/12/09 
宮部さんも私の大尊敬する作家の一人です。この本も、なかなかですよ!表題の作品も、お洒落です、とっても。音楽で言うと、大家の作曲家は、何というルー ルもなく、突然不思議な転調したりするのですが、それが何とも自然でチャーミングなんですよね。そういう超自然派天才ですね、宮部さんは。宮部さんの江戸 物も、是非お薦めです!

パラレルワールド・ラブストーリー  東野 圭吾 (講談社文庫) 9/10/09
東野さんのご本、又読んでしまいました。これも、文章の構成が素晴らしい!やはり、東野さんは、天才です。そして、いつも人の心を、何とも言えない正直さ と美しさで、描いています。現在と過去の時間を行きつ戻りつして、最後の「決定の瞬間」に持っていくすごさ。こういうお話を、どうやったら、同じ人間の脳 みそで生み出せるのでしょうか。東野さんのテクノロジーのバックグランドと、感性が融合して、このラブストーリーに行き着くのでしょうか。主人公の崇史 に、ついつい作者の東野さんを重ねてしまう、私です。

ワニのあくびだなめんなよ   椎名 誠  (文藝春秋) 9/5/09
久しぶりに椎名 誠さんのご本を手に取りました。この方(ついこういう呼び名になってしまいます!)のお話し大好きで、以前はよく読んでいたのに、何故か 最近ご無沙汰していました。椎名さんは、ご自身のカーナビ「人妻ゆうこ」を、しばしの間ほったらかしにしたリベンジをお受けになっていらっしゃいますが、 久しぶりの椎名さんのご本は、相変わらずのテンポの素早さと、発想の極端なすごさで、私を前より虜にしてしまいました!私の愛するアルゼンチンに椎名さん も心を奪われていらっしゃるのは、嬉しいことです。音楽屋の仕事をしている私は、サバイバル地には行かず、南米のパリと呼ばれるブエノスアイレスです がーー。私は昨日日本公演からロスアンジェルスの自宅に戻ったのですが、椎名さんのおっしゃる日本人の「マニュアルしゃべり」には、まいってしまいます。 女性は、小鳥のような声で、固まったような笑顔とともに、マニュアル語を使うので、こちらはどうしたら良いのかーー。全く困ってしまいます。という訳で、 今後も椎名さんの、「男の中の男」気を、ご本から堪能させて下さいませ。

茉莉花茶を飲む間に  林 真理子 (小学館) 9/1/09
ママ和子を中心にした、「青」という紅茶専門店のお客さん達のお話。林さんのすごいところは、一時代前に書かれたトレンド物なのに、この2009年に読ん でも、全然古くさい感!がしないところです。いままでにも、かなり林さんのご本読ませて頂いていますが、文才と世俗感がたまらないですね。そして、女性を 書くと右にも左にも出るものなし!です。不思議なくらいに、女性の心が読めてしまうんでしょうね。以前から、同世代の女性文筆家では、ぐんを抜いているな あと、思っていましたが、今回も脱帽です!

月のしずく  浅田 次郎 (文藝春秋)  8/20/09
またもや、浅田さんの短編集です。これも、表題の「月のしずく」、とっても良いお話です。浅田さんのエッセイを読むと、こういうお話が、突発的に浮かぶよ うな事を書いていらっしゃるので、驚きます。何ていうか、どこにでもいるような、お隣さんのお話を、こういう風に、きれいに書けるって、どういう事なのだ ろう・・と、思います。今後も、続けて読ませて頂きますね。

薔薇盗人   浅田 次郎 (新潮社)  8/17/09
浅田さんのお名前を本棚で見つけると、つい手に取ってしまいます。この短編集も、とても良い出来ですね。特に、表題の短編、素敵です。どういう立場からでも、本質を見られるって、すごい事です。宝物箱のような、短編集。大推薦本です。

彼岸先生    島田 雅彦  (新潮文庫) 8/15/09
本の裏のご案内のところに、「師弟関係を描いた平成版<こころ>ーーー」となっていますが、私としては余り両者を結びつけるものはない ような気がします。彼岸先生と僕との深い信頼関係、愛情、素晴らしい!でも、私には途中からよく話しの焦点が掴めなくなってしまいました。私の脳の軟弱さ ですね。でも、彼岸先生が精神病院に入り、そして弟子の僕に日記を残すというくだり、良いですね。そして、完璧な放蕩者の暮らし。谷崎といっても良いいんじゃないかなあ。


僕の行く道   新堂 冬樹  (双葉社)  8/12/09
この本は、最初児童書を念頭に書かれたのかなあと思ったら、「小説推理」に連載されたものに加筆となっていて、予想外でした。でも、お 話自体は、とっても好きです。ストレートフォーワードで、何だか直球だけの勝負で野球に望むような感じですね。最後のお母さんとの出会いがどんでん返し的 で、そこが「小説推理」--という事なのかしら。大人にもとても感銘を与えるけれど、私は是非小学生に読んで欲しいです。

誰よりもつよく抱きしめて   新堂 冬樹   (光文社) 8/10/09
夫の過度の潔癖症で夫婦関係が崩れそうになり、そこから新しい光とそして夫婦間の絆を見つけていくお話。ゲイの人のお話を精神的な病いと一緒に語っているのは非常に変な気がしました。素敵なお話だけど、少し焦点がずれっちゃっているかなあーとも思いました。

鉄道員  浅田 次郎  (集英社)   8/8/09
この本は昔映画で見たことがあり、何だか映画の印象が強すぎて(良いことなのか、悪いことなのか)、余り本の中に入っていけませんでし た。これはどういう事なんでしょうね。もし逆に本を読んでから映画を見ても同じ感想なのかしら。でも叙情的で、私の家族が昔住んでいた秋田県の町をちょっ とだけ彷彿させる感じで、共感出来ました。このタイトル以外のお話も、浅田さんらしくて(こういう言い方って、何だか最低ですね)、一気に読んでしまいま した。

霞町物語   浅田 次郎  (講談社)  8/5/09
これもとても良い本です。私も日本での高校生・大学生時代は、いろいろと遊び歩いたものだけど、この時代のカッコ良い遊び人の主人公 と、何ともいえない素敵な江戸っ子の家族。特に、おじいさんの背筋のピンとのびた、真性江戸っ子らしさが良いですね。一話一話の中に、素晴らしい人間ドラ マを盛り込んで、ぐぐぐーんと引きずり込まれます。訪ねて行って私のコンサート用写真撮ってもらいたい写真屋さん、歌舞伎座で遠くから拝見したいおばあさ ん、能登半島への一人旅で寒風の中ひょこっとお話ししたいおとうさん、商店街での買い物で井戸端会議に加えてもらいたいおかあさん、そして何といってもこ の主人公と、カッコ良いデートを昔風にしたいですね!

月島慕情   浅田 次郎  (文藝春秋)    8/2/09
美しい話の詰まった短編集です。どれも人の優しさ、悲しさ、強さ、泣ける話ばかりです。浅田さんてどういう生い立ちの方なのかしら。こ ういう隣の、横丁の、人びとを描写すると天下一品です。そしていつも不思議なのが、小説家という方達、お話を作るに際して、どんどんもう湧いて来てしまう のか、それともやっぱり準備期間があって創作という順を追うのか、それこそ魔術師ですね。浅田さんのご本、今後も読ませて頂きたいです。

使命と魂のリミット   東野 圭吾  (新潮社)   7/29/09
様々な人のいろいろな想いが、折り重なって出来たこの本。東野さんの心理描写には、いつも本当に頭が下がります。登場人物の真理を追究する心。それが、犯 罪に繋がったり、懐疑心に取り付かれたり、その絡まった糸をほぐしていくように、クライマックスに持っていくストーリー展開。誰一人として、無駄な登場人 物がいない!一人一人が個性を放ち、自己主張して、気持ちの混乱があって、本当に人間臭いですね。だから、東野さんの本から離れられないのです。全く。

聖女の救済     東野 圭吾   (文藝春秋社)  7/25/09 
殺さないように仕組んだトリックで、人を殺すという全く新しい発想!素晴らしいですね。でも、やっぱり浄水器に仕掛けた毒が使われないように、長い間見 張ってる、もしくは、人を側に寄せ付けない、なんて事が、実際に出来るのかな・・と、思ってしまいました。でも、心理描写は、さすがにすごいと思います。

ダイイング・アイ    東野 圭吾 (光文社)  7/22/09
幻想的なお話ですね。現実と空想、実在人物と仮想人物が、交互に折り重なり、まか不思議なストーリーです。出だしの自転車に乗った女性が死んでいく様は、 どうやって書き得たのかしら・・。映画のスローモーションのシーンを見ている様な、リアル感にあふれています。東野さんの新しいジャンルですか?

天国までの百マイル  浅田 次郎 (朝日新聞社)  7/20/09
うわーー。泣けました。素晴らしいお話です。サンマルコ記念病院って、私の記憶が間違っていなければ、実在する病院ではありませんか・・何と説明してよい のか分からないのですが、こんなに正直に、真っ直ぐに、人を愛する事、そして表現する事、私のようなひねくれ者には出来ないので、話にうんと、引き込まれ てしまいました。現在アメリカで、いろいろと問題に関わっていて、こちらの法のシステム、そして社会の構造に直面しているので、こういったもう優しさに、 心も体もじーんと、するのです。日本の社会にも沢山、沢山問題はあるし、生ちゃかだと思う事もあるけれど、日本の優しさ構造には、日本を離れて長く経つ私 は、一人ホームシックにかかるのでした。

流星の絆   東野 圭吾  (講談社) 7/15/09
又も、東野 圭吾かーー!と、おもわれるでしょうね。はい、そうです。告白します。すっかりはまっています。東野さんのエッセイ集なども、間に読んでいる んですよ。この「流星の絆」は、「白夜行」を思い出させてくれました。エッセイ集から覗わせて頂けるように、東野さんご本人のご兄弟もとても仲が良いご様 子で、やっぱりそういう背景もあるのかなあー、と思います。純文学というジャンルがまだ存在するのであれば、この本はまさにそれに匹敵。「惨殺された両親 の仇討ちを流星に誓い合った三兄弟」という本の帯に書かれた宣伝文句には、ちょこっと首をひねってしまいましたが、本当に安っぽいお涙頂戴風では全然あり ませんよ。こんな深い愛情を兄弟で持ち続けられるのか。こんなに兄弟で分かり合えるのか。最初にも書いたように、ご自身の兄弟関係に裏打ちされているとし か、思えません。この本も、一気に読んでしまいました。

宿命  東野 圭吾 (講談社文庫)    7/10/09
この本も、東野さんの素晴らしさを発揮しています。「赤い指」や「容疑者Xの献身」より、随分以前に書かれたもののようですが、ストーリーの奥深さ、川の 流れとは逆流の、幅広い河口からどんどん上流に上って狭くなるような話しの絞り方、そして最後のどんでん返し。人間への興味、そして深い愛情に溢れていま すね。私の東野中毒も深くなるばかりです!

赤い指  東野 圭吾 (講談社)  7/2/09
以前から東野 圭吾中毒なのですが、「容疑者Xの献身」から、一段とその度合いを深めています。もうーー本当に圧倒なのです。前作で直木賞を取られてから の、受賞第一作目と伺っていますが、音楽でいうと、ベースラインがオステイナートを繰り返す中、舞台装置が変わらず、前原家だけにスポットライトが当た り、そのポカンとした空間の中で起こる様々な人間の葛藤、悲しさ、やりきれなさ。そんな中でも、東野さんはいつも愛を見事に描いていらっしゃる。一人舞台 とも似た緊張感の中で、ほんわりとした暖かな人の心持ちが垣間見えて、その人間模様の中に私自身を投影させてしまう。ああなんてすごい世界なんだろう!芸 術の一つの分野を超え、5感のいろいろな部分に訴えかける作品。私の東野 圭吾中毒も、まだまだ続きそうで、そしてそれに効果のある解毒剤はなさそうで す。

容疑者Xの献身  東野 圭吾 (文藝春秋社)  6/30/09
ご無沙汰しています。いくつか本を読んでいたのですが、これといって書く事もなかったので、長く間が空いてしまいました。この本は、東野 圭吾さんのこれ までの集大成(まだお若く、お写真でお見かけするだけですが、とてもハンサムでいらっしゃるので、こんな表現は適切ではないのですがーー)といっても過言 ではない、とてつもない本です。もうとっくの昔に、ミステリーとか推理小説なんていうカテゴリーを突破している東野さんにしても、このストーリーの構築の 深さ、人間の根源に迫る愛の本質性、人間描写の確かさーー。全く、この作者どんな毎日を送っているのかしら。少し前に、スノーボードに凝っていらっしゃる というご自身の本を読みましたし、何ていうか、芥川 龍之介の典型的な写真のような毎日を送っているのでもなさそう。この本のすごいところは、いろいろな トピックを含みながら、乱雑にならずに、シンプルな読後感。まるで、バッハの無伴奏チェロ組曲でも聴いているような、おごそかな気持ちにもなります。以前 内館 牧子さんのご本(名前は失念!)の中で、プロフェッショナルの定義について東野さんが記しておられたのを覚えているのですが、金銭の関わる、なしの 問題でなく、とにかくそれをなくしては生きられないものーー、というような事をおっしゃっていたのです。ごめんなさい、長い年月の中で、多少いびつに覚え てしまっているかもしれませんが、これが、東野さんの根源なのかなあーと、思っています。そして、これは、音楽家である私の人生にも通じますので、何だか 全く知らない方なのに、とっても近くの存在に感じたりも、勝手にしています。ストーカーでは、ありませんで、ご心配なく!とにかく一度読んでみて下さい ね。

東京島   桐野 夏生   (新潮社) 5/16/09
この本も、作家のすごさをもろに感じさせる作品です!こんな奇想天外なストーリーを、ぽっと考えられるなんてーー。読んでいる間中、その奇抜性に驚きと感動の連続でした。桐野さんの才能は留まるところを知らず!私はこの物語に惹かれ、一気に読んでしまいました。

さまよう刃   東野 圭吾 (朝日新聞社)  5/7/09
東野さんも私の大好きな作家です。どの本も、新しい手法が使われ、ずば抜けた才能がひしひしと感じられますね。こんな悲しい終末ってーーと、思いません か?まさに、反ハリウッドです。人生の不公平、でもこの父親は死んでいく時、娘のもとに行けて嬉しかったのでしょうね。誰の人生にでもある、あの時あそこ にいなければーーという瞬間。それが涙になるのか、笑顔につながるのか。 そして、私達の毎日とは、そういった瞬間の積み重ねでもある訳で、時々ここにこ うしている事に、不思議な気持ちになりませんか。

恋   小池 真理子 (早川書房)   5/3/09
又、小池 真理子の本を読みました。忙しくて本に触れる暇がなかったので、何だか一気に読んでしまいました。ストーリー作りの天才さ。まったく脱帽です。 ものすごいまでの人を想う気持ちと、刹那さ、不条理。美しく、悲しく、とにかくのめり込んでしまいます。時代背景がストーリーに力を与え、急展開の渦巻き 状に。すごい本です。

望みは何と訊かれたら   小池 真理子(新潮社)  3/15/09
この作者は、人間の本質を書かせたら右に出る者がいないように思います。周りにある一見見ると素敵なような事を、どんどん削っていって、人間の根源に迫る この強さ。厳しくも、美しく、読む者をとんでもない気持ちにさせてしまう。物語の人物は、特別な訳でなく、とっても正直で、悲しい。この本のタイトルに、 私達どうやって答えたら良いのか。

Clara Schumann    Monica steegmann (Life & Times)  1/30/09
If you are a big fan of Romantic Music this book will be very interesting to read! I had a great time imagining Clara and Joachim playing together, Clara performing Beethoven’s E flat piano concerto conducting by Mendelssohn, encounter between Johannes and Clara, Robert and Clara shared many projects together, Piano trio played by Clara, Joachim, and Piatti—. Also it is wonderful to know Clara’s contribution in Romantic period. I am sure if there was no Clara the Romantic period would have been different.

スローグッドバイ    石田 衣良(集英社)                1/4/09
トレンデイーでお洒落な短編集。気楽に読めて、作中人物に自分を投影出来て、だけど、何なんだと、いう感じ。林 真理子といいこういう本って、やっぱり売れるんだろうなあーー。

Glen Gould: a Life in Pictures    Firefly Books     1/1/09
It was at the LA Arts Walk, one evening on Thursday in December 08. I dropped by one of book stores and found this book sitting on the shelf. I didn’t know much about Glen Gould’s life even though his image has been in my mind for many years. This book came home with me. I spent hours on New Years Eve and New Year’s Day to read and to follow his pictures. It was very interesting to follow his life looking at those artistic photos. He made great poses for photo sessions! If he still would be alive he could be my teacher’s age (Mr. John Perry). He would be still playing piano and making CDs. He did not see the current technology world. He would have a great fun with those TOYS!! I put his Goldberg Variations (1982) CD after finishing the book. I felt his spirit flying around me. He is in joy in this recording.

2008

龍が眠る   宮部 みゆき         12/30/08
流行のテレパシーもの。宮部さんはとても尊敬する作家だけど、この手の話しには個人的にちょっと飽きたかなあーー。

Lang Lang: Journey of a Thousand Miles with David Ritz  (Spiegel and Grau)  12/28/08
Much better than I expected! We usually take Lang Lang as a super technical pianist without deep thought, but through this book we discover his other side in his life. His love to his mom and dad, his love to piano, his love to be famous, his love to be number one–. Of course a miracle did not happen to his life. He made it by himself with constant drive to be No. 1. He practiced basically all his childhood! If you are young pianists and hoping to be a good one your should read this book.

逝年 Call Boy II   石田 衣良(集英社)  12/25/08
石田独特の性への美しい描写が光る。人間への普遍の優しさ。いつもながら、トレンデイーな背景に男女がきれいに書かれている。東京という都会をクールに見つめながら、人間の営みを繊細に問う。

怪しい人々   東野 圭吾(光文社文庫)   12/22/08
素晴らしい短編集。ユーモアと緻密な人物描写。絶賛!宮部とともに、私の大好きな作家です。

楽園(上)(下)   宮部 みゆき(文芸春秋社)  12/20/08
ミステリー、テレパシー、社会問題などを鋭く結ぶつけた優れた作品。親子の愛、複雑な家庭環境、本質を見つめる体質。世の中の不公平をすべて飲み込み、そしてとんでもなく優しい目で見つめる。