中米公演旅行-メキシコから(新聞への連載エッセイから)10/2/10
October 3, 2010
メキシコで、私の今回の公演旅行も終わり。メキシコシテイ(メキシコの首都)とプエブラ市で2回の公演を行いました。私の住んでいるカリフォルニア州は、南の端でメキシコのテイフアナ市と国境が接しているので、通常「メキシコ」というとお隣に行く、と言う感じです。しかし、メキシコシテイはずっと南に位置しており、カリフォルニアとの国境から約2800キロの距離。現在全ての公演が終わり、メキシコシテイの空港で帰りの飛行機を待っているところです。
メキシコシテイは、標高2240メートルの高地にあるので、ちょっと頑張って歩くと息切れし、沸騰温度が違い、朝晩の温度の差が激しく、と、来る前には知らなかった事がいろいろありました。コンサートは2回、メキシコシテイとプエブラ市で。2公演とも国際交流基金メキシコ事務所の主催で、それぞれ大学内の講堂で行われました。メキシコシテイから車で約2時間のプエブラ市では、お客様から熱狂的なお言葉を頂き、公演旅行の最後に、とても良い思い出になりました。以前にも書きましたが、いろいろな国の人々と音楽を介して交流を持てるのは、音楽家冥利に尽きます。
今回の公演旅行に選んだテーマ「アジアと西洋を音楽で繋ぐ」というのは、今後も自分の人生の中で、続けていきたいテーマです。コンサートの中でのお話しも、何とかスペイン語でクリア。そのお国の言葉でお客様に語りかければ、多少発音が悪くても、距離がうんと近付くと思います。又今回は、それぞれのお国自慢の歌をピアノにアレンジし、アンコールで演奏。これも好評を頂く事が出来ました。
メキシコシテイでは空いた時間で、多少観光も。長年の憧れである、メキシコの著名女流画家フリーダ・カーロの家を訪れる事が出来たのは、感激でした。本や映画などで、慣れ親しんで来た彼女の作品を、彼女の住んでいた家で見る事が出来、更に感動。そして、彼女がご主人のデイエゴ・リベラと一緒に住んだこの家は、そのものが芸術作品です。ラカサアズール(水色の家)と呼ばれ、この中を見学出来たのは、私にとって、とても貴重な時間になりました。彼女は生涯病気と闘い、長い年月をベッドの中で。その苦しみとあがきが彼女の芸術の中で多く見られますが、彼女の使っていたベッドを見ることが出来て、私はしばし時間が過ぎるのも忘れました。それは、美しい庭が一望に見渡せる場所にあって、扉を開けると、寝ながらも外の空気に触れるように出来ていました。
帰国前日に半日時間が空いたので、メキシコシテイ内のチャパルテペック城と近代美術館も訪れました。ホテルのフロントで頂いた簡略地図をみると、ホテルから歩いて行ける距離。しかし、これが結構な距離で、まさに「標高の高さ」が私に直撃。少しフラフラに。オマケに、帰りは近道を行こうと思い完全に道に迷い、警察の人に道を尋ねたところ、この付近の一人歩きは危険だからと、警察の車でホテルまで送ってもらうという、おまけまでついて来ました。近代美術館は美しい建物で、館内を廻りながら静かな時間を過ごし、その後お城へ。これは、同じ公園内にありましたが、ちょっと高台に立っていて、そこまで登るのが、又一苦労。まさに標高の壁が。しかし、これは行く価値大有りでした。スペイン統治時代のもので、歴史を感じるだけでなく、とても美しい建物で、居るだけで素敵感に包まれました。あちこちに散りばめられた芸術品や当時の生活をしのばせる部屋を見て、楽しい時間を過ごせました。この後、ホテルへの帰途で「迷った」という訳です。何事も無くて良かったのですが、ここで犯罪にでも巻き込まれていたら、沢山の方にご迷惑をかけるところでした。過信は禁物。特に海外では、慎重な行動が望まれますね。反省しきりです。
病気にもならず、天候にも恵まれ、飛行機の遅延もなく、とても有意義な公演旅行が出来ました。お力を頂いた多くの方に、感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました。