Newspaper Essay Series (新聞エッセイ)

2008 Newspaper Essays

December 31, 2008

第22回 2008年11月24日
ロスアンジェルスの雨?
今年も早いもので、もう一ヶ月ちょっとですね。ロスアンジェルスはようやく山火事のシーズンも終わり、今週は雨が降ると大(!)予報さ れています。日本のように四季がはっきりしていて、晴れの日もあれば、雨が降ったり、雪が降ったりという気候と違い、ここロスアンジェルスでは「雨」は珍 しいのです。一年に雨の降る日が20日強ですから、ここで生まれ育った人達は、ちょっとした雨でも大騒ぎ。雷でもあろうものなら、大変な事です!雨が当た り前の地域でも、雨の日には事故が増えて渋滞になるのですから、ロスアンジェルスの雨の日の外出には、かなりのゆとりが必要になります。

今回の山火事の一箇所は、ここ数年の中で我が家に一番近いところが燃えました(約5-6キロの距離)。煙もすごかったですが、夜半に見える炎ももの すごかったです。現在の家は山の中腹に建っているのですが、それでも住宅地なので、もうちょっと山奥に住んで、自然の中での暮らしをしてみたいとずっと 思って来ました。しかし山火事の怖さを近距離で感じると、山暮らしの長所、短所を思ってしまいます。ロスアンジェルスは海も近いですから、場所によって は、山の上から海も見え、かつ町の中心まで20-30分くらいで行け、プライバシーもあるという素晴らしいところもあるのですがーーー。この山火事で、大 変残念な事に700-800軒の家が灰となり、多くの家が半焼しました。

アメリカは今週が感謝祭で、七面鳥の災難(!)時です。子供達が家に戻り、何世代にも渡っての大家族でお祝いする事が多く、一匹を一家で料理しま す。これがとても時間がかかり、オーブンの中で半日以上料理しないと中まできちんと焼けません。この七面鳥にクランベリーソース、パンプキンパイ、コーン ブレッドなど、昔からのアイテムが勢ぞろいして、一家の食卓を飾ります。西洋式ですと、各々のお皿に盛られるのでなく、其々の料理が廻って来て、自分の好 きな分を人数などを考えながら、自分のお皿に取り入れます。こうして子供達も、自分勝手に取るのではなく、廻りを見ながら料を加減する了見を磨きます。 又、多くの場合、子供達は、「子供テーブル」に子供だけで坐り、大きい子達が小さい子供達の面倒を見ながら、大人の会話を邪魔しないように、躾けられま す。

この感謝祭が終わると、夜半は4-5度まで気温が下がり、ようやく本当の秋がやってくる感じです。ちょっと肌寒くなると、ロスアンジェルスの住民で 着る機会の少ない毛皮のコートの持ち主は、ここぞとばかりちょっと汗ばみながら着ていますよ!忙しくなる年末、どうぞ皆様お体ご自愛下さいね。来月今年最 後のお便りを書き、2008年も終了ですね。
第21回 2008年10月27日
南米コンサート旅行・第2話
前回のお便りは私の南米公演旅行の途中で終わっていましたね。あの後コスタリカを経て、現在ロスアンジェルスに戻り、こちらでの秋のコンサートシーズンを忙しくこなしています。

コスタリカというと、緑が美しく、珍しい鳥がいて、中米の楽園のようなイメージがありませんか。もちろん観光地として、整備されているところは、海 岸沿いも山も美しいのですが、都市部は大変なものがあるようです。例えば、あの国はこの21世紀に、「住所」というものがないのです。ですから郵便という ものが、ほとんど機能していません。考えても見てください、郵便を出すときの宛名に、「○○教会から南に30メートル行って、酒屋の角をまがって20軒目 の黄色い屋根の家」という風に書く訳ですから、その酒屋がなくなっていたり、すべて主観的な判断なので、かなりの頻度で郵便は届かないのも当たり前です ね。又、浄化設備がほとんどなく(多分高級リゾート地はあるのだと思いますが)、そういった面での衛生さに疑問が残ります。又、ゴミ問題も滅茶苦茶で、自 分の家が綺麗ならそれがすべてという風で、大量のゴミが道路に放置されたままです。何だか悪口オンパレードになってしまいましたね。でもちょっと郊外に出 ると、緑の美しさが目に入って来て、ほっとしたのを覚えています。

コスタリカでの私のコンサートの目的は、日本大使館が年に一度開催する「日本週間」のオープニングコンサートと、それに続く現地の国立大学でのコン サートと公開レッスンでした。日本週間のオープニングコンサートは、最初に紋別で演奏させて頂いたような、日本の音楽ばかりのプログラムでした。演奏後 も、ちょっとしたパーテイーが会場ロビーであり、沢山の方に熱心な質問攻めに合いました!国立大学での公開レッスンは、生徒さん達のレベルも高く、特に若 い層に将来性を感じる子供達がいました。コスタリカが最後の訪問国だった事もあり、すべての仕事の後に一日自由日を設けていたので、コーヒー農園見学に。 ここは、上記で述べた“整備された観光地”で、すべてが綺麗に完備され、優秀なスタッフに支えられ、まさに別世界!でした。

といったように私の3週間強の旅も終わり、現在はロスアンジェルスでの暮らしに戻っています。大学は学期半ばで、私のピアノの生徒達も調子に乗って 来たところです。12月始めに演奏の試験があり、12月も半ばにはいると冬休みで、春の学期が来年1月後半に始まります。ロスアンジェルスでの演奏会も結 構あり、こちらは、南米公演とは異なり、毎週のようにいろいろなアンサンブルで演奏しています。先週はフルートとの2重奏、歌の伴奏と2回のコンサート、 今日はトロンボーン奏者との2重奏のコンサートです。それでは、そろそろその演奏会に向けて準備しなければ!皆様もどうぞお元気で。又、次回のお便りでお 会いしましょう。
第20回 2008年9月28日
南米コンサート旅行・第1話
ついに私からのお便りも20回を迎えました。今回は記念回に相応しい文章になりそうです。と申しますのも、現在私は中南米コンサートツ アー(5カ国、7都市、9公演)の真っ最中だからです。もしお手元に世界地図があればそれをご覧になって、私の辿ってきた道のりをご一緒に歩いてみません か。

私の旅はまずロスアンジェルスの我が家を出発、アメリカの南端のフロリダ州にありますマイアミ市経由で、ブラジルのサンパウロ市に到着。ここで第一 回目のコンサートを始めました。北米から南米への旅はほぼ直線で南下するので、時差がない分身体には楽ですが、やはり相当長い距離ですので、ここの道程だ けで、約一日かかりました!サンパウロは日本でも良く知られている、日本からの移民の大変多い場所で、お客様も日系の方が大勢いらっしゃいました。それか ら、ブラジルのリオデジャネイロ市へ移動。ここは、コパカバーナなどのビーチで有名な、風光明媚な美しい街です。海岸が特に美しく、歴史もあり、街に活気 があふれています。ここでは、サオベント教会という大変歴史のある、金の装飾が美しいコンサート会場でした。とても落ち着いていて、演奏している私自身も 心が洗われて行くようでした。ピアノの音が教会の中に響き、とても良いコンサートになりました。リオでは、音楽院で公開レッスンも行い、学生達と楽しい時 が持てました。次の移動先は、ブラジルの首都ブラジリア市です。ここは、50年くらい前に、全く何もなかったところに、新しい首都を築くという事で設計さ れた未来都市で、町が飛行機の機体に模して作られています。ですから、皆さん、「私のオフィスは飛行機の左尾翼の辺りです」とか、「コンサート会場はパイ ロットのいるコックピットの辺りです」などと表現して、大変面白いのです。

ブラジルの3公演のあとは、首都ブラジリアからサンパウロ市に戻り、ウルグアイのシ首都モンテビデオ市へ移動。ここでは、2公演あり、一つ目の会場 は、ヨーロッパの雰囲気を強く感じさせるソリス劇場というところで、1000人を超える沢山のお客様が入りました。その他の劇場でもそうですが、お客様が 乗って聞いて下さるとこちらにも気持ちが伝わり、音楽を通じて正に気持ちが一つになるという感じです。モンテビデオ市滞在中は日本大使の公邸に宿泊、ここ で2回目のプライベートなコンサートを開催しました。大劇場とは違ったアットホームな感じで、終了後にワイン片手にお客様と歓談、大使もとても喜んで下さ いました。モンテビデオ市から大河を超えたところにあるのが、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス市で、ここは飛行機でも30分程度で、まさに対岸にあり ます。

アルゼンチンといえば、タンゴですね!日本でも近年人気が高まり、踊りとしても、音楽としても、世界中で大変良く聞かれるようになりました。ブエノ スアイレス市は、世界の国々の中でも私のお気に入りの場所です。この街は南米のパリとも呼ばれるように、文化、町並み、人々の感じなど、とても洗練されて おり、町をぶらついていてもとても気分が良いです。人々も皆お洒落で、特に年配の紳士方は、ピンクのネクタイに気のきいたジャケットなど着込み、それが雰 囲気にしっくりきていて、美しい女性陣達と相まって絵のようです。音楽のレベルも大変高く、世界的な音楽家を沢山搬出しています。コンサート会場は落ち着 いた会場で、音響もとても良く、さずがブエノスアイレスだと思わせました。コンサート前日はベートーベン音楽院で、公開レッスン。コンクールに入賞したよ うな学生が弾き、こちらも力が入り、聞いていたお客様にも刺激的であったと思います。

アルゼンチンの後は、私にとって始めての国、ペルーで、首都リマ市での公演でした。ここは、ウルグアイやアルゼンチンのように、ヨーロッパの伝統の 中で国が成り立っているところと全く違い、インカ帝国の後にスペイン人が入って来て国を築いたところなので、文化も人も2つの世界で融合していて、街の醸 し出す色合いが180度違います。スペイン人が持ち込んだカトリック教会は多くの場合インカ帝国の寺院の跡に作られており、侵入者と原住民との関係が伺え ます。インカ文明は日本でも有名なように、大変高度なものを持っていたので、現在でも残っている遺跡は感動的です。

そしてこれから、最後の公演地、コスタリカの首都サンフォセ市で2公演と公開レッスンが待っています。コスタリカからのご報告は、ロスアンジェルス に帰宅してから、カリフォルニアの秋のお便りと一緒に発送致しましょう。まさに音楽は言葉の壁を越えた、素晴らしいコミュニケーションで、音楽家である故 にいろいろな土地に行ける幸せを感じています。コンサートが主の旅ではいわゆる観光は余り出来ませんが、街を歩き空気を感じ取り、人々に会い土地の食事を して、練習の合間に教会や古い建物などを訪れ静かな時を持つ、こんな旅をこれからも続けていけたらなあと、思っています。それでは、今度はロスアンジェル スの自宅からお便りします。紋別は次第に寒くなっていると思いますので、どうぞお体お大事に!
第19回 2008年8月20日
今年のオリンピック
オリンピックも連日熱戦を繰り返し、熱い戦いの陰にそれぞれの人間ドラマがあり、本当に魅せられてしまいます。これが皆様のお手元に届くころには、4年に一度のこのスポーツの祭典も、幕を閉じているころかと思います。

私もオリンピックとはいきませんが、人様の前に出て演奏致しますので、普段の練習とは全く違う緊張感と付き合う大変さを、分野は違えど多少共有出来 るかと思います。我々音楽家も、100パーセント準備して大体本番で70-80パーセント発揮、100パーセント近く自分の力を発揮する為には、150 パーセントくらい準備しなければいけないと良く言われます。もちろん、これは経験、個人個人の精神性によって大きく変わりますが、こうして万端の準備をし ていても、本番でどうなるかは、本当に分からないのです。しかし緻密な練習を重ねる事によって、本番の出来と普段の力の差を小さくする事は出来ます。例え ば、テクニック的に難しい箇所が楽曲の中にあれば、何百回、何千回と、ゆっくり練習したり、だんだんスピードを早くしたり、又右手と左手を別々に練習した り、リズムを変えたり、いろいろな形で克服して行きます。又暗譜で演奏する恐怖と対面するために(譜面なしで演奏する場合、多くの演奏家が忘れてしまうの ではないかという恐怖にかられます)、楽譜を音符という形態だけでなく、全体の“絵”という感覚で記憶したり、片手づつ覚えたり、様々な方法で記憶を確実 なものにします。こういった我々音楽家の状況を踏まえても、15-6歳の若い体操選手を見ていていると、心底敬服してしまいます。他の友人達が遊んだり、 家族と旅行などしている間、この10年くらいを、体操にすべてを注いで来たのだと思います。肉体の技を磨き、精神性を高め、このオリンピックという世界一 を競う場に備えて、一身に精進して来たのですね。どの競技にしても、どの国の選手にしても、見ている私達に深い感動を与えます。

オリンピックの興奮も去り、紋別ではそろそろ秋の気配でしょうか。こちらロスアンジェルスは、とても過ごし易い日々で、冷房がいらないどころではなく、朝 晩は冷やっとするぐらいで、思わず窓を閉めてしまう事もあります。それ以外はカリフォルニアの典型的なアウトドアライフ、窓から爽やかな風が吹き、空は青 くという、毎日です。こちらの人々は、屋外で過ごすように家を設計するので、多くの家にはパテイオという場所が庭にあり、そこにテーブルを置いたり、屋外 用のソファを置いたりして、食事を取ったり、寛いだりします。又、夜は冷え込むので、ストーブの役目をする背の高い暖房器具をテーブルの間に置いたりし て、それでも外の空気の中での、食事を楽しみます。レストランでも、屋外のテーブルはいつも人気ですね!

来月は再び国際交流基金よりの派遣公演旅行で、南米の各国を巡回演奏致します。この夏は新しいCDをリリース、ホームページ開設と、演奏だけでなく プロジェクトをこなして来ました。長い夏休みをそろそろ終わり、大学にも戻り生徒達にレッスンを始める日も近いです。それでは、どうぞ皆様お元気で!
第18回 2008年7月8日
アメリカのだだっ広さと、ガソリン値上げ!
本日は、本格的な夏を迎えたロスアンジェルスよりお便りです!北海道の7月はいかがでしょうか。先週の7月4日はアメリカの独立記念 日。各地でいろいろなイベントが行われ、そのフィナーレは何といっても盛大な花火です。今年は、経済上の理由から自粛を強いられた団体も多かったようです が、それでも、ロスアンジェルスの町のあちこちで、ぼんぼんと花火が上がっていました。又、この日はバーベキューパーテイーも盛んで、沢山の家庭で、家 族、友人などを招んで楽しみます。町を歩いていると、どこかしら、バーベキューの良い匂いが漂って来て、空腹の虫が鳴き出してしまいます!私達夫婦も、友 人宅でバーベキューを頂き、ビール片手に、夏の夕暮れを花火とともに過ごしました。

日本でもガソリン高騰は叫ばれていますが、車社会のアメリカでは、本当に深刻です。ロスアンジェルスでは、1ガロン(1ガロン=約3.7リットル) が4ドル80セント(現在の円換算で約513円くらい)で、1リットルにすると129円くらいでしょうか。以前は、アメリカのガソリンは、日本の3分の1 から半分だったのですから、大変な値上がりです。アメリカのほとんどの都市が公共の移動手段がない為、車に乗るしかどこにも行けないというのが実情で、本 当に困ったものです。しかし、こういう状況が続けば、政府も公共の交通に対して、もう少し本腰を入れるようになると、期待しているのですがーーー。

アメリカの都市と言えば、日本と違って、とんでもなくだだっ広いのが特徴です。良くいえばゆったり、悪く言えば、どこに行くにもかなりの距離がある という訳です。例えば、私がロスアンジェルスに来て最初に教えていたロングビーチにある大学は、我が家から片道が43マイル、約70キロ弱でした。現在の 大学はアメリカ的に言うととても近い感覚ですが、片道20キロ弱です。でも高速道路(無料!)が整備されている為、現在の大学までは、20キロの道のり で、約20-25分です。という事は、ガソリンをとても沢山消費する暮らしなのです。ロスアンジェルスは、特にこの“だだっ広さ”が有名で、日本に例えれ ば、東京都を含む関東各県を含んだ広さに、近いのではないでしょうか。こういった広範域に商品を運ぶ訳ですから、物価高騰も激しく、何だか知らないうち に、あれよあれよと価格が上がっています。

今回は、ガソリン高騰に話しが向いてしまいましたが、それでもアメリカの社会は豊かだと思います。何と言っても、消費の国です!この空気が乾燥し た、カリフォルニアの青空のもと、私は日本風に洗濯物は外に干していますが、隣近所から、乾燥機の廻るガランガランという音が聞こえると、何だかとても変 な気持ちがします。これは、私がケチなのか、それとも、皆がどうやったらエネルギーを節約するのを知らないのか。皆様どう思われますか?それでは、又、8 月にお会いしましょう。お元気で、お過ごし下さい!
第17回 2008年5月28日
お天気のこと
皆様その後お変わりありませんか。先週は、6月ももうすぐというのに、突然ロスアンジェルスは寒さがぶり返し、季節はずれの霰が降りま した。雪など見た事もない子供たちは、霰で雪合戦。もちろん手袋など持っていないので、お母さんの調理用のゴム手袋を拝借して、とても可笑しな光景でし た。霰と雨が降ったおかげで、霰が屋根の樋をふさぎ雨水を堰き止め、平らな屋根を持つ工場などは、屋根の上がプール状態になり、屋根が倒壊する家屋も出ま した。本当に自然災害というのは、人間の考えをはるかに超えたところで起こり、自然の大きさと怖さを実感しますね。アメリカの他の地域でも今年は竜巻の被 害が多く、沢山の家が壊れ、人が亡くなっています。テキサスをドライブしている時に、一度だけ遠目から竜巻を見た事があります。私が見た時は、雷と雨を伴 い、それは想像を超える光景でした。

こちらは、メモリアルデイーという休日が5月の終わりの月曜日にあり、これは、戦争で亡くなった方達を思い出す日です。そして、9月の最初の月曜日 がレイバーデイーで、勤労感謝の休日です。どちらも3連休ですが、この2つの休日の間が、おおよそ“夏”の期間となります。もちろんそれぞれの学校によっ て細かい予定は異なりますが、大学はおおよそこの期間が夏休みです。又、音楽の世界でも、この機関は夏仕様で、屋外でのコンサートや音楽祭が多くなりま す。そして、いろいろな事が、ゆっくりになります。といいいますのも、休暇・バケーションに入るからです。「夏だからーー」という言葉が使われ、ゆっくり さを受け入れます。ですから、仕事の連絡などをしても中々返事がなかったりしますが、ストレスは禁物。何せ、夏なのですから!

この春は幸運な事に、ソロのピアノ演奏会の機会を沢山頂き、いろいろな場所で演奏させて頂いて来ました。私はもちろんピアノを弾くのが大好きです が、それをお客様に聞いて頂き、楽しいお話を混ぜながら、喜んで頂く顔を見るのも大好きです。お客様の雰囲気を感じながら演奏していると、こちらも楽しく なります!そして今週は180度変わって、オーケストラの中のピアノとして演奏しています。この場合は、いかに、グループの中に溶け込んで、個人が目立た ないようにするかが、ポイントです。今週のオーケストラは小編成ですが、それでも50-60人くらいの奏者がいますので、個人プレーはご法度!演目の一つ は、ガーシュウィンの「ポギーとべス」というオペラで、乗りの良いジャズのリズムに、ご機嫌な歌手と一緒に、楽しくやっています。

天気が回復し、今日はまさにカリフォルニアの青空です。それでは、又近いうちにロスアンジェルスから、お手紙します。どうぞ皆様お元気で!
第16回 2008年4月21日
アメリカ大統領選挙
あっという間に4月も後半に入りましたね。冬が長く寒い紋別でもそろそろ春の声が聞こえるのではないでしょうか?こちらロスアンジェル スは、春真っ盛り。町中が花で溢れ、オレンジやグレープフルーツ、レモンなどの柑橘系の木が一斉に花をつけるので、香しい限りです。こういった果物の木 は、気候が良いので、かなりのお宅に植わっています。又、鳥も一日中さえずってくれるので、その美しい歌声に聞き惚れる事もしばしばあります。

日本でももうお馴染みになっていると思いますが、今年はアメリカの大統領選挙の年です。沢山いる候補者の中から、スポーツのトーナメント戦の様にだ んだんと選抜されていき、最終的には共和党と民主党から一人づつ候補者を選び、チャンピオン戦(?)となる訳です。現在の最大の注目は、民主党のオバマ候 補とクリントン候補の、党としての候補者選びの戦いですね。(オバマ候補は、実は私が教えている大学で、学生時代に2年間勉強した事があります。)どちら も一歩も引かない構えで、今後どうなって行くか、本当に注目されます。そして忘れてならないのは、全米を選挙運動で動くので、そのかかる費用たるや恐ろし いような額になる事です。個人の小さなお金から、大きな団体まで、寄付をどうやって集めていくかも、大事な選挙活動の一環です。そしてご存知のように、ア メリカは人種のるつぼ、幅広い層に指示を集めなければなりません。11月の本選挙までまだまだ時間がありますが、一日一日候補者の動向に注目が集まりま す。
紋別で数年前に演奏させて頂いた日本のピアノ音楽のコンサート、今年はロスアンジェルスでこの4月に行い、又9月から10月にかけては、南米のコンサート ツアーで演奏させて頂きます。以前にもお知らせしましたように、今回で4回目になる国際交流基金からの文化事業で、ブラジルのサンパウロ、リオデジャネイ ロ、ブラジリア、アルゼンチンのブエノスアイレス、ウルグアイのモンテビデオ、ペルーのリマ、そしてコスタリカのサンフォセと、前9回のコンサートと数回 の公開レッスンが、予定されています。コンサート会場も様々で、数千人の大ホールから、日本大使の公邸でのプライベートなものまで、いろいろあります。こ のツアーには日本の音楽だけでなく、今回訪問する先々の音楽も合わせ世界の音楽を演奏し、それぞれの地で演奏会に来て下さるお客様と、音楽を通しての楽し い触れ合いが出来ればと願っています。

5月にはCD録音も予定されていて、相変わらず忙しくも、楽しく毎日を過ごしています。それでは、皆様もお身体ご自愛下さって、又次回お会いするまでお元気でお過ごし下さいね!
第15回 20008年3月3日
俳優さんとの共演(?)
皆様、早いもので、今年も3月の声を聞きましたね。ロスアンジェルスは例年になく雨の多かった今年の冬ですが、最近は青空が戻り、美しい気候です。我が家の庭も、春の花が咲き乱れています。そちらは、まだ雪の中でしょうか。

2008年も音楽で年が明け、演奏会や生徒を教える事で、毎日がどんどん過ぎています。9月に予定されている南米への公演旅行では、6カ国、8都市 を廻りますが、これに向けて、そこで演奏しようと考えている曲目を、ロスアンジェルスでの演奏会に入れています。ブラジル、アルゼンチン、ペルーなどの南 米の作曲家に加え、日本、スペイン、フランス、ロシアなどの作曲家を演奏、“世界の旅をピアノと共に”というコンサートプログラムを続けています。こちら も演奏していてとても楽しいし、聞いて下さるお客様にもご好評を頂いています。演奏会の中での私のお話しも、聞いて下さるお客様との大きな橋渡しになり、 楽しんで頂いているようです。このプログラムを組む上では、私自身も常にアンテナを張り、機会あるごとに新しい音楽の情報を入れて、沢山のCDを聴いた り、楽譜を勉強したりしています。これも楽しい苦労というところでしょうかーー!

先月は、普段とちょっと違った仕事をしました。オーケストラの新作の演奏があり、その曲の中で、俳優さんが重要な部分を占めており(台詞を音楽の ビートに合わせて話すなど)、その方をコーチしたのです。俳優さんとしては、大変才能のある方で、気持ちよく仕事をさせて頂きましたが、何せ音楽のバック グラウンドがほとんどなく、無からのスタートでした。30時間以上かけてコーチしましたが、本番は大成功。本当に良かったです。この機会を通じて考えた事 は、私達音楽を生業にしている者として、余りにも分かり切った事が、実は一般的には知られていない事も多く、独りよがりにならず、機会があれば、分かりや すく説明していかないといけないなあという事です。又、この俳優さんをコーチしている間に興味深かったのは、出来ない事だけを教えるのではなく、その廻り にある様々な事、例えば歴史的背景、違った作曲家を演奏する上での考察、音楽家の練習の実態など、演奏している曲とは直接関係ないこういった話しが、とて も役立ったようなのです。この俳優さんは、この様な雑談から、何だかとても気持ちが楽になって、音楽にすーっと入っていけるようになったとおっしゃってい ました。

気持ちの良い風に、今日は窓を全開。紋別ではちょっと考えられないでしょうが、外の空気を思い切って家の中に取り入れています。紋別にも早く春の訪れが来ますように。それでは、皆様お元気で!