My Book Reviews

Reviews on Books in English and Japanese

プリズンホテル  浅田次郎  徳間書店 5/11/12
浅田さんの、ユーモアと話の構築性を、世に示したプリズンホテルシリーズの最終版。いやはや、プリズンホテルの面々はすごい。そして、寅さん映画のように、正に下町人情ものなのだ。主人公の小説家は、乱暴もので躁鬱だけど、最後は育ての母親を求めて、取り乱す。取り乱しつつ、自分の本質を見つけていく。音楽もそうなのだけど、私は物語/音楽の情景が、目に浮かぶのが好き。本を読みながら、音楽を弾き/聴きながら、空想にふけり、登場人物達や風景を想像するのが楽しい。この本も、山間の自然の中にある、キンピカホテルでの、人間模様が、手に取るようだ。浅田さんは、何でも書ける小説家で、その一冊一冊が、完成度がとても高く、いつも本当に感服してしまう。

無理   奥田英朗   文芸春秋         5/8/12
無理はするな、と言うのか、無理と思っても気を入れてやれ!と言っているのか、この世の中、無理だらけ、というのかーーー。これは、多分「最悪」の続編っぽい。無理という言葉は大変興味深い。だって、「理」が無いというのだからね。しかし、我々は、無理という言葉を、そんなに深い意味では日常使わない。「そんなの無理に決まってるジャン!」とか、「無理は体に毒ーー」とか。じゃあ「理」がないというのは、無法地帯なのか??全く、混乱させる本のタイトルだ。悪循環という生き方を絵に描いたような数人が、「最悪」と同様、最後に同じ場面に出くわす。私も少し前までは、アメリカの地方には、犯罪なんて存在しない、とアホな考えを持っていたのだ。何せ、広大な土地が広がり、小さな集落に犯罪という絵は相応しくないからだ。が、しかし、何もする事がないと、人間おとなしくはしていられない。この「無理」も、日本の地方都市の実態を強くえぐり、人間の本質をこれでもか、これでもか、とさらけ出す。読んでてちょっと吐き気がしそうになるけれど、私も人間の一員。全くごもっともな事だらけなのである。

サウスバウンド  奥田英朗    角川書店        5/4/12
多分読者すべてが、上原一郎のファンになるのだ!作家ってのは、全くすごい話を考えるもので、その頭の構造、日常って、どうなってんの?と思ってしまう。この元過激派のお父さんの、「世間」に迎合しない生き方に、強く惹かれてしまう現代人は大勢いると思う。本当に魅力的な「男」である。そのハチャメチャに、家族も周囲も翻弄され、反発し、問題を多々起こし、それでもなおかつ、一郎の「どでかさ」に引き込まれてしまうのだ。巨体で大声、と余りに分かりやすい体躯。自分の信じたことしか、しない。この大長編、読者を完全虜にし、一切の外界から声を遮断し、本の世界に没頭させてしまう、奥田さんという作家。本当に頭が下がります。お薦めの、冒険ロマン大長編です!

凶気の桜    ヒキタクニオ     新潮社       4/30/12
任侠の世界と、若者の生きる渋谷の物語である。若さの狂気の中で、そのエネルギーとパワーを発散させる、3人組。そこに、からんでくるヤクザの面々。容赦のない暴力が、飛び交う。とてつもない悪がき軍団が、ヤクザエリートに、取り込まれ、利用され、ずたずたにされる。テンポも良く、暴力で頭がぐらぐらしても私自身、物語から、離れられなかった。それにしても、日本では最近やくざ物が、流行っているのかなあ。

最悪   奥田英朗    講談社   4/25/12
胃がきりきりするくらい、もうどうしてわかんないのーー!!と、登場人物たちに叫んでしまう本である。はっきり物が言えず、その上特上の見栄っ張りで、自分が何なのかが、てんで分かっていない。それでいて、ちょっとお人好し。純粋という意味ではなく、人を簡単に信じてしまったり、つまり何から何まで「最悪」なのである。メインの3人はそれぞれに背負うものは違えど、状況としてはとっても似ていて、全く違う世界で生きていたものの、何の力か、次第に引き寄せられていく。日本人には裂けて通れない、日本人性なのである。

イン・ザ・プール   奥田英朗  文芸春秋  4/22/12
これは、私にとって伊良部一郎シリーズの第2弾!前回の「町長選挙」が大物達の問題にスポットを当てていたのに反し、こちらは、完全な「庶民」版だ。女優を目指すコンパニオンガールは、完全な妄想狂でストーカーを頭の中で作り出す、他人におもねて自分の意見が言えない男性はその怒りが反映し常に勃起してしまう、ケータイ中毒の高校生、強迫神経症のルポライター、ストレスから水泳にのめりこみ中毒化する会社員。その誰もが私達でもある。読みながら、笑い、ふんふんとうなずき、伊良部一郎医師の診察室にいる気持ちである。わあーーー、私も伊良部一郎医師とお知り合いになってみたいものである。

真夜中のマーチ  奥田英朗   集英社    4/21/12
これも、奥田英郎さんのご本です。てんぷくトリオって、一昔前にいたの覚えているかなあーー。この本に登場する3人組、ヨコケン、クロチェ、ミタゾウは、まさにそれだ。このトリオの周りに、フルテツ、アキラ、タケシ、ストローベリー(犬)、白鳥、トイツなど、魅力ある配役になっている。皆、本のページから飛び出して来そうなほど、生き生きしている。でも、作者は、この魅力ある役者陣に、決してベタベタしない。勝手にやれ!、という風情なのだ。お話自体は、ミステリーともサスペンスとも言えるのだろうけれど、3人組の冒険談だ。それも、とっても愉快で、豪快な。

町長選挙  奥田英朗    文芸春秋      4/19/12
いやはや、全くすごい発想である。伊良部一郎シリーズ!このシリーズのパワーを知らずにこの本を手に取った私は、その魅力に完全に取り込まれてしまったーー。それぞれの短編に登場する人物は、皆問題を抱え、この伊良部医師を訪れるのだ。その問題がまさに、我々自身の問題でもある。この本に登場する問題人物は、皆「大物」で「有名人」であるけれど、伊良部医師の前で、最初はバカにしているも、次第に幼児化していき、その問題の本質を見つけていく。そして、問題を自ら乗り越え、本来の自分に戻っていく。この伊良部医師、一見「何じゃ!こいつ!」という風貌、応対なのだが、実に人生の本質に導く、凄腕医師。自分を登場人物に同一化してしまうよ!

ガール  奥田英朗  講談社 4/16/12
30代女性への、応援歌である。そして、深ーーーーい愛情に溢れている。5つの短編から成っていて、つまりそこに5人の30代女性が登場するのだけど、皆な一生懸命に生きているのである。それも、真っ直ぐに。読んでいる私達も、がんばれ!良いぞ!と、思わず、独り言をつぶやいてしまう。そして、困難があるものの、それを乗り越え、女同士の友情を深めていく。最後は、ハッピーエンド。嬉しくなる、何だか、スキップしたくなる、一冊だ。

べりィ・タルト  ヒキタクニオ   文芸春秋  4/13
やくざ調の口ぶりや態度、服装が目に浮かぶような、作品である。ヒキタさん、もしかして、こういう世界に身をおいていた事があるのではーー、と思わせる。そして、こういう事を一読者(私のこと)がいうと、きっと、ほくそ笑むのが、この作者なのであろうと、私は勝手に想像しているのです!超美少女のリンちゃんと、それを囲む様々な人達。しかし、出てくる登場人物の男性群がカッコ良すぎる!スーツの着こなし、筋肉の付き方など、ぞっこん惚れてしまうのである。

カッコウの卵は誰のもの  東野圭吾  光文社  4/11
二点・三点、状況と人間関係が変化していく。その中で、ある意味人間の根本とも言える、血のつながりと、親子関係を描いていく。そこに、犯罪あり、サスペンスあり、といつもながら、推理小説の枠を大きく超えた東野さんのご本に感嘆する。又、人間の「才能」についての定義。これは、我々音楽家にも当てはまり、やはり成功の鍵は、果てしない努力に尽きるのである。もっと言えば、努力することを、楽しめる人かなあ?私の記憶が正しければ、東野さん過去にも、スキーに関する(この時はジャンプ競技だったような気がするけど)ご本があったような気がーーー。何はともあれ、東野さんは、一冊一冊、深いご本を発表されて、毎回手に取るのが楽しみなのである。

Menotti: A Biography             John Gruen            MacMillan       4/9/12
Menotti is one of most celebrated opera composers in 20th century, and many areas from his operas are still sang frequently at recitals. I love his operas. I was curious about the relationship between Barber and Menotti. How did those great composers share their lives together?? They met at Curtis, and kept the close relationship for a long time. They collaborated for occasions, and produced amazing works. With this book I learned many different aspects of Menotti, social butterfly, solitude, Christianism, relationship to others, an attitude toward composing—. If you like his music it is an interesting book to follow Menotti’s life. Definitely he was an old fashioned man with fascinating and charming personality.

角  ヒキタクニオ  光文社      3/30/12
この何とも不思議な題材を、キラキラした作品にしているヒキタさん。どんな方なんでしょうねーーー。とてもチャーミングなお話ですよ。これは、作家が書く、文筆業と出版社の物語です。作家はちゃらんぽらんで、信用出来ないと、作中でおっしゃっている訳なので、その作家が書く文筆の世界というのを、何も知らない無垢な読者は、どうとらえたら良いのでしょうねーーー。これは、とてつもない、ラブ・ストーリーです。感動的です。ヒキタさんがお書きになる登場人物は、ご近所に住む何気ない隣人といった風情。でもとても魅力的。「角」の世界で、いまだに浮遊している私です。

東京ボイス  ヒキタクニオ   講談社      3/20/12
私、だんだんこの作家のファンになっています。すごい人間描写と、リアリテイー。皮肉と鋭い切り口。人間の醜さも、可愛さも、ごった煮にして、それでいて、筆はとても洗練されている。そして、出てくるすべての登場人物への、深い愛情。素敵な作家だなあーーー。そして、古臭い言葉で言うなら、文化人というのかなあ。芸能界、主婦の世界、水商売、ゲイ仲間、それぞれが、うんとかけ離れているようでいて、実はポイントは同じだよー、と伝わってくる。すごい本だよ!

愛という字    向田邦子  ラインブックス     3/11/12
昭和の庶民の幸せを描いて、向田さんの右に出る者はいない。ちょっと暗い、でもとても綺麗に磨き上げられた一軒家、襖の破れたところに当てられた桜の模様の日本紙、「はばかり」と呼ばれていたお手洗い、お客間から庭に出るところにある下駄、ちっともお洒落でない台所。私の父方の祖父母の家を思い出させる。小学生の時に私は、この世田谷にある祖父母の家に、毎週末泊まっていた。夏休みは、長いこと滞在していたのである。最初は怖かった「はばかり」も、慣れてくると平気になった。今でも不思議なことに、この祖父母の家の夢を見ることがある。閑話休題。このご本は向田さんの脚本を(東芝日曜劇場から)中野玲子さんが小説家したもので、登場人物が、紙面を飛び出すほどの、主体性を持っている。まさに、本を読みながらテレビを見ている気持ちになる。家族のやり取りが、この昭和の家にとっても溶け込む。平成生まれの世代には、どう写るのかなーー。本当にすごい才能を早くに亡くしたことを、改めて思い起こさせた。

原宿団地物語  ヒキタクニオ   徳間書店    3/10/12
これは、まさに「バカボン」に出てくる「レレレのおじさん」の話である。レレレのおじさん、季節を問わず、いつも街を箒で掃いているが、この本の主人公「小曽根さん」も同じ。毎朝自分が住んでいる原宿団地を、掃きながら、そこに住む住人達を観察、交流。その人達との関わりから生み出された、いわゆる「心温まる」お話しだ。とても日本的な、肩の寄せ合い方が、私をちょこっと、ホームシックにした。この作者も、海外に長いこと住んでいて、知らずに来てしまった一人で、今回「原宿団地」を通じてお知り合いになれたこと、とても嬉しい!今後も、手にしたい作家の一人になった。

スイート・リトル・ライズ   江国香織  幻冬舎  3/6/12
とっても日本的な、「可愛い」ものの象徴のようなテデイー・ベアと、不思議だけど怖いカップルのお話し。結婚してまだ余り月日のたたない、今日的な彼らは、コミュニケーシオンのない、「形式」の中で、ぶつかることもなく、体裁はちょっとカッコイイ。何かふわふわした、植物男子とパステル調の女子。そのどろどろとは無縁の二人が、植物系の不倫を始めてしまい、結果はどうなった分からないまま、終わる。とても登場人物と一体感は持てないけれど、その現実感のないところが、良いのかも。そして、一体感を持てない私は、化石化しているのかもね。

ルパンの消息  横山秀夫  カッパノベルス  3/4/12 これは、正統派推理小説。この作者も初めて読んだけど、私の知らないところで(もちろんアメリカにいるので、これはかなり難しいのだけど)、どんどん良い作家が出ているのだなあ、と改めて思った。現在と15年前を前後させながら、話しを進める手法は、そう新しいものではないけれど、超悪ガキ3人組みを、あたかも目の前にこの3人組がいるかのように、生き生きと描いて、ストーリーが紙面からはみ出るようだ。犯人逮捕までの経緯も、二転三転しながら、的を外れず、登場人物への愛情を失わずに、読者を惹き込んでいく。おもしろかった!

我が家の問題   奥田英朗   集英社  2/29/12 この作家のものを読んだのは初めて!これって、新婚カップル必須の本じゃないかなあ。何てことのない、まさに「我が家」のそれぞれの問題なのだけど、その問題の進行が愛に溢れているのだ。こんな風にお互いを想う事が出来れば、結婚は本当に最高だ!と実感する一冊。短編集だけど、それぞれのお話が、まさにキラキラ、庶民レベルで光っている。最後のマラソンの話しには、思わず、登場人物のご主人にもらい泣きしてしまった。

東京タワー  江国香織  マガジンハウス  2/25/12 20歳前後の「男の子」達の物語り。私はもちろん、「男の子」であった事がないので、とっても面白かったし、何か不思議な気もした。おごりもあり、恋もあり、辛い日々もあり、友情もあり、年上あり、で物語りが進んでいく。年上の女性の状況が、ちょっとおしゃれすぎて、現実味をおびていないけれど、又そこが良いのかもしれないなあ。東京の地形を知らないと、面白みが半減するかもね!

The Immortal Life of Henrietta Lacks        Rebecca Skloot         Broadway             2/17/12
It is an amazing book. I worte my review in my blogs. Please read there.

もっと塩味を!  林真理子  中央公論新社     2/1/12
林さんの典型的な文体がちりばめられているーー。辛口で人間の深いところまで、ざくっと切り込む。男女の関係が始まり、悲しくも終焉を迎える。そして、どんどん読者を引き入れていく、ストーリー性。華やかな、ファッション。いつも言っているけど、林さんが超売れっ子なのが、うなずける一冊。

夢で逢いましょう   藤田宣永   小学館  1/29/12
とっても素敵なお話。この本も村上さんのご本のように、いろいろな要素が含まれていて、又登場人物も沢山いるから、ある意味複雑なストーリーなのだけど、芯が一本どーんと通っていて引き込まれてしまう。この本は、フロリダからの帰りの飛行機で読んだ。あっという間に時間がすぎちゃったけどね。藤田さんって、ロマンチストなんだと思う。それぞれの登場人物の心の襞が、じんじん伝わってくる。心の叫びが聞こえる。これも大長編だけど、あっという間に読んでしまった。大推薦の一冊。

1Q84   Book 3                      Haruki Murakami                 Shinchousha 1/26/12
I love Murakami’s books. After seeing a movie “Norwegian Wood” I was thinking to read his book again. So I picked this one, and took it with me on the way to Florida for my concert tour. I was listening Beethoven’s string quartets and reading Murakami world. I could be in my own world separated from the plane. It can be called mystery, or science fiction, or love story. It has all these elements. Well done! We can hear Murakami language throughout the book, if you know what I mean.

1Q84 Book 3   村上 春樹   新潮社  1/26/12
私は、村上春樹の大ファン!ノルウェイの森の映画(がっかりした映画だったけど)を見てから、ずっと村上さんの本が読みたくて、フロリダへのコンサートツアーの行きの飛行機でこの本を読んだ。ベートーベンの弦楽四重奏曲集を聞きながら、この長編を読んでたら、長旅も気にならなかった。飛行機の中で、自分の世界に浸ってよかったなあ。ミステリーとも言えるし、サイエンス・フィクションとも言えるし、とんでもない恋愛小説でもあるし。私達を不思議な世界に導いてくれるよ。イメージと現実が交差、実在の人間なのか、それとも架空なのかーーーー。絶対にお薦めの一冊です。

Some of My Lives, a Scrapbook Memoir     Rosamond Bernier    FSG New York    1/10/12
It is really fun to learn about Copland and Bernstein in this book, and of course other artists as well. I did not know this author before, and it is fascinating to learn about this lady. But is it her self-promoting book?? Everybody loves and adores her for her beauty and charm in this book. Painters, Musicians, Writers—-. Yes, she looks pretty in photos! And what she has accomplished is amazing. Don’t you think we like to eat creamy sauce dish once in a while?

Cosima Wagner, The lady of Bayreuth      Oliver Hilmes       Yale University Press 1/2/12
The concept of the book is very interesting, but it goes through very small details that sometimes it was difficult to focus on the theme. I love to learn about the life of Cosima, but not where she went and who she met on every single day. I was fascinated by the anecdotes between Wagner and Cosima! Of couse she is a special woman. The photos included in this book are fun to see.